清水寺と縁起絵巻

先日、「クローズアップ現代」の「絵巻がひもとく清水寺~知られざる1200年の歩み~」を見ました。

奈良時代の末の778年に創建されたという京都の清水寺には、かつて室町時代に作られた縁起絵巻が奉納されていたそうなのですが、明治時代の「神仏分離令」によって流出してしまったのだそうです。

その昔の縁起絵巻は、今は東京国立博物館に所蔵されているそうなのですが、清水寺にとって、お寺の歴史が記された縁起絵巻を持つことは悲願だったそうで、10年かけて制作されたという、全長65mに及ぶ全9巻の新しい絵巻物「清水寺平成縁起絵巻」が完成し、今月の初め、清水寺に奉納されたのだそうです。

清水寺の歴史のことも、私はほとんど知らないのですが、昔の「清水寺縁起絵巻」のことも、今回の「清水寺平成縁起絵巻」のことも、知りませんでした。

778年に僧侶の延鎮が修行の旅の途中で音羽の滝と出会ったことから、清水寺の1200年の歴史は始まったそうです。清水寺の十一面千手千眼観音菩薩は、誰でも分け隔てなく救うということで、死体が野ざらしにされているような怖い場所を通ってまでお寺の観音さまに救いを求めに来る多くの人々を受け入れるために、せり出した舞台が作られたのだそうです。

しかし、明治時代になって「神仏分離令」が出され、仏教排斥運動(廃仏毀釈)の影響でお寺は財政難になったそうで、番組の中で明治23年の頃の清水寺の写真が紹介されていたのですが、舞台は前方に斜めに傾いていました。

そして、この頃もそうだったそうなのですが、過去に10回ほど戦禍による火災などで焼失してきたという清水寺を救ったのは、一般庶民の人々だったそうです。

10年かけて「清水寺平成縁起絵巻」を作ったのは、日本画家の箱崎睦昌さんという方でした。和紙よりも光沢があり、擦れに強いという西陣織の絵絹に、裏彩色の技法を使って描いたのだそうです。

箱崎さんは、時代の要求にそわなくなって消えてしまっているものが結構ある、そこの中には素晴らしい英知があったり、現在では及ばない知恵があったりすると話していました。

絵を描いたのは箱崎さんということなのですが、縁起絵巻の物語を作ったのは、元高校の社会科の先生で、その後清水寺の学芸員を務めていた横山正幸さんという方だそうです。6年前にお亡くなりになったそうです。

応仁の乱の頃に清水寺が消失した際に各地の一般の人々が寄付をしたという資料が京都の国立博物館に残されているそうです。昔の絵巻には、戦の場面が強調されて描かれているそうなのですが、横山さんは、人々によって支えられてきた清水寺の歴史という新しいテーマで、新しい縁起絵巻の物語を作ったのだそうです。

番組では、7年前まで500年以上に渡って使われ続けてきたという梵鐘が紹介されていたのですが、その梵鐘も、庶民の人々の寄付で作られたものなのだそうです。

10回以上火災で焼失し、その度に寄付によって再建されてきたという清水寺には、清水寺警備団というボランティアの方々がいて、常に消火訓練を欠かさないのだそうです。そのことも私は知らなかったのですが、消火の水が清水寺を覆っている様子も、何だか圧巻の光景のように思えました。

明治時代になって傾いた舞台を人々が直した頃に貫主を務めていた大西良慶和上という方は(映像も紹介されていたのですが、107歳までご存命だったそうです)、各地を行脚し、清水寺は宗派や身分を越えて受け入れるという精神を伝える講話を行っていたのだそうです。

清水寺に寄付して植えられた観音桜の成長を、若くして亡くなった娘さんに重ねて見守っているご両親の方の話も良かったです。「清水寺平成縁起絵巻」の最後には、争いや災いのない平和な世が続いてほしいという願いを込めて、満開の桜が描かれているそうです。

番組の国谷キャスターは、冒頭では清水寺の「月の庭」にいたのですが、番組の後半では、作家の五木寛之さんと成就院の中で対談をしていました。

お二人の目の前に広げられていた縁起絵巻は、本物だったのでしょうか。それとも、レプリカだったのでしょうか。絵巻物を見た五木寛之さんは、戦や血や火災の描かれていたこれまでの絵巻のようなドラマティックなもの、劇的なものではなく、非常に静かで穏やかで平和的で、今までとは違う視点で作られた絵巻というところが新鮮だと話していました。

女性や職人や子供が多く描かれているそうで、庶民の志や思いなどを受け入れるお寺の寛容さが、絵によく表れているのだそうです。これほど穏やかに人々の日々の営みを描いたことは、普通に絵として見ても興味深いと、五木さんは話していました。

昔は、清水寺に来ることは、異界へ来ることだったのだろうという話を聞いて、そうだったのかもしれないなと思いました。どこのお寺や神社でもそうなのかもしれないのですが、その異界の感じは、お寺や神社が観光地の一つにようになっている今でも、続いているような気がします。

五木さんは、新しい縁起絵巻の根底に流れているのは清水寺を支えてきたのが権力者ではなく普通の人々だったということで、今の刺激の強い凄惨な時代の中でこの絵巻が作られたことは貴重な感じがしましたと話していました。

番組はこの辺りで終わってしまったのですが、勝手なことながら、もしもこの「クローズアップ現代」の番組がもう少し長くて、対談の場に日本画家の箱崎さんもいたなら、もっと良かったのではないかなとも思えました。

清水寺に奉納された「清水寺平成縁起絵巻」について、番組では、「明後日公開される」と伝えられていたのですが、木曜日の番組だったので、25日の土曜日の今日から公開されるということなのだろうと思います。

最近、神社やお寺が傷つけられる事件のことが報道されていましたが、長い間人々が守ってきた神仏に対して敬意を払わない人がいるということを、とても残念に思いますし、寂しい気持ちにもなります。

今回の特集で紹介されていた新しい縁起絵巻に描かれているという清水寺の歴史は、普通の人々によってお寺や信仰が守られてきた歴史だそうですし、これからも多くの人々によって大切に守られ続けていくといいなと思いました。
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