「ここにある幸せ」

NHKのBSプレミアムで放送された、NHK福岡放送局制作のドラマ「ここにある幸せ」を見ました。「福岡発地域ドラマ」です。

今回で12作目ということなのですが、今回のドラマの舞台は、福津市の津屋崎というきれいな海沿いの町でした。

物語は、東京の秋葉原の家電量販店に勤めていたものの、過酷な労働のために体調を崩し、部下をいびる上司の言動に耐え切れなくなって仕事を辞めた無気力な立川浩幸(松田翔太さん)が、一緒に暮らしていた恋人の高梨千恵子(中村映里子さん)から、何もしたいことがないのならこの部屋を出て行けと愛想を尽かされ、小学校時代に今度遊びに行くと約束をしていた友人を20年振りに訪ねようと思い立ち、福岡の福津市の津屋崎という港町を訪れ、小学校の頃にもらった友人のはがきの地図を頼りに町を歩き、友人の家と思われる場所で、花田福子(宮本信子さん)という朗らかな老婦人と出会う、というところから始まっていました。

そして、浩幸さんは、話好きで世話好きで、町の風景を絵に描く趣味のあった福子さんの案内で、津屋崎の町や福子さんの思い出の海の見える山道を歩いたりしながら、福子さん自身が自由に話し始めた福子さんの半生の物語を聞くうちに、実はすでに肺炎で亡くなっていた小学校時代の友人の勧めで学級新聞に小説を書いたことを思い出して、毎日福子さんから話を聞いてメモを取り、地元で製本をする材料を集め、「何もない」自分をそのまま温かく迎えて励ましてくれた福子さんへお礼として、福子さんの半生を「ここにある幸せ」というタイトルの自伝小説にしてプレゼントするのでした。表紙に使われていたのは、きれいな藍染の布のようでした。

小倉という町から津屋崎にお嫁に来て以来、ずっとその町で生きてきた福子さんは、自分には何もない、情けないと嘆く孫のような浩幸さんに、今からここで生き直せばいいと言って元気付けていました。翌朝、神社の階段に一人で座っていた浩幸さんは、福子さんが連れて来たお年寄りたちから、自分の話も小説にしてほしいと口々に頼まれ、嬉しそうに引き受けていました。

東京に戻るのを止め、福子さんの暮らす、浩幸さんにとっては「故郷」でもない津屋崎の町で生き直す決意をした浩幸さんは、千恵子さんを津屋崎に呼び、千恵子さんに福子さんがお嫁に来た時に見て感動した海を同じように見せて、福子さんや千恵子さんとの新しい生活を始めようと始めようとしていました。

脚本は岡田惠和さん、演出は廣瀬正雄さんでした。音楽は大森俊之さんで、エンディングに流れていた「ここにある幸せ」という主題歌を歌っていたのは竹中あこさんという方でした。

自分の人生には何もないし、今やりたいことも行きたい場所も特に何もない、という「無気力な若者」の浩幸さんが、小学校時代の友人との約束を思い出して初めて訪れた見知らぬ町で、友人の祖母の福子さんと出会って、その明るさに巻き込まれて時間を過ごす中で、次第に自分の人生に対して前向きになっていき、その新しい場所で、新しい人間関係の中で、生き直す決意をする、という物語でした。

偶然の出会いが人生を変える、という印象でもあったので、幸せな人生を歩み始めた後半の浩幸さんのことを思うと、例えばもしも浩幸さんに小学校時代の友人との20年前の約束がなかったなら、もしも20年も会っていない友人に会いに行こうと思い立たなかったなら、もしも浩幸さんが福子さんと仲良くなることができなかったなら、もしも浩幸さんに小説を書く才能がなかったなら、などと思うと少しぞっとする感じでもあるのですが、ともかく、前向きになって気力を取り戻した浩幸さんがこれから幸せになりそうな気配で終わっていたので、良かったと思います。

あと、これは今の時期に放送されたからということもあるかもしれないのですが、何となく、これから実家を離れて新生活を始める方や、東日本大震災の大津波や原子力発電所の事故などの被災によって、長く暮らしていた土地を離れて別の新しい土地で暮らさなくてはいけなくなった方たちを応援する内容でもあったのかなと思いました。

私もどちらかというとこのドラマの浩幸さんのように、自分のことを「何もない」と思ってしまうほうなので、「何もない」人が、「何でもいいから何か」を見つけ出すことは、なかなか難しいことのようにも思えてしまいます。

ドラマなどの作品中の登場人物は、それでも、ドラマを見ている人にも分かりやすい「何か」をちゃんと持っていることが多いですし、当然のことながら、その「何か」を生かす道も用意されていることが多いように思います。ドラマの「メッセージ性」としても、主人公や展開する物語に何もないわけには行かないのだろうと思うのですが、現実の世界の「社会」では、「何もない」状況は、特に積極的な社会性や活動的な陽気さを持たない人にとっては、何年経ってもほとんど変わることがないものなのではないかなとも思えてしまいます。

あるいは、これは客観的な見方ではないのかもしれないのですが、自分には「何もない」と思い込んでいることや、いわゆる「生産性のない」暮らしを「何もしていない」と断定する考え方のほうが間違っているということもあるのかもしれません。

少なくとも、ドラマの中の浩幸さんは、家電量販店の仕事を辞めて無気力になっていたのが、津屋崎という町を訪れて福子さんと出会った数日後に前向きに生きることができるように回復していたので、そのように心機一転をすることができたということだけでも、すごいことだと思います。

今までの場所でも、新しい場所でも、身近な生活の中に小さな幸せを感じて積み重ねていくことが、日々の幸せな暮らしにつながっていくのだと思えるようなドラマでした。
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Author:カンナ
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