阿寒湖のマリモの特集

先日のNHKで放送され、録画をしておいた「NHKスペシャル」の「神秘の球体 マリモ ~北海道 阿寒湖の奇跡~」を見ました。

北海道の釧路の阿寒湖のマリモの特集です。マリモを一年間に渡って初めて記録した映像ということで、放送時間に見ることはできなかったのですが、私も見るのを楽しみにしていました。

釧路市のマリモ研究所の若菜勇さんという研究者の方が参加していたのですが、マリモのことがとても分かりやすく伝えられていて面白かったですし、映像もきれいでしたし、とても良い特集でした。

私は小さい頃に一度だけ、江ノ島のお土産でマリモを買ってもらったことがあります。小瓶に閉じ込められていた緑色のマリモはとても小さくてかわいくて、いつか大きくなるのだろうと思っていたのですが、結局死んでしまったのではないかと思います。マリモと聞くと、そのことも少し寂しく思い出されます。

でも今回の特集を見ていて改めて、私のお土産のマリモ(少なくとも本物の藻だったらなのですが)が育たなかった理由もよく分かりました。

ロンドンの博物館に最古のマリモの標本が残されているほど、マリモは、以前は世界各地(地図だと北半球の場所でした)で目撃されていたそうなのですが、今は世界で唯一、阿寒湖にしか生息していないそうです。しかも、今は阿寒湖の北部のチュウルイ湾という場所にだけ群生しているのだそうです。

チュウルイ湾の「チュウルイ」というのは、アイヌの言葉で「波が荒い」を意味するそうで、若菜さんによると、夏、そこには風速6メートルから10メートルのやや強めの風が浅瀬に向かって吹きつけ、それによって波が起きるということでした。

強い光の射し込む明るい水中には、たくさんの丸いマリモがひしめき合っていたのですが、その映像を早送りにしたところ、少し強い風に作られた波によって、マリモはくるくると回転しているということが分かりました。

マリモはだいたい同じ場所で回っていたのですが、回転しながら少しずつ光の当たる場所を変え、満遍なく光合成によって成長するために、丸くなるのだそうです。サッカーボールとかバスケットのボールくらいの大きさのマリモになるまで7年ほどかかるそうです。

中くらいの大きさのマリモを若菜さんがナイフで半分に割っていたのに驚いたのですが、その中まできれいな緑色をしていました。年輪のように少しずつ色が違っていました。マリモは細い繊維の集まりだそうで、フェルトのようにも見えました。丸いマリモの他に、丸くならずに水中を漂っている浮遊型マリモや、岩に貼り付いている着生型マリモもあるそうです。私は「マリモ」は「毬藻」だと思っていたのですが、丸くなくてもマリモということは、「マリモ」は藻の種類の名前なのでしょうか。

若菜さんは、アイスランドのミーバトン湖のマリモ研究者に会いに行っていたのですが、その湖では2002年にはたくさんいたマリモが今ではほとんど絶滅し、その研究者の方が調べたところ、今年はまだ2個しか見つかっていないということでした。若菜さんが潜水したところ、水は泥で濁っていて、その泥を探ると、何とその下からマリモが出てきたのですが、マリモはすでに死んでいて、若菜さんが持つとバラバラに崩れていきました。

若菜さんが採取した泥をミーバトンの研究者が調べたところ、泥の中にはユスリカの赤色の幼虫がいたので、私はそのユスリカ(水の上を集団でふわふわ飛んでいる小さな虫のことだそうです)がいることが問題なのかと思ったのですが、そうではなく、むしろユスリカは激減していて、そのことが問題だということでした。ユスリカの幼虫は泥を固める成分を出すそうなので、その虫が減ると、泥が下に留まることができず、マリモを覆ってしまうのだそうです。

ミーバトン湖の環境の変化の原因は、湖のすぐ近くに工場ができたことにあるそうです。その排水が湖に流れ込んでいるのだそうです。そこは国立公園のようにはなっていない場所だったのでしょうか。研究者の方が指した湖の向かいには、確かに工場らしき建物がありました。

阿寒湖のチュウルイ湖のさらに北にはパンケトーという透明な水の美しい湖があるそうなのですが、その水は阿寒の原生林の副流水の湧水で、その水がチュウルイ湖に入ってくることによって、マリモの生息環境は保たれているのだそうです。森はすごいなと思いました。

マリモは、下から生えてきた葦が突き刺さったり、天敵のシオグサという藻のようなものに表面を覆われたりすることがあるそうです。映像を見ていて、シオグサに覆われたマリモは死んでしまうのかと心配になったのですが、その時もまたマリモは風と波に助けられていました。

ひしめき合うマリモが波の作用で少しずつ回転することによって、表面のシオグサが少しずつ剥がれていたのです。じゃがいもの泥を取る「芋洗い」の状態になるようでした。

マリモが浅瀬で集団で生息しているのには、そのような事情もあるそうです。しかも、回転しながら少しずつ場所を変えることによって、大きなマリモの下に埋もれていた小さなマリモにも、ちゃんと太陽の光が当たるようになっていました。

去年の11月、北海道を大型の低気圧が襲い、阿寒湖のマリモは打ち上げられてしまったそうです。全部ではなく、砂浜に打ち上げられたマリモは上のほうにいた7歳くらいの大きめのマリモだということでした。

死んでしまってバラバラになっている様子に驚いたのですが、似たようなことは1995年と2002年と2007年にも起きていると、若菜さんが話していました。

秋に打ち上げられたマリモは、白鳥の食べ物になったり、冬の湖の氷に閉じ込められたりしていたのですが、春や初夏の頃、少しずつ風が吹くようになると、引いていく水の流れに乗って、マリモの欠片たちは元の浅瀬の場所へ戻って行ったのでした。

元の場所へ帰っていく小さなマリモの様子が、何だかとても感動的でした。そうして角のあるマリモの欠片は、揺れ動く水の中でまた少しずつ丸い形のマリモに育っていくということでした。

今の世界では唯一という阿寒湖のマリモは、阿寒の森と風と太陽の光と美しい水に守られているのだなということが、マリモのことを知らない私にもよく分かりました。

阿寒湖のマリモの、打ち上げられては元の場所に帰るということが、5年から7年の周期で起きていることに気付いた若菜さんは、そのことを「輪廻」と呼んでいたのですが、本当にそうだと思いました。そこに死と再生の繰り返しの世界が完成されているから、マリモはその阿寒湖のチュウルイ湾の浅瀬という場所にいたのでした。本当にすごいです。

このような一年間の自然の取材を行う番組は、NHKらしい感じがしました。さすがはNHKだなと思いました。柄本明さんのナレーションも良かったです。

番組の最後のほうでは、研究者の若菜さんが地元の小学生に湖底のマリモの様子を見せて説明している様子が紹介されていたのですが、国や各地の人が守ることと同じくらい、あるいはそれ以上に、地元の人たちが阿寒全体の自然環境やマリモを大切に思うことが重要なのだろうなと思いました。

観察を終えた小学生が水中に帰したマリモが、ゆっくりと湖底のマリモたちの元に戻っていった最後の場面も良かったです。地上で形を崩していたマリモは、水を含んでちゃんと丸いマリモになっていました。

私は国の特別天然記念物に指定されている阿寒湖の本物のマリモを直接見たことはないのですが、それでもマリモはかわいいなと思いました。半分に割られた中身の全部が緑色の藻のマリモを見ても、まだ不思議です。

環境の変化によってマリモが絶滅してしまった湖でも、再び環境が良くなることでいつかマリモが復活することはあるのでしょうか。

同じ北海道の摩周湖の水の透明度が最近低くなっていると聞いたこともあるので心配ですが、観光客が押し寄せることになったとしても、これからも自然の森や山や川や湖や、マリモの生きる環境は守られていくといいなと思いました。
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Author:カンナ
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