「洞窟おじさん」

NHKのBSプレミアムのスペシャルドラマ「洞窟おじさん」を見ました。夜9時から11時まで放送された2時間ドラマです。

「洞窟おじさん」というタイトルを聞いて何となく面白そうに思い、見てみることにしたドラマだったのですが、2時間があっという間に思えるほど、ドラマを見る前に思っていたよりも面白かったです。

13歳から平成15年になるまでの43年間、一人でサバイバル生活を送っていた加山一馬さんという方のほぼ実話のドラマということでした。ドラマの原作は、加村一馬さんの著書『洞窟オジさん 荒野の43年』です。私は未読です。

昭和34年、両親(信太昌之さん、山下蓉莉枝さん)に虐待され、兄妹たちからも疎まれる毎日に耐えられなくなり、僅かな日用品を持って家を出た13歳の加山一馬さん(富田海人さん)は、追いかけて来てくれたシロという白い犬と共に群馬の山奥に見つけた木製の柵の付いた洞窟に暮らして創意工夫を凝らした狩猟採集のサバイバル生活を送っていました。

一馬さん(中村蒼さん)を戦死した息子に重ねて養子に迎えたいと言う農家の優しい夫妻(井上順さん、木内みどりさん)や、珍しい蘭を安い値段で買い付けに来る足の不自由な男性(山中崇さん)、青木ヶ原の樹海での自殺を止めようとしてくれたトラック運転手の男性、首を吊って亡くなっていた男性の腐敗した遺体など、様々な人々とのささやかな出会いと別れを繰り返しながら、一馬さんが人間社会の片隅で生き抜いていました。

そのようなことが、一馬さんの過去と現在を行ったり来たりしながら丁寧に描かれていました。

平成15年、北関東の河川敷に暮らしていた一馬さん(リリー・フランキーさん)は、男子中学生たちに囲まれていたところを助けた宮崎出身の元社長のホームレスの男性に字を教えてもらったり、しつこく言い寄られていた男性から助けた女性(坂井真紀さん)を好きになったりしていました。二人がそれぞれの事情で来なくなったある日、土手の監視役の仕事を失い、線路脇の自動販売機から戻って来なくなったお金?を取り出そうとして警察官に捕まってしまいました。

取り調べの警察官(生瀬勝久さん)は、一馬さんのサバイバル人生の話を最初は信じようとしなかったのですが、部下の警察官(浅利陽介さん)は一馬さんの賢い愛犬シロの話に共感し、そして二人ともいつの間にか一馬さんの数奇な人生に興味を持つようになっていました。

初犯ということで注意を受けるに止まった一馬さんは、裁判を終えると、群馬の障害者施設で暮らしながらそこの理事長(小野武彦さん)が斡旋した会社の工事現場の仕事をすることになり、性格の悪い工事会社の若社長(宇野祥平さん)のもとを一馬さんも逃げ出そうとするのですが、社会に馴染まない一馬さんを追いかけてきた「社会復帰」に熱心なお世話係の女性(尾野真千子さん)に連れ戻され、黒猫のクロとの思い出を大切にしている、ブルーベリーアイスの好きなその明るい女性の助けを得ながら、両親の死も受け入れて、少しずつ「社会復帰」への道を歩いて行くのでした。

脚本は児島秀樹さんと吉田照幸さん、演出は吉田照幸さんでした。

お世話係の女性の誕生日プレゼントに黒猫のぬいぐるみを選んだ一馬さんは、「おたんじょうびおめでとう さいごまでおいかけてくれたのはあんただけだ ありがとう 加山一馬」とメッセージカードに書いていました。役名と演じていた役者さんの名前が書かれて流れていたエンドロールと、最後のメッセージカードの場面も、良かったです。

富田海人さんと中村蒼さんとリリー・フランキーさんの演じていた一馬さんが良かったということもあるのかもしれないのですが、一馬さんの数奇な人生が、一人の特殊な人の人生というのではなく、何か普遍的なものであるような感じがしました。

人の人生は、どのような人と出会うかによって、良くなったりも悪くなったりもするのだということを、このドラマを見ていて改めて思いました。

一馬さんの長い間のサバイバル生活もすごいのですが、「社会復帰」とは一体何なのだろう、ということを考えさせられるようなドラマでもあるような気がしました。

何か人の役に立つ仕事をして、その対価として得たお金を「衣食住」などに換えて生活をする、というのが一般的には「普通の生き方」をしている人間で、それ以外の生き方をしている人は、「社会」から外れた人間、人の役に立たない人間、生きている価値のない人間、普通の人間にとって邪魔な人間であり害悪ですらある人間、ということなのでしょうか。

このドラマではそこまで言われているわけではないのですが、例えば今期の日本テレビのドラマ「ど根性ガエル」のひろしは、フーテンの人だというくらいで、悪人でも犯罪者でもなくむしろとても良い人なのですが、それでも「普通の社会人」の京子ちゃんからは(第1話や第2話などでは)、「ダメ人間」を通り越して「人間のクズ」という感じに言われていたので、ドラマのそのような展開を見ながら何となく、少し辛いような気持ちになってしまいました。

いろいろな人の支えによって「人間社会」は成立しているのだということなのだとしても、人の役に立つ人間は良い人間で、人の役に立たない半端な人間はダメな人間だなどと言うのは、役に立つか立たないかを自分の基準で勝手に決めて押し付ける人の、何か、傲慢さの表れであるような気もするのです。

養子にならないかと提案された青年時代の一馬さんの「人が怖いんです」という気持ちは、漠然とですが、私にもよく分かるような気がしました。

ただ、ドラマの一馬さんは、ちゃんと「社会復帰」をすることができているようでした。一馬さんがいた施設の人たちが良い人たちだったのかもしれません。ドラマの解説によると、平成15年に社会的に発見された時には56歳か57歳だったという一馬さんは、今はブルーベリーの木をたくさん植えていて、毎年ブルーベリー狩りに来る子供たちを楽しませているのだそうです。

ドラマの本編の直後に伝えられていたことによると、今年の秋(10月頃だそうです)に未公開を含む59分×全4回のドラマとして「洞窟おじさん 完全版」が放送されるのだそうです。少し意外な感じがしたのですが、確かに謎に思える部分も残されていましたし、“豪華キャスト”でしたし、今回の2時間のスペシャルドラマは、その秋のドラマの総集編というか、長い予告編のようなものだったのかもしれません。

英語の歌詞のロック風の音楽も、ドラマに合っていて良かったように思いましたし、秋に放送予定の「完全版」も見てみようかなと思います。
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