映画「華氏451」

先月の、8月の下旬頃のNHKのBSプレミアムで放送された映画「華氏451」を見ました。録画をしておいたものを、ようやく見ることができました。

原作は、レイ・ブラッドベリのSF小説『華氏451度』です。(本の)紙が発火する温度が華氏451度で、それは摂氏233度のことだそうです。

私はその原作の小説を未読です。いつか読んでみたいなと思ったままになっています。

フランソワ・トリュフォー監督の映画になっているということも何となくは知っていたので、今回放送されると知って、私も見てみることにしました。

この映画は、1966年に公開されたイギリスの「SF映画」でした。

1960年代らしいというか、まさに「レトロ」な雰囲気の映画でした。字幕付きの映画だったのですが、オープニングでは映画の情報やスタッフやキャストの名前などが次々と読み上げられていました。少し色褪せたような明るいピンク色や黄色や水色や黄緑色の一色の画面の中に、様々なアンテナを映しているのも謎に思えていたのですが、映画を見続けるうちに、そのオープニングの場面が物語の内容に合わせたものであることも分かってきました。

不思議な赤色のオープンカーに乗った消防士たちが家宅捜索をして、違法薬物や脱税のお金を捜すように、見つけ出したたくさんの本の集めて火を放つ辺りから物語が始まっていたこともあって、見始めてしばらくは、この作品の物語が面白いのかどうか、私にはよく分からないようにも思えていたのですが、活字のある書物から情報を得ることが禁止されている思想管理社会の中で、その社会に何の疑問を持つこともなかった主人公の「ファイアマン」(本を焼却する消防士)のモンターグ(オスカー・ウェルナーさん)がモノレールで出会った教師のクラリス(ジュリー・クリスティさん)に本を読むことを勧められ、それまで全く興味の無かった本の存在を意識し始め、読書の魅力に取り付かれていく、という展開を見ていくうちに、この作品を面白く思えるようになっていました。

オスカー・ウェルナーさんの演じるモンターグの無表情のような眠そうな表情も良かったのかもしれません。

禁止されている本を家の中に隠し持つようになり、妻のリンダ(ジュリー・クリスティさんの二役ということだったのですが、時々外国の方の顔を見分けることができない私は映画を見終わるまで気付きませんでした)の反対にも耳を貸さなくなって、ついには本を燃やす同僚を殺して逃走してしまうモンターグは、クラリスが話していた森の奥に逃れている「本の人」たちに匿われて、一緒に暮らすようになるのですが、その「本の人」というのは、いつか本を読む自由、出版の自由が来る日のために、好きな本を一冊丸ごと暗記し、忘れないように常に暗唱したり口承で子供に伝えたりている人たちのことでした。

モンターグは、白い表紙のポーの小説を洋服の中に隠して持ってきていて、頭の中の本は誰にも奪われないと考える本の人たちから、少しずつ暗記することを勧められていました。

本の人たちが街を行き交うように、森の中を暗唱しながら歩いていた最後の場面も、何だか記号的のようにも思えて、印象的でした。

私はこの映画を見ながら、いつかキリスト教の『聖書』が登場してくるのではないかと思っていたのですが、燃やされる本の中にも、本の人の中にも、『聖書』は登場しませんでした。

でも、『聖書』が登場しなくて良かったのだと思います。もしもキリスト教の『聖書』がこの映画の物語の中に出てきてしまったら、迫害する者と迫害される者の関係性が、キリスト教の歴史と重なってしまうというか、欧米のキリスト教徒の世界の物語に限定されてしまうようにも思えるからです。

私は原作の小説を未読なので、小説と映画を比較することはできないのですが、少なくとも映画は、そのような迫害のある社会を普遍的に描いていたのではないかと思いました。

特撮のような、不思議な雰囲気の映像の映画だったのですが、おしゃれな印象もあって、最初に見始めた頃に思っていたよりも、良い映画でした。すごく面白いというのとは違うかもしれないのですが、思想的でしたし、本と心中する「図書館」の老婦人には少し驚いたのですが、本や読書を少しでも好きな人なら、本(あるいは活字や言論の自由)が政治の方針で強制的に失われていく世の中の怖さをよく分かるのではないかなと思いました。
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