「経世済民の男」の第二部「小林一三」前編

NHKで土曜日の夜9時から放送されている「放送90年ドラマ 経世済民の男」の第3回、第二部「小林一三~夢とそろばん~」の前編を見ました。録画をしておいたものです。

日本を代表する3人の経済人、高橋是清、小林一三、松永安左ェ門の生涯を三部作、全5回の物語で描くドラマで、ドラマのタイトルにある「経世済民」は、「経済」の語源となった、「世を経め(おさめ)民を済う(すくう)」という意味の中国の古典に登場する言葉なのだそうです。

8月の末に放送されていた第1回と第2回は、第一部「高橋是清」の前編と後編でした。初代文部大臣の森有礼(谷原章介さん)の援助を得たアメリカ留学から帰国した明治3年の頃から、特許局の局長や総理大臣や大蔵大臣を歴任し、昭和11年の「二・二六事件」で陸軍の将校たちに暗殺されるまでの仙台藩出身の高橋是清(オダギリジョーさん)を描いたドラマで、脚本はジェームス三木さん、演出は田中健二さん、音楽は佐藤直紀さんでした。東京制作のドラマでした。

どちらかというと、高橋是清と芸者の桝吉(壇蜜さん)、後妻の品子(ミムラさん)、品子さんの療養中に是清の愛人になっていた女中のケイコ(松岡茉優さん)の物語という印象が強く、ペルーの銀山の開発に失敗したなど、知らないこともたくさんあったのですが、政治的、歴史的な部分は年表のようにざっくりと描かれていたように思え、ドラマを見ながら時々少し眠いような気持ちになってしまいました。最後の「二・二六事件」のところも、その具体的な描写はなく、字幕で高橋是清の暗殺が伝えられていて、少し寂しい気持ちでドラマを見終わりました。

でも、宝塚歌劇団を作った小林一三の生涯を描くドラマということで楽しみにしていた第3回の、第二部「小林一三」の前編は、とても面白かったです。脚本は森下佳子さん、演出は梛川善郎さん、音楽は金子隆博さんで、大阪放送局制作のドラマでした。

甲州の出身で小さい頃に両親を亡くしたものの優しい親戚に引き取られて裕福な家庭に育ったという小林一三(阿部サダヲさん)は、明治27年、小説家になるという夢を持ちながら三井銀行の大阪支店に勤めていました。一三さんは、夜道ですれ違った時に一目惚れをした芸妓見習いのコウ(瀧本美織さん)に会うために6週間も銀行の仕事を休んでも怒られないというのんびりとした働き方をしていたのですが、新しい支配人の岩下清周(奥田瑛二さん)が来ると、時間に厳しく、本店に相談をせずに独断で融資を決めたりする破天荒な岩下さんに振り回させる毎日を送るようになり、小説を書く時間もすっかり無くなっていました。しかし、栄田さん(星田英利さん)が開発した新しい丈夫なゴムを見て、これからは電気の世の中になり電線には必ずゴムが使われるからと先を読んで多額の融資をする岩下さんの手法に接した一三さんは、人の人生を変えるお金を扱う銀行の仕事に小説を書くのと同じような面白さを見出すようにもなっていきました。

ところがその矢先、一三さんが目標としていた岩下さんが三井銀行を辞任させられることになりました。岩下さんが自分で新しい銀行を作ると言って去ると、少しして一三さんも名古屋支店や東京本店への転勤を繰り返すことになりました。(その間、一目惚れをしたコウさんへ手紙を送り続けて付き合うようになっていた一三さんは、待たせていたコウさんを裏切って名古屋から嫁を連れて大阪へ戻り、コウさんの存在を知った妻に家を出て行かれると、コウさんに再び手紙を送ったり旅行へ誘ったりして、長い間一三さんを想い続けていたコウさんと結婚していました。)

明治39年、東京本店の調査部での地道な仕事を6年間続けていた一三さんには、3人の子供がいました。なかなか出世をしないのをコウさんのせいにしたりしていた一三さんは、明治43年の頃、大阪支店時代の上司の平賀敏(矢島健一さん)が訪ねてきたことをきっかけに、大阪で「北濱(北浜)銀行」を創設していた岩下さんに会いに行くと、岩下さんから新会社の社長にならないかと誘われ、出世のチャンスだと三井銀行を辞めて家族5人で急遽大阪へ戻るのですが、その翌日から株が大暴落し、社長の話は頓挫してしまいました。しかし、ついに無職になるのかと恐れていた一三さんは、岩下さんから観光用として建設される予定だった「箕面有馬電気鉄道」の清算をしてほしいと頼まれ、引き受けることになりました。

その頃の大阪は、工場がたくさんできていた影響で、環境汚染が深刻な状況になっていたようでした。大阪に戻ってから咳が続いていた小林家の一番下の男の子も気管支炎と医師に診断されていました。空気の良いところへ行くよう医師に勧められ、「箕面有馬電気鉄道」が通る予定だった、山と川と畑以外に“何もない”農村へ出かけた一三さんは、こんな空気のきれいなところに住みたいと妻のコウさんが言うのを聞いて、その地に家族5人で暮らす夢を思い描き、暮らせるようにすればいいのだと斬新なアイデアをひらめくのでした。

計画書を作って岩下さんと株主たちを説得し、鉄道を引く予定の周辺の土地を安く買い取って、10年後には自分の家になるというサラリーマン家庭向けの月払い方式の戸建て住宅の販売と鉄道作りを始めるという事業の許可を得た一三さんは、事務所を借り、学校を出たばかりの従業員一人と鉄道作りに着手し、いろいろ節約したり、投資してくれる株主を集めたり、空気の良いところで暮らすべきだという宣伝パンフレットを配ったりしながら、ついに箕面有馬電気鉄道を開業していました。開業のイベントでは自作の鉄道の歌を地元の子供たちに歌ってもらい、梅田から一両の電車を出発させていました。

前編は、このような物語だったように思います。

山梨県出身という小林一三さんの生い立ちなどは細かく描かれていたわけではなく、その辺りのことは一三さんの長男の冨佐雄(井上芳雄さん)の語りや一三さんの台詞の端々で少し伝えられていたくらいなのですが、小説家志望だった銀行員の一三さんの、想像力豊かで夢見がちなところ、現実的・合理的なところ、筆まめなところ、時々ダメ人間であるところなどの性格が、とても面白く、テンポ良く描かれていて、ドラマを見ていて楽しかったです。

工場へ融資をしてもらうためにゴムの改良を重ねる栄田さんも、厳しいけれど大胆で先見の明のある岩下さんも(北浜銀行を作った岩下さんの生涯も一つのドラマになりそうに思えました)、自分を妻にした人は出世するという占い師に言われた言葉を信じている家庭的な妻のコウさんもとても良かったですし、コウさんを裏切って結婚した新妻に出て行かれた一三さんの生き方や心根を「貧乏くさい」と一喝していた下宿先のおばあさんも、一三さんが「巧妙に避けてきた」はずの「貧乏」の象徴のだるまの貯金箱のお化けの幻が登場していたのも、いろいろ面白かったです。

阿部サダヲさんの演じる小林一三さんが良かったということもあるのかもしれないのですが、その小林一三さんが様々なことから影響を受けたり、画期的なアイデアを思いついたりする様子が一貫している感じも、良かったです。

宝塚歌劇のきらびやかな大階段など、随所に明るい“電気”が活かされている演出も楽しかったです。放送時間には見ることができないかもしれないと思うのですが、録画をしつつ、次回の物語も楽しみにしたいと思います。
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