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「名探偵・明智小五郎」第1夜

テレビ朝日の2夜連続スペシャルドラマ「名探偵・明智小五郎」の第1夜「SHADOW~警察データベース流出!! 犯罪者連続殺人」を見ました。

私は江戸川乱歩の作品をとても好きなので、明智さんがまたドラマ化されると知り、また、明智小五郎を西島秀俊さんが演じると知り、ドラマを見るのをとても楽しみにしていました。カズオ・イシグロさんの小説を原作としたNHKのドラマ「浮世の画家」も見たく思っていたのですが、放送時間が重なっていたので、そちらは録画をしておくことにして、放送時間にはこちらの「名探偵・明智小五郎」のドラマを見ることにしました。

第1夜は、国際手配されているハッカー集団「ファントム20」によるサイバー攻撃の被害に遭った「ひかり銀行」の金庫室に保管されている貴重品を、警視庁の刑事部長の浪越謙次朗(香川照之さん)の指揮下で捜査を始めた「サイバー捜査支援室」の主任の小林芳雄(伊藤淳史さん)たちよりもいち早く、泥棒たちから守ることができたサイバーセキュリティー企業「AKロジスティクス」の元CEOで探偵事務所を開いている明智小五郎(西島秀俊さん)が、浪越刑事部長の送ってきた小林さんの捜査協力の依頼に応じ、小林さんと、明智さんがスカウトしたハッカー「チームBD」のメンバーの柴崎始花(上田遥さん)、桂正一(大倉孝二さん)、羽柴壮二(池田鉄洋さん)と共に、インターネットのライブ中継を使って犯行時未成年だった元犯罪者の3人を公開処刑する爆弾椅子事件を計画した「SHADOW」を名乗る犯人の正体を突き止めていく、という話でした。

その他の主な登場人物は、明智さんの妻で「AKロジスティクス」の現CEOの文代(石田ゆり子さん)、小林さんの妻で元地下アイドルの真由美(岸井ゆきのさん)と娘の過去を隠す母親(ふせえりさん)、「開化ビルヂング」の2階?の「明智探偵事務所」の前で酒浸りになっている男性(でんでんさん)、「ファントム20」(怪人二十面相)の元メンバーで明智さんの情報屋の黒電話(生瀬勝久さん)でした。

脚本は酒井雅秋さん、音楽は末廣健一郎さん、監督は木村ひさしさんでした。

このドラマを見る前、この作品について、明智小五郎と小林少年の活躍する時代設定を現代に変え、デジタル機器を駆使してサイバー犯罪に立ち向かっていく話になっているということを聞いた私は、もしかしたら、NHKのBSプレミアムで放送されていたイギリスのBBC制作のコナン・ドイルの小説を原作としたドラマ「SHERLOCK(シャーロック)」(名探偵のシャーロック・ホームズをベネディクト・カンバーバッチさんが、親友のジョン・H・ワトソンをマーティン・フリーマンさんが演じていました)のような雰囲気のミステリー作品になるのかなという風にも少し期待していたのですが、全く違いました。

何というか、なかなかガチャガチャしたドラマだな、というのが、このドラマを見始めてすぐの私の印象でした。ドラマの画面には「江戸川乱歩 原作」という字幕が出ていたのですが、これは「江戸川乱歩“原作”」というよりは「江戸川乱歩“原案”」のドラマなのではないかなと思いました。

タイトルには「名探偵・明智小五郎」とあるのですが、乱歩の小説のキャラクターの名前を使っているだけで、時代設定を現代に変えたという以上にこれほど内容が(別のものと言っていいくらい)新しいものに変わっていることを思うと、私には、このドラマの主人公の探偵が「明智小五郎」である必要はないように思えてしまいました。

主人公の探偵をあえて江戸川乱歩の有名な名探偵・明智小五郎にしなくても、全く新しいオリジナルの探偵ものにすれば良かったのではないかと思います。そうすれば(あるいはせめてタイトルが「名探偵・明智小五郎」でなかったなら)私のような人でも、もっと気軽な気持ちでこのドラマを楽しむことができたのかもしれません。

以前に見たアニメ「乱歩奇譚 Game of Laplace」や「TRICKSTER -江戸川乱歩「少年探偵団」より-」や「超・少年探偵団NEO」や「文豪ストレイドッグス」なども、今回のテレビ朝日のドラマ「名探偵・明智小五郎」と同じように、「江戸川乱歩“原案”」というかそれ以上にキャラクターの名前や設定の一部だけを使っている作品で、乱歩の著書も好きだけれどそのアニメや漫画のような種類の作品(それを原案とした二次創作的な作品)も好き、という方ももしかしたらたくさんいるのかもしれないと思うのですが、私には少し残念に思えてしまいました。

近年に私が見た江戸川乱歩の小説や明智小五郎の関連の作品は、NHKのBSプレミアムで放送されていた「シリーズ・江戸川乱歩短編集」です。女優の満島ひかりさんが明智小五郎を演じていました(第3弾の「満島ひかり×江戸川乱歩」には明智小五郎は登場していません。また、「江戸川乱歩短編集」とは書かれていませんでした)。

過去にも様々な俳優さんたちが明智小五郎を演じてきたそうです。私立探偵の明智小五郎を描いたドラマの中では、私は、昔のフジテレビのドラマ「名探偵 明智小五郎」をとても好きで見ていました。陣内孝則さんが主人公の明智小五郎を演じていたシリーズです。物語も面白く、時代設定もそのままの昭和初期の雰囲気が良かったですし、おしゃれで紳士的で鮮やかな明智さんがとてもかっこ良かったのです。テーマ曲もドラマに良く合っていて好きだったので、このドラマを思い出すと今でも頭の中にその音楽が流れてきます。森口瑤子さんの演じるモダンな雰囲気の和服の文代さんもきれいでした。昔に見たのでドラマの内容そのものはうろ覚えになっている部分もあるのですが、原作の乱歩の小説の良さを活かした探偵ドラマになっていたように思います。

今回のドラマ「名探偵・明智小五郎」は、アクションシーンが多く、コメディ演出の強いドラマでした。監督の木村ひさしさんが演出を務めた作品としては、最近のものでは例えばTBSのドラマ「99.9-刑事専門弁護士-」を私は思い出すのですが、そのドラマを好きだった方にはもしかしたら今回のドラマも面白く見ることができたのかもしれません。

ドラマの宣伝では「“平成最後の”明智小五郎」という言葉が使われていました。ということは、4月が終わるまでのあと1か月の間にはどこのテレビ局でも新しい明智小五郎ドラマは作られないということなのかもしれません。エンドクレジットには原作協力として江戸川乱歩の孫の平井憲太郎さんの名前が書かれていたのですが、第1夜を見た私には、このドラマがそこまでして作るような“平成最後の”明智小五郎ドラマだったのか、よく分からないようにも思えてしまいました(何となくなのですが、例えば日本テレビの「金曜ロードショー」枠で放送される特別企画のドラマ風にも見えました)。

でも、西島秀俊さんと伊藤淳史さんのコンビ、香川照之さんや石田ゆり子さんなど、どこかのドラマでも共演しているのを見たことがあるような見慣れたキャストには、安定感があります。もしかしたら第1夜の物語よりはもっと面白くなっているかもしれないですし、放送時間にテレビの前で見ることができるかどうかは分からないのですが、第2夜「VAMPIRE」も見てみようかなと思います。


ところで、このスペシャルドラマを見る前の時間にNHKで放送されていたドキュメンタリー番組シリーズ「天皇 運命の物語」の第4話「皇后 美智子さま」も、また感動的で良かったです(先週の第3話は「象徴 果てなき道」でした)。新見南吉の童話「でんでんむしのかなしみ」と美智子さま、という印象の特集でもあったのですが、美智子さまの過去のお言葉や和歌にも込められている、小さきものの命や弱い立場に置かれている人々の悲しみに寄り添うことのできる美智子さまの優しさが一市民の私にもよく伝わってきました。戦後の日本にもしも今上天皇陛下と皇后美智子さまがいなかったなら、戦後の日本の姿は今とは全く別のものになっていたのかもしれないと思います。美智子さまの和歌や言葉が日本文化を世界に開く「窓」になっているという話も良かったです。

「週休4日でお願いします」

NHKの第42回創作テレビドラマ大賞受賞のドラマ「週休4日でお願いします」を見ました。

小さなお弁当屋さんでほぼ休みなく、今すぐにでも辞めたいと不満を抱えながらも毎日大人しく忙しく働いていた店長代理の高橋直人(岡山天音さん)が、ある日パートの面接に現れ、「週休4日でお願いします」と自分の働き方の希望をはっきりと伝える、独身で一人暮らしで特に夢を追いかけているわけでもない、こけし好きで不思議な雰囲気の同い年の青木華(飯豊まりえさん)に惹かれていき、それまでの有給休暇の申請さえできなかった自分の働き方や生き方を見つめ直していく、という物語でした。

脚本は石原理恵子さん、音楽は高野正樹さん(高の文字ははしご高です)、演出は鹿島悠さんという作品でした。

飯豊まりえさんの演じる自分の意見ははっきりと言うけれど穏やかで少し不思議な華さんは、いつの間にか少しずつ個性豊かなこけしを好きになっていった直人さんにとっての、「そばにいるだけで落ち着く」こけしのような存在になっていったのかなと思います。

華さんが直人さんを好きになった理由は、はっきりとは分からなかったのですが、優しさや真面目さが華さんに伝わっていたのかもしれません。

直人さんが忙しく働いていたのは「食べるため」だったのですが、華さんが週休4日を希望したのも「食べるため」でした。本当に自分らしく生きるとは何かということを、伝統的な「こけし」の紹介を交えながら、ふんわりとした雰囲気で描かれた、社会派のような、ファンタジーのようなドラマでした。

“ラブストーリー”だったのですが、「好き」を手を叩く合図で伝えるという、少し地味だけれど楽しそうな、直人さんと華さんの最後の場面も良かったです。拍手の回数が少しずつ交互に増えていくところにも、何か、二人の幸せな感じが伝わってきました。

こけし好きというたんぽぽの川村エミコさんも出演していて面白く思えたのですが、もう少し自然な登場の仕方でも良かったような気がします。

でも、最後まで優しい雰囲気のこけしドラマ?になっていて、良かったように思います。私は伝統こけしのことをよく知らないのですが、ぬいぐるみや人形などと同じく、一体一体「顔」が違うので、かわいいなと思える一体を見つけることができたなら、並べて置くのも楽しいのかもしれないなと思いました。


ところで、この“働き方改革こけしラブストーリー”の「週休4日でお願いします」のドラマとは全く関係のないことなのですが、昨日の報道によると、日本には40歳から64歳の「ひきこもり」の人が約61万人いて、中高年の「ひきこもり」のほうが39歳以下の若者の「ひきこもり」よりも多いらしいということが内閣府の調査で分かったのだそうです。でも、その今回の調査には、過去の調査では除外されていたという専業主婦・主夫の人や家事手伝いの人、近所のコンビニエンスストアなどには出かける人なども含めていて、家族以外の人間との接触が少なければ「ひきこもり」とみなした、というような「ひきこもり」の捉え方を聞いて、その人たちの状態を指す言葉は「ひきこもり」という言葉で本当に合っているのだろうか、「ひきこもり」という言葉を別の言葉に置き換えたほうがいいのではないか、そもそも「ひきこもり」とは何だろうかと、少し気になりました。

アウトドア的趣味のないただのインドアの人かもしれない主婦や主夫や家事手伝いや家業手伝いや早期退職した人も「ひきこもり」に含める政府の考える「ひきこもり」の人とは、学校や塾などへ通っていない人、お給料や賃金をもらう仕事をしていない人、外へ働きに出ていない人、地域のサークル活動やボランティア活動や(謎の)宗教団体活動などの、社会性のある集団行動をしていない人のことなのでしょうか。暗く汚い部屋に閉じこもってずっとゲームやインターネットばかりしていて家族が寝静まった深夜にコンビニに出かけて食べ物などを買って帰るというようないわゆる「ひきこもり」の人物像を作ったのは、テレビメディアだと思いますが、「ひきこもり」の人の多くはそのような生活を送る人たちではないそうですし、人それぞれ生き方も考え方も環境もどうしてそのように生きているのかという理由も異なるのですし、多くの人々がその何か暗いだけ?の「ひきこもり」のイメージを変えない限り、「ひきこもり」の対策というものを取るということはできないような気もします。

「ひきこもり」は今は欧米でも社会問題になっていて、日本語の「ひきこもり」がそのまま使われていると聞いたことがあるのですが、少なくとも、社会の構造自体を改良しないうちに、何らかのそれぞれの事情で家族以外の人間との関わりが少ない人たちのことを良くない状態だとして、無理矢理外側から今の社会に適応させようとするのは(怖いですし)やめたほうがいいのではないかと思いました。

「消えた祖父の謎を追う~“アメリカの敵”となった日本移民~」

NHKのBS1のドキュメンタリー「消えた祖父の謎を追う~“アメリカの敵”となった日本移民~」は、それまで家庭内ではタブーになっていたという日系人の祖父のことについて、亡くなる直前の父親のレイモンド・ブーンさんから調べてほしいと頼まれた報道写真家のレジーナ・ブーンさんが、国立公文書館に保管されていた祖父・宮崎鶴寿さんの書類を読み、旧日本軍による真珠湾攻撃の20年前にアメリカへ渡った日系移民の祖父が日米開戦によって「敵性外国人」とされてアーカーソン州の強制収容所(夏は40度にもなる場所で湿度も高く、人々は蚊や蛇に悩まされていたそうです)へ送られたことを知り、収容者を労働者として使うという日系人社会の分断を狙った政策によってシカゴなどに「再定住」させられた人々や、父親の友人たちから話を聞きながら、1948年8月1日に49歳で亡くなったという祖父の鶴寿さんの人生を考えていく、という特集でした。

レジーナさんが祖父の鶴寿さんを探していることを知ったNHK長崎放送が地元のニュース番組で写真付きで呼びかけたところ、親族の方が見つかったそうです。立派な仏壇に入っていた写真が、来日したレジーナさんの持っていた祖父の写真と同じでした。レジーナさんは、祖父が私たちを会わせてくれたと、親族の方たちと喜んでいました。墓石には鶴寿さんの名が刻まれていたのですが、終戦の2年後に遺骨が日本へ送り届けられたということでした。

レジーナさんの父親で鶴寿さんの息子のレイモンドさんは、新聞社を創ったジャーナリストだったそうです。町の通りの名前にもなっていました。生前のレイモンドさんは、歴史を理解することはとても重要だ、今の人たちはその機会に恵まれている、でもそれを手に入れるのは簡単なことではなかったと話していました。

レイモンドさんは、社会の不正といつも戦っていたそうで、レジーナさんは、祖父のことがあったからではないかと考えていました。日本からの移民だった祖父の歴史を知ったレジーナさんは、この歴史は日系人のものでも日本人のものでもなく、みんなのものだと話していました。

アメリカの国立公文書館は本当にたくさんの史料を保管していてすごいなということも、また改めて思いました。日本にも、昔の戦争の犠牲者の方々に関する公文書はちゃんと残されているのでしょうか。残されている気がしないのですが、未来の人々が過去の歴史的事実を正しく知ることができるようにするためにも、せめてこれからの行政府の方々には、公文書を、改ざんしたり変造したり破棄したりすることなく、そのまま残すようにしてほしいと思います。

ドラマ「砂の器」(フジテレビ開局60周年企画)

一昨日のフジテレビの開局60周年特別企画のスペシャルドラマ「砂の器」を見ました。

これまでに何度も映像化されている松本清張の長編推理小説『砂の器』の新作ドラマです。

私は中居正広さんが天才ピアニストの和賀英良を演じていた2004年頃のTBSの「日曜劇場」の「砂の器」(脚本は龍居由佳里さん、演出は福澤克雄さん)をとても好きで見ていました。和賀さんの過去を知る亀嵩の元警察官の三木謙一を演じていたのは赤井英和さん、父親の本浦千代吉を演じていたのは原田芳雄さん、今西刑事を演じていたのは渡辺謙さんでした。脚本や演出や俳優さんたちが良かったということもあるのですが(和賀さんの子供時代を演じていた齋藤隆成さんも良かったです。いわさきちひろの絵に描かれる子供のようでした)、過去を隠して生きる孤独な和賀さんが作曲したピアノ協奏曲「宿命」(千住明さん作曲)の音楽が好きでした。「宿命」は、映像化作品によって様々な曲になるのだろうと思うのですが、私にはこのドラマの「宿命」がとても印象的だったので、「砂の器」と聞くと今でもこの音楽が頭の中に流れてくるほどです。

2011年の秋には、テレビ朝日でスペシャルドラマの「砂の器」が放送されていました(天才ピアニストの和賀英良を演じていたのは佐々木蔵之介さんだったのですが、主演は所轄の吉村刑事を演じていた玉木宏さんでした)。

今回のフジテレビの「砂の器」では、作曲家の和賀英良を中島健人さん、ベテラン刑事の今西栄太郎を東山紀之さん、所轄の若手刑事の吉村弘を野村周平さん、父親の本浦千代吉を柄本明さん、児童養護施設の園長(巡査ではありませんでした)の三木謙一を高嶋政伸さんが演じていました。

脚本は小峯裕之さん、演出は河毛俊作さんでした。音楽はFace 2 fAKEさん、メインテーマは眞鍋昭大さんでした。構成のところに名前が書かれていた橋本忍さんと山田洋次さんは、1974年の映画版の制作者でした。私はその映画を未見なのですが、TBSの「砂の器」のクレジットにも、お二人の名前が書かれていたようでした。

知られたくない過去のある天才ピアニストの和賀英良が、ある日自分を訪ねて来た過去を知る三木さんを人気のない場所(今回は蒲田ではなくハロウィーンの時期の渋谷に変わっていました)で人物の特定が難しくなるほど無残に撲殺し、今西刑事が聞き込み調査で得た「カメダ」という言葉から島根県の亀嵩という町にたどり着き、その地とつながりのあるピアニストの和賀英良の過去と犯行を突き止めていくというような展開は、私の知る「砂の器」と共通していました。

でも、今回のドラマでは、和賀さん(中島健人さん)が三木さんを殺害する理由の、父親への差別や偏見、村八分の残酷さなどは、あまり描かれていなかったように思いました。

TBSの「砂の器」でも、テレビ朝日の「砂の器」でも、父親の千代吉さんが息子を連れて放浪の旅に出る理由は少し違うものになっていたように思うのですが、ハンセン病への差別を描くのが現代のテレビドラマでは難しいのだとしても、そこから全くかけ離れてしまうと、「砂の器」ではなくなってしまうような気がします。

「砂の器」の物語の時代設定を、防犯カメラが多用されているインターネット社会の現代(2018年の秋から2019年の冬の終わり頃)にしていたというところに、すでに無理が生じていたのかもしれないとも思います。というか、渋谷のハロウィーンの騒ぎを描くなど、「砂の器」の物語をあえて軽めの現代風にアレンジする意味が、ドラマを見ていた私にはいまいちよく分かりませんでした。

今回のドラマでは、過去を知られることを恐れた和賀さんが殺した三木さんは、児童養護施設の園長先生だったのですが、その人を惨殺するほどに和賀さんが隠したかった過去というのは、本浦秀夫だった昔、当時14歳だった兄が広島で連続幼女殺害事件を起こして逮捕され、マスコミが本浦家に押しかけてくるようになったある日心労で倒れて病院に搬送された母親が亡くなり、しつこく嫌がらせをしてくるようになった近所の青年を殺してしまった父親に連れられてお遍路さんの姿で諸国巡礼の旅をしていた、というものでした。放浪生活の最中、亀嵩で熱を出して倒れていたところを養護施設の三木さんに助けられた秀夫さんは、自首をすることにした父親にそのままその養護施設に預けられたのですが、その後、養子に入った先の家族が亡くなると、放浪生活中に山奥で出会った精神を病む?ピアニストの和賀(升毅さん)の家を訪ね、その亡き息子・英良に成りすましたようでした。そして、天才ピアニスト・和賀英良として出世すると、愛人の成瀬梨絵子(土屋太鳳さん)の存在を隠しつつ、文部科学大臣(北大路欣也さん)の娘(桜井日奈子さん)と婚約したのでした。

現代版とするには、少し雑というか、中途半端のように思えましたし、社会派の要素を薄くするのなら、「砂の器」ではなくても、別の長時間ミステリードラマとして作ったも良かったのではないかと思います。「砂の器」を原作としていても、「砂の器」以外の別のタイトルのドラマだったなら、今回のような作りのドラマでもあまり気にならなかったかもしれません。

もしもこの「砂の器」のドラマを社会派にするのなら、例えば、父親の罪の背景にあった兄の罪の背景に関して、なぜ兄はその町で“連続幼女殺人事件”の犯人となったのかというところを、もっとしっかりと描く必要があったのではないかと思います。しかも、その理由は、ドラマを見ている視聴者たちの身につまされるようなものでなくてはいけません。ただ、そのような「罪」を描くのは難しいと思います。それでも、ハンセン病患者への差別や村八分という罪と、女児殺しの罪や不良青年殺しの罪とでは、さすがに罪の内容が違い過ぎるような気がしました。

和賀さんの愛人の女性が三木さんの返り血を浴びた和賀さんのシャツを細かく切って紙吹雪のように電車の窓から散らすという演出も、昔でもどうかと思いますがこのドラマが現代の物語であるという点ではなおさら、私には不自然に見えてしまいました。

刑務所を出て福祉施設に入所している父親に会いに行ってほしいと和賀さんに頼みに来た三木さんが、和賀さんに、父親と兄の血が流れているのは“宿命”なのだというようなことを言っていたのも、犯罪者になることと血縁とは何の因果関係もないので、間違った印象を視聴者に与えないようにするためにも、現代版にするのなら、例えば、父親と兄と君は血縁関係にあっても別人格だという風に言ってほしかったように思います。

刑事ドラマとしては、和賀さんの過去を知った今西刑事の独演会状態の涙ながらの説明も(他の刑事さんたちはそれぞれの席に座って、じっと黙って今西刑事の話を聞いていました)、私には、あまり良くなかったように思えてしまいました。

今回の「砂の器」のドラマを好きだった方もたくさんいると思うのですが、結局、このスペシャルドラマは、中島健人さんに“天才ピアニスト”を演じてもらうための「砂の器」だったのかもしれません。

「砂の器」というタイトルではなかったなら別のミステリードラマとしてもう少し気軽な気持ちで見ることができたのかもしれないのですが、私は冒頭のハロウィーンの場面から少し違和感を持ってしまいました。物語の時代を現代の設定にしたり日本社会の負の歴史を描かないことにしたりするのなら、松本清張の『砂の器』を映像化するのはこれからもっと難しくなるのだろうなというようなことも少し思いました。


ところで、このドラマの放送の途中、俳優の萩原健一さんが亡くなったという訃報がニュース速報(あの突然の音が少し苦手です)で入りました。68歳だったそうです。私は、萩原健一さんが「ショーケン」と呼ばれていることを知っていても、昔の活躍はあまり知らないのですが、最近には、NHKのBSプレミアムで放送されていた「鴨川食堂」の料理長で元刑事の鴨川さんや、「不惑のスクラム」の宇多津さん、「どこにもない国」の吉田茂総理大臣、NHKの大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」の高橋是清(最初のパーティーの場面にいました)などで見ていたので、また寂しく思いました。ショーケンさんの死もまた、一つの時代の終わりということなのかもしれないなと思いました。

映画「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」

NHKのBSプレミアムで放送されていた、2017年の夏公開の東宝のアニメ映画「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」を見ました。

何となくタイトルを聞いたことがあるということと、ラジオや歌番組などで聴いたDAOKOさんと米津玄師さんの歌う主題歌の「打上花火」が良かったということと、公開当時話題になっていたようだったという理由で、昨夜のBSプレミアムでの放送を、見てみることにしました。

2017年の8月に公開されたシャフト制作のアニメ映画で、原作は岩井俊二さん、脚本は大根仁さん、監督は武内宣之さん、総監督は新房昭之さん、製作総指揮は川村元気さんという作品でした。

またこのような感じの絵のアニメか、とも思ってしまったのですが、細田守監督のアニメ映画「時をかける少女」のような、自ら同じ夏の一日を繰り返すSFの、タイムリープものの「ボーイ・ミーツ・ガール」の物語でした。

ただ、私には、新海誠監督のアニメ映画「君の名は。」に似た生理的な(性的な)気持ち悪さがところどころに混ざっているというか、男子から見た“男子の理想の女子像”を描いたアニメのようにも思えました(アニメ映画「君の名は。」は人気作品ということなのですが、私には残念ながらその良さがいまいちよく分かりませんでした)。

絵の雰囲気(水着の場面なども含め)もそうなのですが、及川なずなさんの「女の子はどこでだって働けると思うの」とか「私にはママのビッチの血が流れてるの」などの台詞に、この映画の作者の方の女性観のようなものが集約されているようにも思えました。

「if もしも」というドラマが昔フジテレビで放送されていたのですが(「世にも奇妙な物語」の後継番組として放送されていたような気がします)、このアニメも「if もしも」がテーマになっていたようでした。登場人物たちが暮らしている架空の日本の坂の多い港町の名前も、茂下(もしも)でした。

なずなさんが海で拾った父親の形見の、灯台の遠くまで光を届けるためのレンズのような小さなガラス玉(ビー玉)は、「ドラえもん」の「もしもボックス」のような不思議な道具でした。「もしも・・・だったら」と願いながら投げると、願いが叶うようでした。

でも、主人公の島田典道さんの本当の世界は、学校のプールでの競争に勝った同じクラスの安曇祐介さんを花火大会に誘った浴衣姿のなずなさんが、午後5時過ぎに、再婚相手の男性と別の町へ引っ越す計画を立てている母親に無理矢理連れ戻されそうになった日までで、それ以降の、ガラス玉の「もしも」で作った世界は、元の世界とは別のもう一つの別の世界でした。

背が高くて14歳だけれど16歳の高校生にも見える憧れの同級生のなずなさんに、好きだという気持ちを伝えることも、母に連れ去られるなずなさんを助けることもできない自分を変えたくなった典道さんは、「もしも」の夢の世界(最初の世界ではなずなさんは祐介さんに告白して花火大会に誘い、祐介さんはなずなさんとの恋?よりも典道さんとの友情を優先しようとしていました)に、自分のことを好きになってくれるなずなさんを見つけ、「もしも」の力を借りて幻のなずなさんと両想いになった、ということなのかなと思います。

不思議なガラス玉は、なずなさんにも使えるかのように描かれていたのですが、本当は、なずなさんにはただの形見のガラス玉だったのではないでしょうか。最初の日に、浴衣のなずなさんが「放して」、「やめて」と大声で訴えながら母親に無理に連れて行かれるのを、直後に道を歩いてきた祐介さんを含む男子生徒たちが全く見ていないというのも、少し奇妙に思えたのですが、もしかしたら、あの後、なずなさんは海で亡くなって、その夜のうちに典道さんも海で亡くなったのではないかなと、最後の典道さんが欠席していた翌朝の教室の場面を見て、何となく思いました。

灯台のレンズ中のような不思議な世界の不思議な海で、なずなさんは泳いでいました。花火になって割れた不思議なガラス玉の欠片の中になずなさんが見ていた、白い下着のようなワンピース姿のなずなさんと典道さんとのの東京名所観光旅行は、典道さんの願った世界の(典道さんのことを好きになってくれる理想の)なずなさんの夢で、そのなずなさんの見た夢を、典道さんも改めて自分の夢として共有したのではないかなと思います。

なずなさんに告白して両想いになるという願いを、典道さんが「もしも」の世界で叶えたところで、「もしも」の世界は終わり、花火大会の翌日の朝(元の世界の日常)がやって来ました。そして、そこ(中学校の教室)になずなさんと典道さんの姿はありませんでした。出席の時になずなさんの名前が呼ばれなかったとすればそれは母親が転校の手続きを終えたからなのかなと思うのですが、典道さんの名前は先生に繰り返し呼ばれていました。教室にいない典道さんに関して友人の祐介さんが無関心そうにしていたのは(私にはそう見えました)、花火大会へ行く前に突然典道さんに殴られたまま喧嘩別れしていたからとも思えます。

本当のところは分からないのですが、典道さんの来ない教室の場面で終わっていたのは、終わり方としては、何か良かったような気がしました。黒い背景に白い文字だけのエンドロールが少し意外にも思えたのですが、そこに流れる主題歌の「打上花火」は良かったです。

私はこのアニメ映画のことをよく知らずに見始めたので、なずなさんの声を演じていたのが広瀬すずさんで、典道さんの声を演じていたのが菅田将暉さんで、なずなさんの母の声を演じていたのが松たか子さんというようなところも、最後のクレジットを見て知りました。

CGが多用されているアニメ作品を、私はまだ見慣れないのですが、リアリティはなくても、風景などの色合いや雰囲気は、きれいだったように思います(風景がきれいに見えるというところは、アニメ映画「君の名は。」の場合もそうでした)。灯台のレンズの中の世界、ガラス玉の世界、典道さんはその世界の中で理想のなずなさんと遊んでいたのではないかなと思います。

最近のアニメ映画に「対象年齢」というものがあるのかどうか分からないのですが、このアニメ映画は、何歳くらいの人を対象年齢としたアニメ映画だったのでしょうか。登場人物たちに共感するのは私には少し難しいようにも思えたのですが、あるいは、この物語は、「もしも・・・だったら」と思い付く願い事があるのなら、それを叶えるために、ちゃんと言葉にしたり行動で示したりしたほうがいいよと、迷っている少年たちの背中を押す物語だったのかもしれません。
プロフィール

Author:カンナ
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