「レッドクロス~女たちの赤紙~」

先日の土曜日と日曜日に二夜連続で放送されていた、TBS開局60周年特別企画のドラマ「レッドクロス~女たちの赤紙~」を見ました。録画をしておいたものです。前編と後編でそれぞれ約2時間ずつ、合計約4時間のドラマでした。

このドラマの「レッドクロス」というタイトルを最初に聞いた時、私は「赤紙」のことを英語ではそのように言うのだろうかと少し不思議に思えていたのですが、そうではなく、「レッドクロス」とは「赤十字」のことでした。あるいは、その「クロス」を「テーブルクロス」のように「布」の意味だと考えるなら、中国共産党の赤い旗の意味も含まれていたのかもしれません。

ドラマの主人公は、母親が入院した時に出会った看護婦に憧れ、女性でも男性と同じように戦地でお国の役に立ちたいという思いから看護学校を卒業し、「赤紙」を受け取って「従軍看護婦」となって満州へ渡った佐賀出身の天野希代(松嶋菜々子さん)でした。

私は、「赤紙」というのは、戦争時代の末期の、日本が連合国軍に追い込まれている頃、日本兵の数を増やすために国内の一般の男性のもとに届けられた召集令状のことだと思っていました。そのため、従軍看護婦という方々のことは(少しですが)知っていましたが、看護婦の女性たちに「赤紙」が届いていたということは全く知りませんでした。ドラマの中の看護婦の希代さんに届いていた赤紙の赤い色は、とても濃い赤色でした。

第一夜(前編の第1話)は、希代さんが近所の中国人と密かに親しくしていた祖父(山崎努さん)と暮らしていた小学生の大正12年から、敵味方関係なく傷ついた人の命を救いたいという博愛の精神の高い理想を持った「赤十字」の従軍看護婦となって渡った満州で医師の大竹英世(笑福亭鶴瓶さん)と出会い、関東軍と地元の人々が殺し合いを繰り返す戦地の厳しく過酷な現実と向き合う日々の中、日本の敗戦が決まり、日ソ中立条約を破って満州へ進行してきたソ連軍の兵士たちから逃げ惑うことになる昭和20年までの物語でした。

第二夜(後編の第2話)は、村人や従兄の大地(市川涼風さん)たちと一緒に鉄道でハルビンへ向かうことになった一人息子の博人(高村佳偉人さん)を戦死した満蒙開拓団の夫の中川亘(西島秀俊さん)の遺骨を抱えた希代さんが再会を約束して見送った昭和20年から、仲間たちと共に中国共産党に協力する従軍看護婦として生き延び、優しい中国人の地主の楊錦濤(薄宏さん)の養子となっていた博人さんの身を案じつつ昭和28年に帰国して佐賀に戻った2か月後、連合国軍の看護師として福岡の病院で働き始めた希代さんが、共産党軍の衛生兵として参戦していた朝鮮戦争で負傷しスパイ容疑でその病院の地下室に運ばれていた博人さん(工藤阿須加さん)と再会を果たすまでの物語でした。

脚本は橋本裕志さん、演出は福澤克雄さんでした。音楽は千住明さんでした。主題歌はYaeさんの「名も知らぬ花のように」という曲でした。

赤十字の従軍看護婦たちの戦地の満州での活動を中心に、第二次世界大戦時代の日本と中国と朝鮮(韓国と北朝鮮)の歴史を、大掴みながら丁寧に描いた作品という印象でした。ところどころに、倍賞千恵子さんの落ち着いたナレーションの、実際の映像を使った歴史の説明が挟まれていたのも、流れが分かりやすく思えました。

日本の従軍看護婦たちがソ連軍の兵士たちから受けた「被害」だけではなく、中国の地を権力者として支配していた日本の関東軍の「加害」の場面も描かれていたので、最近の日本の戦争のドラマとしては少し珍しいというか、久し振りに戦時下の日本の「被害」と「加害」の両面を描いた作品を見たように思いました。そもそも、満州の関東軍が登場するドラマが放送されたことも、久し振りであるような感じがしました。

主人公の希代さんは現代的な感覚を持った女性だったので、もしかしたら当時実際に希代さんのような看護婦さんはいたのかもしれませんが、博愛の精神を戦地で貫くことができた方以外にもいろいろな看護婦さんがいたのだろうと思いますし、ドラマではその点もよく描かれていたのだろうと思います。

残留孤児、戦災孤児のようになって人身売買の業者に売られそうになっていた大地さんと博人さんを、優しい地主の楊さんが探し出して引き取ってくれていた場面も良かったです。NHKのドラマの『大地の子』(とても良いドラマでした)を思い出しました。

その楊さんが裕福な資本家の存在を許さない共産党の思想の下で銃殺刑に処されてしまうという展開も、見ていて辛かったのですが、毛沢東時代の歴史が簡潔に描かれていたのだと思います。(中国人の、というより、もしも満州人の歴史が描かれていたなら、もっと物語のバランスが良くなったのかもしれないなとも思いました。)

従軍看護婦だった看護婦の方が、朝鮮戦争の頃に連合国軍の病院で兵士の怪我や病気の治療をしていたということや、連合国軍の病院が福岡にあったということも、私は知りませんでした。朝鮮戦争の頃に日本がアメリカから密かに機雷掃海を頼まれていたというのを最近報道番組の特集で知ったのですが、今回のドラマで描かれていたように、日本に連合国軍の兵士の専用の病院を作るという形で、朝鮮戦争のアメリカ側に日本が協力していたということも、知りませんでした。

同じ人間同士が殺し合う戦争の残酷さとその悲惨な時代を生き抜いた人たちの強さを伝えるドラマだったのだと思います。戦争のドラマなので、面白いというのとは違うのですが、でも、誠実に作られたドラマであるように思えましたし、歴史に詳しくない私も当時のことを少し知ることができたかもしれないですし、見て良かったと思います。
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