「プライムニュース」の三島由紀夫の特集

先日のBSフジの「プライムニュース」では、「昭和90年の肖像」というテーマで、小説家で劇作家の三島由紀夫のことが取り上げられていました。

スタジオのゲストは、三島由紀夫に女優として育てられ、その作品に多く出演したという女優の村松英子さんと、三島由紀夫に一度会ったことがあるという「保守派」の評論家の西尾幹二さんでした。

生前の三島由紀夫の言葉を伝える村松英子さんのお話が面白かったように思うのですが、番組のキャスターの反町理さんと秋元優里さんとは少し温度差があったように見えたところも、何だか面白かったです。

私は「薔薇と海賊」という劇を見たことがないのですが、その「薔薇と海賊」のお芝居の、幕が下りる直前の最後の台詞だという「私は決して夢なんぞ見たことはありません。」を言い切る村松さんの言い方や表情を見ていて、何となく、その場で三島由紀夫の舞台を見ているような気持ちにもなりました。

村松さんの話によると、三島由紀夫は政治が嫌いだったそうです。「割腹自殺」が行われたのは、その「薔薇と海賊」の上演と「サロメ」の上演の間の時期だったそうで、番組の村松さんの話を聞いていた私には、三島由紀夫の人生全体が三島由紀夫によって緻密に構成されたお芝居であるようにも思えました。

評論家の西尾さんの話によると、三島由紀夫は憲法を改正するべきと考えていて、日本の核武装も考えていたということでした。憲法9条については具体的には触れていなかったのですが、西尾さんの話からは、何となくなのですが、三島由紀夫が憲法9条の内容やアメリカと(表面的に)約束した非核三原則を、日本の国を守る力を弱体化させる「不平等」なものと考えていたようでした。憲法第9条の破棄と、核武装による外国への「抑止力」を想起していたようでした。

番組の雰囲気では、女優の村松さんと評論家の西尾さんは三島由紀夫という人物について共通の理解があるようにも見えたのですが、本当に村松さんも、憲法や自衛隊に対する三島由紀夫の思想については、西尾さんと同じ考えなのでしょうか。そして三島由紀夫も、西尾さんの研究している三島由紀夫の通りの人物なのでしょうか。

私は三島由紀夫の小説やエッセイを少し読んだことがあったり、美輪明宏さん主演のお芝居や、テレビで放送されていたお芝居を少し見たことがあるくらいにしか、三島由紀夫のことを知らないのですが、それでも、三島由紀夫の作品を好きです。そのため、もしも三島由紀夫が村松さんのおっしゃっていたように政治が嫌いな方であったのなら、現在、三島由紀夫について語られる時に、晩年の三島由紀夫が祖国を守るという目的で組織した「盾の会(楯の会)」という右翼的な政治活動を行う団体にまつわる部分が強調されるということには、どのような意味があるだろうかと、少し不思議な感じもするのです。

以前、NHKのEテレで放送されていた「戦後史証言アーカイブス 日本人は何をめざしてきたのか」のシリーズ「知の巨人たち」での三島由紀夫の特集では、学生運動の学生たちに講演をしたことや昭和45年の市ヶ谷駐屯地での自決の事件に触れながらも、三島由紀夫の繊細で複雑な感性がよく伝えられていたように思います。

三島由紀夫は「天才」なのだと思いますし、敗戦を迎えた1945年の頃に二十歳だったということを思うと、戦争時代や戦後の日本社会について、70年前の戦争時代を生きたことがない私には想像もつかないような想いがあったのだろうと思いますし、また、三島由紀夫が日本の国について考えていたことは正確で、今の日本社会にも当てはまることが多いようにも思います。ただ、村松さんのお話でも言われていたことですが、三島由紀夫が「夢(理想)」と「現実」を同時に見ていたのだとするのなら、夢のほうばかりで語るのも、現実のほうばかりで語るのも、少し違うような気もしました。

私には分からないことなのですが、印象としては、三島由紀夫の思想は宇宙規模というか、もっと高いところから全体を見渡す視点を持っていた方で、いわゆる「右翼」とか「左翼」とかの次元にいる人ではないようにも思えます。

番組は、「昭和90年の肖像」という企画で、三島由紀夫の政治的な側面を主に取り上げることにしていたようだったので、その点ではそれは仕方のないことだったのかもしれないのですが、アメリカ軍の基地の置かれている「戦後」という点では変わっていないのだとしても、現在の政治に三島由紀夫の政治的な?思想が利用されるようなことがあるのだとすれば、それは少し怖いというか、良くないことのような気もします。

「違憲状態」と言われることのある自衛隊を保持している戦後の日本が、例えば今後アメリカ軍に出て行ってもらって、アメリカ軍に頼らずに自国を防衛するとなると、確かに自衛隊を「軍隊」という風に明確に位置付けて活動範囲を広げるとか、武装をしたり武力攻撃をしたりすることができるようにしなければいけないということなのだろうとは思うのですが、太平洋戦争後の、日米同盟や“アメリカ文化”の根付いた日本の中で生きてきた私には、平和的な「日本国憲法第9条」を世界各国の政治家が自国の憲法に取り入れればいいのに、というような理想のほうを、外交を行う政治家や役人の方たちには、持っておいてほしいように思えるのです。

日本もいつか核武装をしたいと一部の政治家たちが考えているのだとすれば、これは間違っているのかもしれませんが、自民党などの政党が進める原子力発電所の再稼動などの目的の中には、もしかしたら、そのことも含まれているのかもしれません。

昭和45年に亡くなった三島由紀夫が、もしももっと長く生きていて、その後昭和天皇の崩御を知ったなら、今の天皇皇后両陛下の祈りや慰霊の旅のことを知ったなら、どのように考えるのだろうと、番組を見ていて少し思いました。

それにしても、昔の小説家はすごいなということも、改めて思いました。今の小説家や劇作家、芸術家の方で、三島由紀夫のように大規模に活動している方は、いないような気がします。あるいは、当時にも三島由紀夫さんしかいなかったのかもしれないのですが、それにしても、やはり、村松さんの話していたように、三島由紀夫が好きだったという「能」の世界に死だけではなく老いも描かれているように、自身の弱さや老いなどを認めて長生きをして、今の世界を正しく分析して論じてほしいような気がしました。

ところで、今回の特集も最後まで興味深く見ることができて楽しかったのですが、「プライムニュース」では(私は時々テーマによって見るくらいなのですが)、約2時間の番組放送中に視聴者からたくさんの意見をメールなどで募集しているにも関わらず、最後に紹介をするのが2件くらいなので、少しもったいないなと思います。
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