「没後50年 谷崎潤一郎展」

先日、横浜の山手にある神奈川近代文学館で開催されている特別展「没後50年 谷崎潤一郎展 ―絢爛たる物語世界―」を見に行きました。

ただ、私は文豪の谷崎潤一郎の小説をそれほどには知りません。いくつかの小説を昔に読んだことがあるのですが、それは、例えば『途上』や『白昼鬼語』などの「犯罪小説」と呼ばれるジャンルの短編小説や、有名な『刺青』などの短編小説ばかりで、『痴人の愛』や『細雪』や『卍(まんじ)』や『春琴抄』などの長編小説は、まだ読むことができていないのです。有名な作品ですし、読んでみたなら、もしかしたら私にも面白く思うことができるのかもしれないのですが、(「あらすじ」を読んだりした印象から、何か性的な要素が強そうであるように思えてしまうということもあって)なかなか読み始めることができません。

そのような状態ではあるのですが、手紙などの新資料が発見されたということを報道で知って何となく気になり、私も今回の谷崎潤一郎の展覧会を見に行くことにしました。

私が行った時には、常設展のほうにも、特別展のほうにも、比較的お客さんが少なかったため、展覧会場に展示されているものを自由に見ることができました。

特別展の入り口を入ったところには、谷崎潤一郎が使っていたという黒いマントや、晩年に使用していたという指のところの開いたグレーの手袋が展示されていました。

「我といふ人の心はただひとり我より外に知る人はなし 潤一郎」と書かれた最晩年の色紙の書もガラスケースの中に展示されていました。

私は谷崎潤一郎の人生のこともあまり知らないまま、たくさんの手紙などの資料の展示を見始めたのですが、それは主に「女性関係」のものでした。石川千代(千代子)さんと結婚したものの、従順で家庭的な千代さんよりも、その妹の奔放な性格のせい子さんに惹かれるようになり、佐藤春夫と「三角関係」になった千代子さんと離婚後、古川丁未子さん(展示されていた写真の印象では、若くてとても美人の方でした)と結婚し、丁未子さんと離婚した後、森田松子さんと結婚した、というような流れが、分かりやすく展示されていました。

女性たちへ宛てたたくさんの手紙の文章は、達筆の字で書かれていたので、会場の解説がなければ、私には内容を知ることができそうにないものもたくさんあったように思います。

良かったのは、というか、展示を見る中で谷崎潤一郎を特に良く思うことができたのは、千代さんの娘さんの、長女の鮎子さんとの部分でした。鮎子さん(手紙では「あゆ子」と書かれていました)と父親の谷崎潤一郎との関係は良かったようで、鮎子さんともたくさんの手紙のやり取りをしていたそうなのですが、その内容は、ごく普通というか、とても日常的なものだったので、何だか面白く思いました。いわゆる「耽美派」の小説世界とは少しかけ離れているようにも思えましたし、鮎子さんにとっては優しい父親だったのかもしれないなと思いました。

それに、鮎子さんの結婚相手は、母親の再婚相手になった佐藤春夫の甥の方ということですし、「三角関係」の事件で和解したという佐藤春夫との友人関係は、多少の距離感はあったとしても、その後もずっと続いていたのかもしれないなと思いました。

谷崎潤一郎の「美」が、主に「女性」や「恋愛感情」だったのかというようなことは、私にはよく分からないのですが、谷崎潤一郎の祖父も女性を崇拝?していたそうで、だから自分の感性もその遺伝なのではないかと若い頃の谷崎潤一郎が思っていたというのは、そういうこともあるのかもしれないなと、何だか面白く思いました。

あと、演劇を好きだった谷崎潤一郎は、上山草人という俳優の方とも親しかったようでした。大正時代や昭和初期の時代に特に活躍した俳優の方だそうです。私は知らなかったのですが、写真の印象では、とてもエキゾチックというか、華やかな雰囲気の方のように思えました。

また、その隣のガラスケースには、江戸川乱歩の「奇譚」も展示されていました。乱歩が『白昼鬼語』や『金と銀』や『途上』のことを記したページが開かれて置かれていました。谷崎潤一郎の展覧会に乱歩の展示もあるとは思っていなかったので(確かにあっても良いはずなのですが、予想していなかったので)嬉しく思いました。

『人魚の嘆き』や『魔術師』の水島爾保布(におう)という画家の方の挿絵も、細かくて、劇的な感じがして、良かったです。

ところで、私が行った日は空がとても良く晴れていました。港の見える丘公園のある神奈川近代文学館の近くには、たくさんの花の咲く庭園があるので、私もそこを通ったのですが、バラ園には、まだバラの花はほとんど咲いていませんでした。今はどうか分からないのですが、その日にはまだ蕾がたくさんついているばかりで、時々深い緑色の葉の中に赤色やオレンジ色のバラの花が一輪か二輪か、咲いているのが見えました。

ラベンダーの花の紫色もとてもきれいでしたし、強い日差しの川の中でカラスが水浴びをしている様子もかわいかったです。少し暑かったのですが、土や草木の匂いや、遠くに白いベイブリッジを臨む海の風景に、初夏らしい感じがしました。
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