映画「風立ちぬ」

日本テレビの「金曜ロードSHOW!」で放送されたスタジオジブリの長編アニメ映画「風立ちぬ」を見ました。

原作・脚本・監督は、宮崎駿さんです。ノーカットで地上波初放送されると知って、私も見るのを楽しみにしていました。

堀辰雄の小説『風立ちぬ』から着想を得た作品だそうで、映画の冒頭には、堀辰雄さんがポール・ヴァレリーの詩を訳した「風立ちぬ、いざ生きめやも」の詩が出ていて、最後には、「堀越二郎と堀辰雄に敬意を込めて」と出ていました。

映画の主人公の堀越二郎(声・庵野秀明さん)は、零戦(零式艦上戦闘機)を設計した実在の堀越二郎さんをモデルにしているそうです。

映画では、その大正時代の二郎さんの少年時代から、大学を卒業して三菱重工所属の設計士となって飛行機を作り、運命的な再会して結婚した里見菜穂子(声・瀧本美織さん)を結核で亡くし、戦争時代を乗り越えるまでの半生が描かれていました。

その他の主な登場人物は、大学時代からの友人で同じ三菱の設計士になった本庄さん(声・西島秀俊さん)、二郎さんの才能を高く評価している上司の黒川さん(声・西村雅彦さん)、医者になった堀越加代(声・志田未来さん、幼少期の声は信太真妃さん)、二郎さんの母親(声・竹下景子さん)、菜穂子さんの結婚の準備を手伝ってくれた黒川夫人(声・大竹しのぶさん)、ドイツの政治情勢に詳しい謎のスパイらしきカストルプ(声・スティーブン・アルパートさん)、そして、二郎さんの夢に現れる飛行機の設計技師の大先輩のカプローニ伯爵(声・野村萬斎さん)でした。

昨夜見た印象としては、何というか、とても良かったです。特に、少年時代の近眼の二郎さん(声・鏑木海智さん)が夢の中でカプローニ伯爵と出会い、将来の夢を美しい飛行機を作る設計士になることと決めるまでの最初の15分は、すばらしかったように思います。

関東大震災の時の地面の大きく波打つ様子や、空を飛ぶ飛行機の群れ、草原を揺らす風、とろけるように落ちる涙、町を焼く赤い炎と黒煙のかたまり、墓場のような零戦の残骸の山など、「現実」がデフォルメされて描かれていたので、カプローニさんが言っていたように、二郎さんの夢以外の場面も、全てが二郎さんの夢のようでした。

この映画が公開された当時、たばこの場面(喫煙の場面)が多いということが問題にされていましたが、たばこを吸わない私が見た印象では、それほど過剰のようには思えませんでした。昔の男性はたばこをよく吸っているというイメージがあるからなのかもしれません。

また、この映画の中では、美しい飛行機を作りたいという夢を叶えるために設計技師となった二郎さんが深く関わることになってしまった戦争も、大震災と同じような災害のように描かれている印象でした。あるいは、戦争が軍国主義の政治家たちによる人災であったとしても、それは二郎さんとは次元の違うところに存在しているかのようでした。

庵野監督の声の二郎さんの棒読みというか、淡々とした感じも、宮崎駿監督の作品らしい感じがして良かったと思うのですが、その飄々とした雰囲気が、過酷な現実を、儚い時間の流れの中に遠ざけているような印象でもありました。

映画のコピーは「生きねば」でしたが、その「生きて」という最後の菜穂子さんの幻からのメッセージは力強いものに思えましたし、一機も帰って来なかったと二郎さんが言っていた零戦を作って戦争時代を生きた二郎さんの希望の光のようになったのだろうなと思います。

平和な様子が丁寧に描かれているほど、いずれそれらが失われるという「結末」を思って悲しくなるのかもしれません。命というものは儚いものだという前提があるからこそ、自然災害による死も、戦争による死も、全体から見ると等しく悲しいものになり得るのではないかと思います。

戦争を肯定するとか、零戦を賛美するとか、そのような映画では決してなかったですし、「反戦」を声高に叫ぶような作品でもなく、ただ静かに、全ての儚さの中に、命の大切さや、何があっても生き抜いてほしいという思いがあったのではないかなと思います。

宮崎駿監督の最後の長編アニメ映画と言われていたこともあって、人気の映画になっていたと思うのですが、公開当時に放送されていた「予告編」で「風立ちぬ」を見た時には、私はこのような映画だとは思っていませんでした。

「予告編」と「本編」の印象がほとんど同じである映画も多いのですが、私としては、今回の映画は違いました。全てを描かずに暗示的に描かれていたところも良かったですし、見る前に思っていたよりも、ずっとすてきな作品でした。

エンドロールのところで流れていた松任谷由実さんの荒井由実さん時代の「ひこうき雲」も、もともと有名な曲ですが、二郎さんの見た美しい飛行機の夢のようなこの映画によく合っているように思えて、良かったです。

本当にこの作品がこのまま宮崎駿監督の最後の長編作品になるのかどうかは分からないのですが、良い映画でした。
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