「佐知とマユ」

NHKの総合テレビで放送され、録画をしておいた、日本放送作家協会の第38回創作テレビドラマ大賞受賞作のドラマ「佐知とマユ」を見ました。 

24時間営業のスーパーマーケットで夜間勤務をしている20歳の中山佐知(門脇麦さん)は、5歳の時、シングルマザーの由美(富田靖子さん)に観覧車の中に一人で置き去りにされて以来、15年間、ほとんど一人で生きてきたような人でした。時々叔父の直之(本田大輔さん)が佐知さんに会いに来るのですが、それは競馬で使うお金を借りるためでした。

そして、そのスーパーマーケットには、スーツケースを引きずりながら派手な服装で大声で泊まる場所を探すための電話をかけている怪しい少女が買い物に来ていたのですが、ある朝、仕事を終えて公園で絵を描いていた佐知さんは、その少女に話しかけられ、最初は断ろうとして無視していたものの、「野良猫」を拾う感じでアパートの自分の部屋に入れると、そのままそのマユ(広瀬アリスさん)は、佐知さんの部屋に居着いてしまうのでした。

マユは、0歳の頃に母親に捨てられたらしく、母親の記憶がないまま預けられた施設で育ち、施設が嫌で脱走してからは知人の家を転々とするというような「ホームレス」の生活をしているという17歳の人でした。マユだけが「彼氏」と思っている男性を佐知の部屋に連れて来ていたのを見て、佐知は激怒していたのですが、それはそのようなマユと昔の自分の母親の姿が重なったためでした。

出て行けと怒って、一度はマユを追い出した佐知は、しかし、病院へ連れて行ったマユが「妊婦」であることを知って部屋に連れ帰り、生んで捨てる、と軽く言うマユに、5歳の頃に母親に捨てられた過去を打ち明けて、生んで捨てれば人間ではなくなると、「中絶」を勧めるのですが、母親が存在するのかさえ知らない、たった一人で宇宙に捨てられたような思いで生きてきたという孤独なマユは、一人で生きなくて済むように、子供を生んで育てたいと考えるようになるのでした。

脚本は足立紳さん、演出は榎戸崇泰さんでした。音楽は福廣秀一朗さんでした。

私はこのドラマの内容を特に知らないまま見始めたのですが、何というか、とても良かったです。

ドラマは、親に捨てられたという辛い記憶を抱えて生きてきた佐知とマユが出会い、孤独感を共有したことで、これからの自分の人生に希望を見出していこうとする、という感じの物語だったのですが、それだけではなくて、子供を守りたいという思いが伝わってくるというか、上手く伝えることができないのですが、50分の放送時間のドラマと思えないほど、佐知とマユの二人が生きている感じが、しっかりと描かれていたように思います。

マユが突然佐知の部屋を出て行ってから三か月後のクリスマスの季節の頃、叔父に教えられて、駅の売店の販売員の仕事をしていた母親の顔を見に行った佐知は、15年振りに見る母親に声をかけることができずに帰ってきたのですが、後日、今度は弟に聞いたと、母親のほうから佐知に会いに来ていたのですが、子供を捨てた過去を忘れたように親しそうに懐かしそうに笑顔で近づいて来る母親を見て震えていた佐知は、お前なんて人間じゃない、と叫んで母親から離れていました。

そのような雪の夜、施設に戻ったけれど子供を取られそうだったからまた逃げて来たというマユが佐知のアパートの階段の下まで来ていて、マユを部屋に入れた佐知は、医者は嫌いだから病院には行きたくない、佐知の部屋で生みたいと訴えるマユを助けるために、子供が生まれそうだから助けてほしいと道行く人に呼び掛け、唯一立ち止まってくれたのは、佐知の部屋を探しに来ていた母親でした。

そうして、佐知の部屋で苦しんでいるマユの様子を見た母親は、佐知に指示を出しながら、マユの出産を手伝い、ついに子供が生まれるのでした。

その直後の、生まれたばかりの子供を抱えるマユと佐知と母親の4人が黙って佇んでいる場面も良かったです。

マユと子供を病院へ連れて行った佐知は、あのまま二人でいたら殺してしまいそうだったから捨てた、と話した母親を、強い口調で追い返したり、帰っていく背中を見て呼び止めたりしていました。佐知と、佐知が生きるために憎み続けていた母親のその後は、描かれていなかったのでよく分からないのですが、時々会うくらいには、いつか和解することができるようになっていくのかなと思いました。

病室のマユが、自分がされなかったことをしたいからと、子供を思い切り甘やかして育てたいと佐知に話していた場面も、良かったです。こいつに嫌なことをしたらぶっ殺して、と言うマユに、佐知は、ぶっ殺さないけどボコボコにすると言って、二人で笑っていました。

佐知さんのスーパーマーケットには、いつも母親に置き去りにされて一人でクマのぬいぐるみを抱えている小さい女の子がいて、店長は心配していたのですが、最初の頃の佐知さんは、放っておけばいいと気にかけないようにしていました。それは、その子がいつか母親は戻って来るという無駄な期待していた頃の自分と重なるからだったようなのですが、最後には、マユの似顔絵を描いていたように、佐知さんはその子の笑顔の似顔絵を画用紙に描いて、それを「お守り」として渡し、優しく抱きしめていました。

門脇麦さんの演じる佐知や、広瀬アリスさんの演じるマユが良かったということもあるのかもしれないのですが、その最後のスーパーマーケットの場面も、静かな音楽も、余韻があって、とても良かったです。短編映画のような印象でもありました。どのような話なのだろうと気になって、何となく見ることにしたドラマだったのですが、私も見ることができて良かったです。とても良い作品だったように思います。
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