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「満島ひかり×江戸川乱歩」

NHKのBSプレミアムのドラマ「満島ひかり×江戸川乱歩」を見ました。

2016年の頃に放送されていた「シリーズ・江戸川乱歩短編集」の第3弾です。私は「太宰治短編小説集」以降のこの短編小説集映像化シリーズを好きで見ているので、また、江戸川乱歩の作品を好きなので、短編小説を“ほぼ原作通りに映像化”する今作を見るのもまた楽しみにしていました。

約30分ずつの3作品が連続で放送されるオムニバス形式のドラマです。

第一幕は満島ひかりさんと宮藤官九郎さんによる『お勢登場』(朗読は眞島秀和さん、演出は佐藤佐吉さん)、第二幕は満島ひかりさんとハライチの岩井勇気さんによる『算盤が恋を語る話』(朗読は松澤匠さん、演出は森ガキ侑大さん)、第三幕は満島ひかりさんと高良健吾さんによる『人でなしの恋』(朗読は満島ひかりさん、演出は渋江修平さん)でした。

これまでは名探偵・明智小五郎が登場する短編小説が映像化されていましたが、今回は明智さんの登場しない短編小説が映像化されていました。

それぞれのドラマの冒頭には作家の江戸川乱歩自身によるの「自作解説」の一部が紹介されていました。第一幕と第二幕の間、第二幕と第三幕の間には、満島ひかりさんが演出した?コントのような、息抜きのような短い「幕間」が挟まれていました。

第一幕の「お勢登場」は、東京新宿の歌舞伎町で終わる最後が意外でした。第二幕の「算盤が恋を語る話」は、会社の従業員たちの舞踊?が個性的でした。

第一幕も第二幕もそれなりに楽しく見ることができたので良かったと思うのですが、私としては、第三幕の「人でなしの恋」が良かったです。

満島ひかりさんの演じる妻の京子さんの軽妙な語りと高良健吾さんの演じる夫の門野さんの深刻な秘密の恋との差も良かったですし、何といっても、夫の愛する土蔵の中の「人形」を、よくぞあのようなはっとする美しい容貌の球体関節人形にしてくれたと思いました。このドラマの夫が愛する人形であるなら、日本人形にするよりもリアリティがあります。説得力もあります。違和感なく見ることができたという以上に、人形の美しさに惹き込まれました。

そのため、「暗視カメラ」の暗い緑色の映像の中で、嫉妬心から土蔵に乗り込んだ京子さんが長持に収められていた人形を激しく虐待する場面は、とても残酷で、怖くて、悲しい場面でした。

あの美しい人形を、本気で壊したのでしょうか。ドラマの京子さんの狂気もそうなのですが、ドラマの制作スタッフの方たちの勇気?にも驚きました。エンドクレジットによると、人形を制作したのは、陽月さんという方でした。

人形の口が人間のように素早く動く合成は不気味に思えたのですが、嫉妬に狂った妻によって無惨に殺された人形の後を追って刀で命を絶った夫の鮮血と、バラバラに壊された人形の口元から流れ出る血の映像も、美しかったように思います。

過去を語る京子さんの背後の棚のガラス戸の中の人形の首(頭部)の演出も良かったです。人形に重ねられた、京子さんを演じる満島ひかりさんの微笑まで、一貫していて見事でした。音楽も良かったです。

現代の新しい映像の中で「人でなしの恋」の雰囲気がよく出ていたように思います。「人でなしの恋」は人間ではない人形を愛する夫の恋を指すのかもしれませんが、夫の愛する人形を殺し、夫を自殺に追い込んだ妻の嫉妬に燃える恋を指すのかもしれないとも思いました。

ただ、今作の「江戸川乱歩短編集」の第3弾のタイトルから「短編集」が消え、主演の女優さんの名前を全面に打ち出したタイトルに変わってしまったことについては、「文学」の印象が弱まってしまうようにも感じ、少し残念にも思えました。「江戸川乱歩短編集」の第2弾の時には「妖しい愛の物語」という副題がついていたのですが、文豪の短編小説集をほぼ原作通りに映像化するとしているこのシリーズのタイトルは、そのままのシンプルなものの方が良いように思います。


このドラマは夜11時半からの約1時間半のドラマだったのですが、その前の時間(夜10時半から夜11時半)には、江戸川乱歩の長編小説『孤島の鬼』を特集した「シリーズ・深読み読書会」が放送されていました(「シリーズ・妖しい文学館」では名探偵・明智小五郎と少年探偵団と『青銅の魔人』が特集されていたこともあります)。でも、私はまだ昨夜のこの『孤島の鬼』の特集の全部を見ることはできていません。録画をしてあるままです。

私は乱歩の作品を好きなので、テレビ番組や雑誌の企画などで時々乱歩の特集があると知ると、嬉しく思う一方で、なぜか何となく少し不安のような寂しいような気持ちにもなります。ただ、今回の『孤島の鬼』の小説の内容を深く読み解く文学探偵が、佐野史郎さんと高橋源一郎さんと綾辻行人さんと鹿島茂さんの4人ということについては単純に嬉しく思いました。ほっとしました。

昨夜に番組の後半の一部だけを見た印象では、物語を紹介するためのイラスト(挿し絵)が多かったように思います。発表当時の江戸川乱歩の小説にも挿し絵のついているものはありますが、近年の、あるいは著作権が切れてからの最近に出版されたものには特に絵のついているものが多いような気がします。先日に本屋さんの本棚で見かけて、少し驚きました。

絵がついている本のほうが読みやすいという方もいるのだと思うのですが、私としては、乱歩の作品には特に絵はないほうが良いように思います。文字の文章で表現された作品の持つ世界やそのイメージが絵によって制限されてしまうような気がするからです。でも、あまり深く気にしないほうが良いのかもしれません。ある小説作品を読みたい人が、文字だけのものか、絵のついているものか、どちらか読みたいほうを選べばいいというだけのことなのかもしれません。

「忘却のサチコ」最終回

テレビ東京の「ドラマ24」のドラマ「忘却のサチコ」の第十二歩(第12話・最終話)を見ました。

結婚式の当日「幸子、すまない」という置き手紙一枚を残して姿を消した新郎の俊吾さん(早乙女太一さん)の記憶をおいしい料理を食べることで忘却しようとしてきた中学館の文芸雑誌・月刊「さらら」の編集者の佐々木幸子(高畑充希さん)は、編集長の白井智昭(吹越満さん)が楽しみにしている年に一度の編集部の宴会の翌朝、新人編集部員の小林心一(葉山奨之さん)が「クズ」と断定した俊吾さんと街中で再会し、北海道の新鮮な鮭を手に「ただいま」と何事もなかったかのように帰って来た俊吾さんと帰宅したのですが、俊吾さんが結婚式から消えた理由や今まで連絡してこなかった理由を訊くことができませんでした。

幸子さんは、小林さんと二人で人気小説家の姫村光(長谷川朝晴さん)と打ち合わせをする時、「放浪癖」のある姫村さんが「逃亡癖」との違いについて、「放浪」は見たいものを見に行くことで「逃亡」は見たくないものから逃げることなのではないかと話すのを聞いて、俊吾さんの失踪が自分との結婚からの「逃亡」だと納得したようでした。

逃亡中、全国各地でさまざまなおいしい料理を食べてきたらしい俊吾さんは、北海道の漁師さんに教わったという石狩鍋を作ってテーブルのガスコンロの上に載せると、突然幸子さんに向かって土下座をするように頭を下げ、「幸子さん、ごめん」と謝りました。俊吾さんを忘れるために、サバの味噌煮定食を始め、おいしい料理を食べ続けてきたということを俊吾さんに打ち明けた幸子さんは、俊吾さんのことが好きでした、と過去形で言って、俊吾さんが伸ばしてきた手を振り払い、さようなら、と告げました。

それから俊吾さんが出て行った部屋で、幸子さんは、出来上がった二人分の石狩鍋の味を噛みしめながら、少しずつ俊吾さんの顔を忘れていきました。

翌朝、幸子さんの部屋を訪ねてきた母親の佐々木和代(ふせえりさん)は、「心の仏壇」を片付けた幸子さんに驚いていました。幸子さんは、「元気?」と送ってきた俊吾さんの絵葉書きを折り畳んで噛んでごみ箱に捨てました。編集部の白井編集長や小林さんや後輩編集者の橋本玲奈(逢沢りなさん)や同僚編集者の大野恭助(重岡漠さん)や岡田友里奈(上地春奈さん)たちは、俊吾さんと別れたと言い「しゅんご」の言葉にも無反応になった幸子さんを、それでも、心配して気遣っていました。

幸子さんは、編集部のみんなをランチに誘ったのですが、幸子さんがみんなを連れて行ったお店は、最初にサバの味噌煮定食を食べて救われた「三宝食堂」でした。幸子さんは、サバの味噌煮とお味噌汁という味噌味尽くしの和食の「クレイジー」さを小林さんと共有しながら、俊吾さんのことを忘れたように食事を続けていました。しかし、白井編集長や小林さんや同僚たちは、お店のテレビのクリスマス中継先に俊吾さんが映り込んでいることに気付きました。幸子さんも気付きました。俊吾さんは、画用紙に書いた「サチコさん、メリークリスマス!」という言葉を能天気な笑顔でカメラに向けていました。幸子さんとよりを戻したいらしい俊吾さんは、まだ幸子さんのもとへ帰る気でいるようでした。

俊吾さんのことを完全には忘却できていない幸子さんは、俊吾さんの再登場に動揺しながら、「おかわりください!」と店主に空になったお茶碗を出していました。

第十一歩と第十二歩の脚本は大島里美さん、監督は山岸聖太さんでした。原作は、阿部潤さんの漫画『忘却のサチコ』です。

第3話以降の感想を書くことができなかったのですが、私も録画をしつつ、毎回の幸子さんの物語を楽しみにして見ていました。

幸子さんと編集部の人たちとの場面も楽しかったですし、前回の宴会の小林さんのオペラや、仕事中なのに「スマホゲーム」と「PC動画」に興じている白井編集長を「ディスる」幸子さんのラップの場面も面白かったです。連続ドラマの「忘却のサチコ」には、ミュージカルの要素が少し混ざっていました。

編集者としては優秀な幸子さんが、編集部の優しい仲間たちとおいしい料理に支えられながら、結婚式の当日に婚約者の俊吾さんに逃げられたという辛い現実を受け入れていく過程が、“グルメドラマ”としてだけではなく、“お仕事ドラマ”として描かれていたところも良かったのだと思います。

高畑充希さんの演じる幸子さんがいつもおいしそうな料理をおいしそうに、きれいに食べる姿を見るのも好きでした。スカートの「忘却のサチコ」が流れるオープニングの映像も、eddaの「ループ」の流れるエンディングの映像も、楽しかったです。

幸子さんも風変わりな人ですが、幸子さんと付き合っていた俊吾さんも少し変わった人だったようです。ドラマを見始めた頃には、「俊吾さん」は、スペシャルドラマの時のような、誰か分からない幻のような俊吾さんのほうが良いのではないかと思えていたのですが、これほどに俊吾さんの登場場面が多いのであるなら、具体的に登場するのも仕方がないのかなと思うようにもなりました。俊吾さんを追い続けていた幸子さんは、今度は(ストーカー的な)俊吾さんに追いかけられることになるのだろうかと、幸子さんのその後が少し心配にもなる最終回でもあったのですが、最後まで楽しく見ることができて良かったです。


ところで、この「忘却のサチコ」のドラマとは直接には関係がないのですが、CMの予告によると、ドラマ「孤独のグルメ」(主演は松重豊さん)の「大晦日スペシャル」が今年も放送されるそうです。放送時間に見ることができるかどうかは分からないのですが、楽しみにしたいと思います。

それから、BSテレ東の「真夜中ドラマ」枠の東京の築地場内市場(今はもうありません)と銀座を舞台にしたお寿司屋さんドラマ「江戸前の旬」(主演は須賀健太さん)は、今日の深夜の放送が最終回(第12貫)です。このドラマも、“グルメドラマ”なのかもしれないのですが、さっぱりとした温かさのある、良い江戸前人情ドラマだと思います。

「軒轅剣・蒼き曜」最終回

テレビ東京の月曜日の深夜に放送されていたアニメ「軒轅剣・蒼き曜」の最終話(第13話)までを見ました。

深夜の放送ということもあり、録画をしておいたものを見ていたのですが、私もこの「軒轅剣・蒼き曜」(けんえんけん・あおきかがやき、と読むそうです)のアニメ作品を第1話から見ていました。毎回の感想を書くことはできなかったのですが(以前、第5話の頃に少しだけ感想を書きました)、良いアニメだったように思います。

最終回の第十三話「天空之要塞」では、機関獣を使って民を虐殺しながら領土を拡大していく太白帝国の打倒を目指す反抗軍の項楚(コウソ、声・津田健次郎さん)とその養子で雷の法術を使う檀越之(タンエツシ、声・東地宏樹さん)と火の法術を使う欒提熾(ランテイシ、声・堀井茶渡さん)と水と氷の法術を使う慕輿柔(ボヨジュウ、声・青木瑠璃子さん)、土の法術う使う參狼(サンロウ、声・山谷祥生さん)、剣士の拓跋淵(タクバツエン、声・八代拓さん)の仲間となり、新しい兄弟姉妹の一人として迎えられた苻殷(フイン、声・水樹奈々さん)は、太白帝国を脱出し反抗軍の一員となった元主席機関師の墨衡(ボクコウ、声・牛山茂さん)の作った「黒火の鎧」を身に着け、太白帝国の捕虜から機関士として若き皇帝・龍澄(ロンチョウ、上坂すみれさん)の恩寵を受けながら出世した蒲釗(プショウ、声・松岡禎丞さん)の開発した、黒火を使った建設中の飛行要塞・征天を破壊するため、また、釗が太白帝国に連れて行った妹の苻寧(フネイ、声・釘宮理恵さん)を救出するため、その新しい家族と共に征天へ向かいました。

反抗軍の一味として澄に捕まった寧は、大きな樽の下で首を上向きに固定され、時間をかけて一滴ずつ水滴が額に落ちてくるという精神的な拷問を受ける中で、自分の不幸は全て姉のせいだと、姉の殷を激しく憎むようになりました。樽には釗が大切にしていた殷からの贈り物のペンダントがかけられていて、水滴はそこから一滴ずつ落ちて来るという仕組みになっていたため、寧は姉が釗に贈ったそのペンダントを見る度に、姉への憎しみに囚われるようになりました。

釗を慕う澄は、殷を憎む寧を武器として利用することを思い付き、釗に命じて両腕のない寧の義手を高度なものに作り変えさせました。太白軍の一人となって自分を明らかに敵視して攻撃して来る妹の寧の様子の変化に驚いた殷は、寧が操られていると最初は思っていたのですが、特別な天命を持つ善良な姉の殷を憎む気持ちや妬む気持ちや嫌う気持ちは妹の寧の中に以前からあった感情でもありました。戦争のない世を願いながら人を殺すことには否定的で戦いに積極的になれない姉の殷と、戦争をなくすためには悪い敵を片っ端から殺すしかないと戦いに積極的な寧とは、少しずつすれ違ってもいました。澄による拷問の苦痛の結果、その寧の負の感情が増幅して表出するようになったのでした。

太白帝国の宮殿では、異母妹の龍涓(ロンケン、声・遠藤璃菜)の母親であるパン夫人(声・伊藤美紀さん)に殺されかけた皇帝の澄が、隠されていた複数の法術を発揮してパン夫人を返り討ちにし、その時、先代の国王である父親の龍驍(ロンギョウ、声・石井康嗣さん)を殺したのが実は自分のその能力であったことを思い出しました。

奴隷から出世していく釗に嫉妬し、釗を寵愛する澄を皇帝の座から引きずる下ろすべく動き始めた帝国軍機関部隊の最高司令官蒙忌(モウキ、声・白井悠介さん)は、釗を捕えさせ、釗がまだ未完成だと主張する征天を動かし始めました。

主人の釗から皇帝への書簡を預かっていた女官の梨香(リコウ、声・東城日沙子さん)は、書簡を皇帝に届けました。澄の命令によって解放された釗は、新しい機関獣の?兵器に乗って、黒火を止めるために征天へ向かいました。

私を好きな姉さまが嫌いだと言う寧の攻撃を受けて黒火の鎧の負のエネルギーに囚われてしまった殷が心を失くして寧に反撃しながら戦う一方、殷の命を受けた雲(ユン、声・能登麻美子さん)も複数の機関獣と戦っていました。その頃、征天の奥の黒火の炉にたどり着いた慕輿柔と拓跋淵がどのように黒火の炉を壊すべきか迷っていると、釗の乗った兵器が炉の前に現れ、直に黒火の炉を動かして止めました。炉の爆発の衝撃を直接受けてしまった釗は、壊れた乗り物から出たまま床に倒れ込みました。

拓跋淵は黒火の炉を斬り、慕輿柔と共に間もなく崩壊する征天を脱出しました。寧の攻撃を止めるためその両腕の武器を切り落とした殷は、寧と共に力尽きて床に座り込んだのですが、その時、征天が崩れ始めました。崩落する天井から寧を守ったた殷は、寧を連れて脱出しようとしたのですが、寧の両脚は瓦礫の下敷きとなっていました。瓦礫は軒轅剣でも簡単には切れない材質のものでした。そこへ、殷と寧の声を聴いた釗が壁を伝いながら歩いて来ました。釗は、黒火の衝撃で失明していました。

瓦礫の下から寧を助け出した殷は、あなたが辛い時一緒にいてあげられなかったから、あなただけは生きていてほしい、だから私を赦して、私あなたのこと大好きだから、と寧に伝えました。釗に抱えられた寧は、幸せそうに、その言葉に頷きました。殷はまだ完全には壊れていなかった雲を呼び、3人でその背中に乗って征天を脱出しました。殷と釗はお互いに、相手を思う気持ちが足りなかったことを謝り合っていました。

外へ出てしばらくすると、太白帝国の皇帝に弓を引く機関総帥の蒙忌が征天の中から黒火の砲を放つための引き金を引きました。しかし、壊された炉の黒火は不発のままその場で大爆発を起こし、大きな灰色の煙を上げながら、征天を焼き尽くしました。

その戦いでは、反抗軍が勝利しました。寧は、終わったのではなくこれから始まるのだと呟いていました。

宮殿では、求めるものが手に入らなければ何も持っていないのと同じだと異母妹の涓に話していた皇帝の澄が、陳は天命にのみ生きると、領土を拡大し続ける太白帝国の皇帝としての人生を受け入れる決意をし、再びどこかの村へ太白軍を動かしていました。

最後は、殷と寧、釗のその後が描かれていたのですが、寧は両腕だけではなく両脚も失っていました。以前のような高性能のものではない素朴な細い木の義手と義足で、小さな小屋のような家の縁側に座っていました。その前の庭には、壊れた雲が倒れていました。庭の木から柿を採って寧に持ち帰った釗が、僕は寧の手足だ、何でも言って、と言うと、寧は、私は兄さまの目よ、何でも聞いて、と言いました。両腕と両脚を失った寧と、視覚を失った釗は、それでも幸せそうでした。

殷は、黒火の鎧を身に着けた反抗軍の一員として、新しい家族と共に太白帝国軍との戦いを続けるようでした。

「太白歴100年、今後彼らの戦いはさらに熾烈を極める」という雲の語りで物語は終わっていました。

「軒轅剣・蒼き曜」は(「Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀(サンダーボルトファンタジー トウリケンユウキ)2」と同じく)日本と台湾の共同制作の作品でした。台湾のソフトスターという会社の人気のゲームソフトを基にしたオリジナルストーリーのアニメだそうです。アニメの脚本とシリーズ構成は高山カツヒコさん、最終回の監督はわたなべひろしさんと又野弘道さんでした。

オープニングテーマは水樹奈々さんの「嘆きの華」という曲で、エンディングテーマは9nineの「願いの花」という曲でした。 

最終回を見る前には、最終回がどのように終わるのか、本当にまとまるのかが分からないようにも思えていたのですが、ちゃんとした最終回になっていました。

物語の主な登場人物というか、物語の中で集中して描かれていた人物は、太白帝国による戦争に傷ついた殷と寧の姉妹とその幼馴染みの釗、突然亡くなった父親の跡を継いで太白帝国の若き皇帝となった澄の4人でした。

その登場人物たちの内省的な感じが良かったのだと思います。殷や寧たちの感情や思いが丁寧に描かれていたためかもしれないのですが、見ていて辛い気持ちになるというか、なぜか涙が落ちてくる場面が多かったようにも思います。

戦争の話や反戦の話でもあったのですが、殷と寧と釗と澄がそれぞれの、どうにもならない自身の「天命」を受け入れて生きていく物語でもあったのかなと思います。

黒火の鎧を着た七人が大国に立ち向かっていく様子は、やはり何となく「七人の侍」のようでもありました。

まさか戦争で両腕を失った寧がさらに両足を失い、釗が視力を失うということになるとは思いませんでしたが、戦いたくない殷は戦い続けるしかなくなり、澄も皇帝として軍を動かし続けるしかなくなりました。幸せそうでもあった寧と釗に平穏な生活が訪れたとは言えないような気もしますし、大団円の結末ではありませんでしたが、でも、見応えのある、良いアニメ作品だったように思います。

それにしても、このアニメはどうして深夜に放送されていたのでしょうか。録画をして見るとすれば放送時間はあまり関係ないのかもしれませんし、現代ではアニメを“子供向け”と考えるのは少し間違っているのかもしれません。アニメではないのですが、この秋には武侠人形劇「サンダーボルトファンタジー2」を好きで見ていた私は、テレビ朝日の特撮ドラマ「仮面ライダージオウ」もまだ楽しく見続けることができています。ただ、登場する過去の仮面ライダーたちのことは全く知らないままです。詳しいことを知らなくても、物語の作り方や登場人物の性格が面白いので、私も見続けることができているのかもしれないなと思います。

「Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2」最終回

TOKYO MXで放送されていた日本と台湾の共同制作の武侠ファンタジー人形劇「Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀(サンダーボルトファンタジー トウリケンユウキ)2」の最終話までを見ました。

全13話の物語でした。毎回の感想を書くことはできなかったのですが、第一作に引き続き、第二作目の「サンダーボルトファンタジー」も、とても面白かったです。

最終話(第十三話)「鮮血の恋歌」は、仇敵・禍世螟蝗(カセイメイコウ)の部下である蠍瓔珞(カツエイラク、声・高垣彩陽さん)によって「魔剣目録」から盗まれた魔剣の妖姫・七殺天凌(ヨウキ・ナナサツテンリョウ、声・悠木碧さん)を取り戻す旅を続ける中、魔剣・喪月之夜(モヅキノヨ)を振るう西幽の捕吏の嘯狂狷(ショウキョウケン、声・新垣樽助さん)を叩きのめした剣客の殤不患(ショウフカン、声・諏訪部順一さん)が、友人の吟遊詩人の浪巫謠(ロウフヨウ、声・西川貴教さん)とその琵琶の聆牙(リョウガ、声・小西克幸さん)と盗賊の凜雪鴉(リンセツア、声・鳥海浩輔さん)と共に、七殺天凌に魅了され僧侶の諦空(テイクウ)から還俗した剣豪の婁震戒(ロウシンカイ、声・石田彰さん)を追って魔脊山へ向かい、決戦に挑む、という話でした。業火の谷の龍は、七殺天凌と二人きりの世界を邪魔する者として、第十二話で婁震戒に惨殺されました。

原案・脚本・総監修はニトロプラスの虚淵玄さん、音楽は澤野弘之さんと和田貴史さん、監督は王嘉祥さんと鄭保品さん、助監督は王泉修さん、総監督は黄強華さんでした。制作は「霹靂布袋劇」の霹靂(ピーリー)社、ニトロプラス、グッドスマイルカンパニーでした。

今作も、相変わらず、美しくてかっこいい見事な人形劇でした。とても面白かったです。

最終回は、魔脊山での殤不患と婁震戒の決戦の場面の迫力に圧倒されました。早送りかと思えるような動作の素早さでした。

殤不患が凜雪鴉を信用し、喪月之夜を託して身を預けるという戦い方にも驚きました。心のないゾンビのような傀儡となった殤不患を凜雪鴉が操りながら七殺天凌を持つ強敵の婁震戒と戦っていたのですが、七殺天凌に促された婁震戒が喪月之夜を持つ凜雪鴉に刃を向けると、喪月之夜は煙管に変わりました。幻影を使ったのでしょうか。凜雪鴉は婁震戒の手中にある七殺天凌に鎖を巻きつけました。その時本当の喪月之夜を持っていたのは浪巫謠でした。浪巫謠は殤不患の心臓に喪月之夜を突き付けて殤不患の心を戻し、元に戻った殤不患は武器として持っていた筆を使って、空に向かって大きな魔法陣のようなものを書きました。

鎖が巻き付いたままの七殺天凌は魔法陣に吸い込まれていったのですが、もう少しで封印されるという時、七殺天凌の助けを求める叫びを聴いた婁震戒が七殺天凌を救い出そうと飛び上がり、谷のほうへ弾き飛ばされました。

七殺天凌を封印した魔法陣の墨は、空から殤不患の筆に戻りました。殤不患たちは、それを「魔剣目録」に戻すため、「魔剣目録」を預けた捲殘雲(ケンサンウン、声・鈴村健一さん)のもとへ急ぎました。護印師の丹翡(タンヒ、中原麻衣さん)は、殤不患から「魔剣目録」を預かったということを捲殘雲から聞いていなかったようで、少し怒っていました。殤不患が「魔剣目録」の巻物に筆の墨を垂らすと、その中に描き込まれたのは、妖剣・七殺天凌ではなく、婁震戒の片腕でした。封印される直前に七殺天凌を奪い返した婁震戒は、七殺天凌と共に谷底へ落ち、美しい姫と心中するという願いを果たしたようでした。

丹翡は、引き合わせたい人がいると、殤不患の前に護印師の砦・仙鎮城の主だった伯陽侯(ハクヨウコウ、声・拝真之介さん)を連れて来ました。嘯狂狷に騙されて殤不患を悪人だと思い込むようになっていた伯陽侯は、そのことを殤不患に謝罪しました。そして、お城が元に戻るまで神誨魔械の三振りを「魔剣目録」で預かってほしいと殤不患に頼んでいました。二振り減って三振り増えた「魔剣目録」を、殤不患は守らなくてはいけなくなったようでした。

「サンダーボルトファンタジー2」のオープニングテーマは、西川貴教さんの「His/Story」という曲で、エンディングテーマは同じく西川貴教さんの「Roll The Dice」という曲でした。オープニングの映像も、エンディングの映像(ロープをハンモックのようにしている殤不患の姿が妙に面白いです)も、かっこよくて、好きでした。

ただ、最終回には、そのオープニングとエンディングの映像はありませんでした。エンドロールは黒の背景の文字のみのシンプルなもので、音楽はオープニングテーマの「Roll The Dice」でした。

そのエンディングの後、もう少し続きがありました。部下の蠍瓔珞を不甲斐ないと嘆く禍世螟蝗(カセイメイコウ)たちが更なる追っ手を放そうと考え、東離に攻め入ろうかとも考えていた時、人外魔界の死者という妖魔・刑亥(ケイガイ、声・大原さやかさん)が現れ、禍世螟蝗に自分との契約を求めていました。

形亥は、前作の物語の中で殤不患と戦っていた人物でもあります。本編の直後のお知らせには、「第三期制作決定」とありました。

今作では、僧侶の諦空と出会い、禍世螟蝗の部下としての使命を貫くことと、人を殺し続けることの間で迷いを生じさせていた蠍瓔珞が、妖剣の七殺天凌の誘惑に勝って本当の自分の人生を生きようと思い始めた直後に七殺天凌に魅了された諦空(婁震戒)に殺されるという展開が、私の中では特に意外な展開でもあり、悲しい展開でもありました。

前作のヒロインは丹翡で、丹翡のいない今作のヒロインは蠍瓔珞かと思っていたのですが、妖姫・七殺天凌もヒロインの一人だったのかもしれません。生きる意味や死ぬ意味を問い続けていた僧の諦空は、その日々の中で圧倒的な“死”である七殺天凌と出会い、その強さと美しさに魅了され(恋に落ちて)還俗したということだったのかなと思います。

殤不患を東離の「逆賊」として西幽まで追ってきた役人の嘯狂狷は、下衆で卑怯で姑息な人物で、実は凜雪鴉と同じ盗賊でもあったのですが、凜雪鴉を怒らせるほどに盗賊としての美学のない人物でした。でも、それもまた面白くもありました。

第二作では、第一作の時よりも、登場人物たちがもう少し人間的になっていたような気がします。

「サンダーボルトファンタジー」の第三作(今作の続編)がいつ放送されることになるのかは分かりませんが(第一作の放送は2年前の2016年の秋でした)、その頃には私もまた楽しみにしたいと思います。


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以下は2019年1月10日の追記です。

東京の池袋の西武百貨店では1月2日から8日まで「Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2の世界展」が開催されていました。そして、今回は私もその「過去最大級の大規模展覧会」を見に行くことができました。

台湾の「霹靂布袋劇」についての解説の後、「サンダーボルトファンタジー2」の世界が展示されていたのですが、凜雪鴉、殤不患、浪巫謠と琵琶の聆牙、蠍瓔珞、嘯狂狷、諦空とその還俗した姿の婁震戒たちに会うことができて、とても嬉しく思いました。「来日」したというその人形たちは、映像で見るのと同じくらいかっこよくて、あるいはそれ以上に、美しい人形たちでした。霹靂布袋劇の素還真と一頁書という人物の人形も見事でした。大きめの人形とは言われていましたが、確かにそうでした。人形たちが滑らかに動き回る映像を見ていたためかもしれないのですが、実際に今にも動き出しそうに見えました。アクセサリーや衣装など、細かいところまで繊細に作り込まれていました。それぞれの武器たちも展示されていました。会場に来ていたたくさんのお客さんたち(男性もいましたが女性のほうが多かったような気もします)がスマートフォンやデジタルカメラで人形たちを撮影していたので、ほとんど撮影会のようでもありました。伯陽侯も含め、その主な登場人物の人形たちはガラスケースには入っていなかったのですが、隣の部屋の「サンダーボルトファンタジー」(第1作)の世界の展示では、丹翡やその兄の丹衡、捲殘雲、狩雲霄、刑亥、玄鬼宗たちはガラスケースの中にいて、蔑天骸や殺無生はガラスケースの外にいました。ガラスケースの有無の違いが何なのか、私にはよく分からないようにも思えたのですが、ともかく、人形たちを近くで見ることができて、とても嬉しかったです。殤不患と凜雪鴉が出会った古刹のお地蔵さまにも会えました。

「サンダーボルトファンタジー」のテレビシリーズを見ていたにも関わらずアニメ情報に疎い私は昨年か一昨年に映画館で上映されたという「Thunderbolt Fantasy 生死一劍」のことを知りませんでした。いつかどこかで私もその作品を見ることができるといいなと思います。私はこのようなアニメ(人形劇)関連の展覧会を見に行くのが初めてだったこともあり、行くのに少し勇気が要った部分もあるのですが、無事に見に行くことができて良かったです。すてきな人形たちでした。ありがとうございました。

一昨日のドラマ「犬神家の一族」と、横溝正史と吉備真備の岡山県の真備町のこと

フジテレビのスペシャルドラマ「犬神家の一族」を見ました。(といっても、全部ではなく、後半部分です。前半部分は、録画できていませんでした。)

原作は、横溝正史の長編推理小説「金田一耕助シリーズ」の『犬神家の一族』です。

過去に何度も映像化されている有名な作品なのだと思うのですが(特に市川崑監督の映画が有名なのだと思います)、私はこの何作かをドラマや映画で知っているはずの有名な「金田一耕助シリーズ」の物語の内容を、次に見る時にはなぜかいつもほとんど忘れているような気がしています。

フジテレビの2時間ドラマの「金田一耕助シリーズ」というと、私はSMAP時代の稲垣吾郎さんが名探偵・金田一耕助を演じていたシリーズ(全5作でした)を思い出します。でも、今回金田一さんを演じているのは、稲垣吾郎さんではなく、NEWSの加藤シゲアキさんでした。その上で「犬神家の一族」をドラマ化するということは、もしかしたらですが、加藤シゲアキさんを主演とした新シリーズを始めるということなのかもしれません。

たくさんの金田一耕助作品の中でどうしていつも「犬神家の一族」や「八つ墓村」ばかりを繰り返し映像化するのだろうということも少し気になるのですが、他の作品よりも映像化しやすい作品なのでしょうか。

今作の「犬神家の一族」の脚本は根本ノンジさん、演出は澤田鎌作さんでした。

以前に「犬神家の一族」のドラマを見た時にも思ったことなのですが、結局犬神家は地元の名家のまま?存続するということを考えると、青沼親子はかわいそうだなと思います。強い恨みの気持ちを持って誰かを呪ったとしても、その呪いが相手に通じるとは限りません。

青沼静馬は、犬神松子(黒木瞳さん)が殺人者だと知りながら、松子さんに正体を打ち明けていたのですが、どうして殺されると思わなかったのでしょうか。それとも、あえて殺されるように仕向けていたのでしょうか。

自身も復員した金田一耕助さんのシリーズには、戦争直後の時代の空気感が出ていることが大切であるようにも思えるのですが、犬神佐清(賀来賢人さん)が告白する場面で使われていた戦争の映像はあの映像で合っていたのかなということも、少し気になりました。

盲目の琴の先生の宮川香琴(梶芽衣子さん)の場面には、静かなリアリティがあったように思いました。(稲垣吾郎さんが金田一さんを演じていたドラマでは、 岸田今日子さんが宮川香琴を演じていました。)

あと、その稲垣吾郎さんの金田一さんのドラマには、小日向文世さんの演じる作者の横溝正史さんも登場していたのですが、今作の加藤シゲアキさんのドラマには登場していませんでした。

面白かったというのとは少し違うかもしれないのですが、でも、これはこれで、新しいフジテレビの「金田一耕助シリーズ」のドラマとしては良かったのだろうと思います。


ところで、私は江戸川乱歩を好きなのですが、その編集者で親しい友人でもある横溝正史の作品をまだほんの少ししか知りません。今年の7月6日の西日本広域多発豪雨による増水の被害を受けて水没していた岡山県倉敷市真備町では、51人の方が亡くなったということが報じられていましたが、真備町の岡田という地区は、太平洋戦争中に横溝正史が疎開していた場所でもあるそうで、「横溝正史疎開宅」が保存されていて、名探偵・金田一耕助のイベントも開かれているそうです。金田一さんのイベントのことを、私は、西日本豪雨の災害報道の中で知りました。(山梨県山梨市の「笛吹川フルーツ公園」という夜景でも有名な公園の近くにある「横溝正史記念館」は数年前に一度訪れたことがあります。行ってみたいなと思っていた場所でした。東京の世田谷区にあった自宅の木造の書斎を移築して当時を再現したものだそうです。書斎ということもあり、それほど広い建物ではないのですが、良い記念館でした。横溝正史さんの遺品や作品や関連品などの展示品の中には、乱歩の手紙もありました。)

2005年までは「吉備郡」にあった真備町は、奈良時代の高官で学者の吉備真備の出身地でもあるそうです。真備町の真備は「まび」と読むそうなのですが、昔は「まきび」と読んでいたのでしょうか。吉備真備は、阿倍仲麻呂や玄昉と同じく遣唐使の船に乗って当時最先端の唐の都の長安に留学した一人で、日本史の教科書にも載っている有名な人物ですが、鑑真和上を唐から日本に連れて来た人でもありました。有名だけれど詳しいことはよく知らない歴史上の人物でもあったので、NHKのBSプレミアムの「英雄たちの選択」(歴史学者の磯田道史さんが司会を務める歴史番組です)の「右大臣吉備真備」の特集を見て、藤原仲麻呂(藤原恵美押勝)に恐れられて何度左遷させられてもその場で能力を発揮して歴代天皇に重用され続けたという吉備真備は、天才的な人だったのだなと思いました。学問の神様としては、全国にたくさんの神社(天満宮、天神社)のある、平安時代の右大臣菅原道真(左大臣藤原時平に今の福岡県太宰府へ左遷されたそうです)が有名ですが、吉備真備が有名な学問の神様(あるいは文化や医術や戦なども含めた総合的な学問の神様)になっていても良いように思えました。
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