映画「ジョバンニの島」

先日の深夜にフジテレビで放送されていたアニメーション映画「ジョバンニの島」を見ました。録画をしておいたものです。

私はよく知らなかったのですが、「日本音楽事業者協会」というところの「創立50周年記念作品」のアニメ映画でした。

2014年の2月の頃に公開された映画で、私はおそらくその頃に映画館でこの映画のポスターを見たことがあったくらいだったと思うのですが、今回放送されると知り、見るのを楽しみにしていました。

この映画の「ジョバンニの島」というのは、北方領土の色丹島のことでした。物語は、戦後の日本を生き延びた主人公の瀬能純平(声・仲代達矢さん)と佐和子先生(声・八千草薫さん)がその島へ帰郷する現代の場面から始まり、そこから、1945年の7月4日の、10歳の純平(声・横山幸汰さん)が、7歳の弟の寛太(声・谷合純矢さん)と、漁師として生きてきた祖父の源三(声・北島三郎さん)と、島の防衛隊長を務める父親の辰夫(声・市村正親さん)と暮らしながら、佐和子先生(声・仲間由紀恵さん)が担任を務める國民学校へ通っていた過去へ遡って展開されていました。

純平さんの亡くなった母親が宮沢賢治の童話『銀河鉄道の夜』を好きだったようで、父親の辰夫さんも、二人の子供たちと一緒にその本を読んでいました。純平という名前は、「ジョバンニ」から付けられ、弟の寛太の名前は「カンパネルラ」から付けられたそうです。

戦後、戦地から色丹島へ戻って来た純平さんの叔父の英夫(声・ユースケ・サンタマリアさん)は、兄の辰夫さんとは正反対の性格の人で、空き家になった家から盗んだ?おもちゃの汽車を甥の純平さんや寛太さんのお土産にしたり、時々ソ連兵に見つからないように本土へ渡って生活費を稼いだりしていたようでした。

物語は、その小学生の純平さんの視点で語られていて、終戦(敗戦)後の1945年の9月1日にソ連(ロシア)軍の兵士たちが色丹島に上陸して島を占領し始めたところから、1947年の10月にソ連兵によって故郷の島を強制退去させられ、一度樺太の真岡の収容所へ送られた後、日本兵が隠していたお米を密かに島民に配っていたことが知られてソ連兵に捕まって収容所へ送られていた父親に会いに行き、冷たくなった弟の寛太さんを背負って日本の帰還船に乗車するまでの出来事、そして、50年後、佐和子先生と共に一時帰郷した際の出来事が、時々『銀河鉄道の夜』のファンタジーの物語に重ね合わせられながら、美しく描かれていました。

ソ連兵が押し寄せ、山にいた日本軍が解散させられた後の色丹島での純平さんの思い出の物語の中心は、國民学校の教室を授業のために使うようになったロシアの子供たちとの交流と、瀬能家の母屋を占拠して暮らし始めたソ連の将校の一人娘のターニャ(声・ポリーナ・イリュシェンコさん)との出会いでした。

國民学校の校舎はロシアの子供たちと日本の子供たちで同時に使うことになり、純平さんなど日本の子供たちは佐和子先生のギターの音に合わせて「赤とんぼ」を歌っていて、隣の教室のターニャなどロシアの子供たちはオルガンの音に合わせてロシア民謡の「カチューシャ」を歌っていました。その歌を聴いた日本の子供たちは、最初は対抗するように大声で日本の歌を歌っていたのですが、ある日の教室では、隣のロシアの子供たちに合わせて、一緒にロシア語で「カチューシャ」を歌っていました。いつの間にか憶えていたようでした。ロシアの子供たちも、日本語で「赤とんぼ」を歌っていました。

その場面が、何というか、とても感動的でした。「カチューシャ」の音楽がそもそも良いということもあるのだろうと思うのですが、戦争に巻き込まれた子供たち同士がお互いの国の境をすっと超えていく感じが、とても良く描かれていたのだと思います。

ターニャを好きになって絵まで描いていた純平さんは、父親が捕まったことを巡ってロシア将校の娘のターニャと喧嘩をしてしまい、すれ違ったまま島を離れてしまいました。そして、最後は、現代の純平さんと佐和子先生が色丹島へ帰る場面に戻っていたのですが、それは「自由訪問団」としてでした。國民学校の卒業式が56年振りに行われ、佐和子先生が5人の元児童たちに卒業証書を手渡していました。

瀬能家のお墓に手を合わせた純平さんは、それから色丹島で暮らすロシアの人たちの歓迎会に出席して、食事をしながら佐和子先生たちと思い出話をしていました。そこへ、ターニャによく似た少女とその母親が現れたのですが、その二人は、一年前に亡くなったというターニャの孫と娘でした。純平さんに手渡したノートには、ターニャとケンカをした後の純平さんが捨てていた、ターニャの絵が貼られていました。

純平さんは、ターニャの孫の少女に「銀河鉄道の夜」の本を渡し、どのようなお話なのかと訊かれて、死んだ人は皆天に昇って夜空の星になる、その光に照らされて僕らはこうして生きている、そういう話なのだと答えていました。

子供たちが「カチューシャ」を歌い始め、会場の大人たちは踊り出し、ターニャの孫は「ジョバンニ」と純平さんの名前を呼んで、踊りに誘っていました。現代の人たちが踊る光景が少しずつ星空のように変わり、純平さんの思い出の中の人たちが一緒に踊りに参加していた最後の場面も、とても良かったです。

先日に見たアニメ映画「ももへの手紙」もそうだったのですが、今回の「ジョバンニの島」も、Production I.G.の制作の作品でした。

原作は、私は未読なのですが、杉田成道さんの小説だそうです。(エンドロールには、「原案 David Wolman」とも書かれていました。)脚本は杉田成道さん、櫻井圭記さん、脚本協力は池端俊策さんでした。監督は西久保瑞穂さんでした。

宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を題材にした、実話を基にした物語ということなのですが、当時のソ連軍に占領された色丹島の歴史をほとんど知らず、原作の小説を未読の私には、映画の物語のどの辺りまでが実話なのかということは、はっきりとは分かりませんでした。

でも、英夫さんに言われて、背中の寛太さんに『銀河鉄道の夜』を聞かせ始めた純平さんが日本船の階段を登り始めた場面も、寛太さんが「銀河鉄道」に乗って天に昇っていく場面も、感動的でした。

「ふるさとを遠く離れて」、「『ほんとうのさいわい』はどこにあるのだろう」と少年少女合唱団のような声が歌うエンディングの主題歌も良かったです。エンドロールには、さだまさしさん作詞・作曲の「銀河鉄道の夜~星めぐりの歌~」と書かれていました。宮沢賢治が作詞・作曲をした「星めぐりの歌」を取り入れた歌のようだったのですが、後半には複数人の大人の声でも歌われていて、私としては、子供たちの声だけの歌になっていたほうが、もっと良かったのではないかなという風にも思いました。

「日本音楽事業者協会」の作品だからというわけではないかもしれないのですが、音楽も静かで良かったですし、絵の動きも、色彩もとてもきれいでした。ソ連兵の侵攻を受けた当時の色丹島の生活は、実際には映画で描かれていた、10歳の純平さんの視点で見たものよりも、もっと大変だったのかもしれないとも思うのですが、当時の思い出がファンタジー風に描かれていたことで、戦争に巻き込まれて亡くなったり、家族を亡くしたり、島を追われたりした一般の人たちの悲しさが昇華されているように思えて、良かったのだと思います。

國民学校の子供たちが歌で国の境を越えていたように、現在と過去、現実の世界と「銀河鉄道」的な幻想の世界との境も、越えていたような気がしました。

ただ、このようなとても良い作品をどうして深夜に放送するのだろうと、いつものことながら、少しもったいなく思いました。例えば繰り返し放送されるスタジオジブリの作品や、細田守監督の作品や、「新世紀エヴァンゲリオン」のように、夜の9時くらいからの普通の時間に放送されたなら、それらのアニメ作品のように、有名な作品になったり、もっと人気の作品になったりするのではないかなと思いました。(昔の「ドラえもん」の映画も、当時のテレビ朝日ではなぜか一度しか放送されませんでした。)

楽しみにして見始めた「ジョバンニの島」は、とても良いアニメ映画でした。キャラクターとしては、私は、ユースケ・サンタマリアさんが声を担当していた、自由な性格の叔父の英夫さんが面白かったように思います。私もこの作品を見ることができて良かったです。
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