映画「第九軍団のワシ」

先日のNHKのBSプレミアムの「プレミアムシネマ」で放送されていた「第九軍団のワシ」という映画を見ました。

「第九軍団のワシ」というタイトルを見て、何となく気になって録画をしておいたものです。昔の映画なのかなと、映画を見る前に勝手に思い込んでいたのですが、2010年に公開されたイギリスとアメリカ合作の映画でした。原題は、「THE EAGLE(鷲)」です。

原作は、ローズマリー・サトクリフさんの小説『第九軍団のワシ』だそうです。私は未読です。脚本はジェレミー・ブロックさん、音楽はアトリ・オルヴァルッソンさん、監督はケビン・マクドナルドさん、という作品でした。

西暦120年、ローマ帝国最強と言われていた第九軍団の5000人の兵は、ブリタニアの北部の平定に出撃したものの、ローマ帝国の名誉の象徴である黄金の鷲の紋章と共に忽然と姿を消して二度と戻ることはなく、その失態を憂えた時の皇帝ハドリアヌスは、北に境界線となる「ハドリアヌスの長城」を築き、そこが世界文明の果てとなった、というような解説から始まっていたのですが、映画の物語の舞台は、その20年後でした。

ブリタニアの北部で消息を絶った第九軍団を率いていたフラビウス・アクイラの息子のマーカス・アクイラ(チャニング・テイタムさん)は、第4軍団の新しい隊長としてローマ帝国属州のブリタニアに赴任し、先住民たちと戦って砦を守るのですが、復讐に来た先住民たちとの戦いの際、部下を守ろうとして戦車の刃で左脚に大怪我をし、部下たちを守ることはできたのですが、マーカス自身は負傷のために「名誉の除隊」を言い渡されてしまいました。

父方の叔父(ドナルド・サザーランドさん)の家に引き取られて暮らすことになったマーカスは、叔父に連れられてコロッセオのような競技場へ出かけ、剣闘士たちの戦いの様子を見ていたのですが、剣闘士の前で闘志を全く示さない奴隷の青年が観客たちの「死を!」の掛け声によって胸に剣を突き立てられそうになっているになっているのを見て、「生を!」と叫んで周囲の観客たちを煽り、奴隷の命を助けていました。

数日後、叔父は、マーカスの世話係として奴隷を買って来るのですが、その奴隷はマーカスがコロッセオで助けた青年・エスカ(ジェイミー・ベルさん)でした。叔父が部屋を去った後、ブリタニア人のエスカは、ローマ帝国の軍人に殺されたブリガンテス族の長だった父親の形見の剣を取り出し、憎しみの思いを伝えながらマーカスに近づくのですが、マーカスは命を助けてくれた恩人でもあるからと、その剣をマーカスに渡し、マーカスの奴隷として忠誠を誓うのでした。

そして、脚の怪我のために戦士の道を絶たれたまま暮らさなければいけなくなったマーカスは、ある日、黄金の鷲が北の神殿に祭られているという噂を聞き、ローマ帝国の第1大隊の第九軍団の筆頭の百人隊長だった父の名誉を回復するべく、黄金の鷲を奪還するため、叔父の反対を押し切って、奴隷のエスカを連れて二人でブリタニアの北へ旅立つのでした。

馬に乗った二人は、たくさんの谷のあるハイランドという場所を下り、さらに北へ向かいました。そして、エスカを通訳として、先住民族たちから話を聞いたり、戦ったり、森で出会った、現地でグアーンと名乗って暮らしていた第九軍団の生き残りの兵士のルシアス・カルス・メテラス(マーク・ストロングさん)に案内された第九軍団を殺戮したアザラシ族のことを教えてもらったりしていました。アザラシ族は、あの世で歩くことができないようにと死者の脚を切り落としたり、生贄として生きたまま心臓を抜いたりするということでした。

ブリガンテス族の首長の息子だったエスカは、アザラシ族と一緒にローマ帝国軍と戦っていたため、すでにそのことを知っていたのですが、マーカスには黙っていました。そのことを怒ったマーカスがエスカと喧嘩になっていた時、二人はアザラシ族に遭遇するのですが、アザラシ族の首長の息子(タハール・ラヒムさん)と知り合いだったエスカは、機転を利かせて、マーカスを「奴隷」ということにするのでした。

エスカの奴隷となったマーカスは、アザラシ族のお祭りの夜、エスカの案内で洞窟へ向かい、ついに黄金の鷲を見つけるのでした。鹿のお面を着けたアザラシ族の首長に気付かれるのですが、首長が父の指輪をはめているのを見たマーカスは、首長を殺して指輪を取り戻し、黄金の鷲を持って、アザラシ族の村を急いで脱出することになりました。早朝、アザラシ族の男の子に気付かれたマーカスは、その子を殺したほうがいいのではないかと考えるのですが、エスカに止められました。

そうして馬で南下するのですが、途中で馬が弱ってしまい、歩くことになりました。エスカの裏切りに気付いて追いかけてきたアザラシ族から逃れるため、脚の怪我が痛み出したマーカスを抱えて川を泳ぎながら下ったエスカは、黄金の鷲の飾りをエスカに託そうとするマーカスに、ここまで共に来て置いていけません、行けというのなら解放してください、私を自由にしてくださいと頼み、マーカスから父親の形見の短剣を受け取り、お前は自由だ、友よ、とエスカを解放したマーカスに、必ず戻ると伝えて、雨の森を駆け抜けていきました。

しばらくして、マーカスが黄金の鷲を掲げた杖で川を歩き出そうとした時、鷲に向かって軍隊が近づいてきました。第九軍団の幽霊かと思われたのですが、それはエスカが連れて来た、20年前マーカスの父親が率いていた第九軍団の生き残りの兵士たちでした。その中には、グアーンもいました。

兵士たちは、マーカスに、父親は最後まで鷲を守って名誉の戦死をしたのだということを伝えていたのですが、そこへ、全身に灰色の泥を塗ったアザラシ族の兵士たちがやって来ました。マーカスに殺されたアザラシ族の首長の息子は、マーカスとエスカを見逃した子供を見せしめのように殺し、それを見た元第九軍団の兵士たちとマーカスとエスカは、鷲を守るのだ!と叫んで、川の中で大勢のアザラシ族と対戦するのでした。

両者共にたくさんの死者を出し、マーカスは、アザラシ族の首長の息子を川に沈めて溺死させていました。川の水で灰色の泥の取れた首長の息子の顔は、マーカスやエスカと同じようなごく普通の青年の顔で、それも何か悲しい感じがしました。

生き残った兵士とマーカスとエスカは、戦死した兵士を川辺で弔っていました。元第九軍団の兵士たちがその後どうしたのかは描かれていなかったのですが、マーカスとエスカの二人は、名誉の象徴である黄金の鷲を携えてローマ帝国軍の砦に戻っていました。父の代わりにと、取り戻した黄金の鷲を幹部の人たちに差し出したマーカスは、エスカのことを「奴隷」と言うその人たちに、奴隷ではないときっぱりと答え、そうしてまたどこかへ二人で旅に出ようとしていました。

映画はこのような場面で終わっていたように思います。

父親の名誉を回復する旅に出ることになったローマ人のマーカスと、ローマ帝国軍の奴隷となっていたブリタニア人のエスカの友情と冒険の物語、ということでもあるのかもしれないのですが、「冒険」というような明るい言葉の要素は、黄金の鷲を幹部に渡した後再び旅に出ようと話していた二人の最後の場面に感じられるくらいで、その他は、どちらかというと重厚な、硬派な歴史物語という印象でした。

ハドリアヌスの長城は、ローマ帝国の属州となったブリタニアへのケルト人の侵入を防ぐためにハドリアヌスの命で建設されたものだそうで、現在でもスコットランドの北部にあり、ユネスコの世界遺産に登録されているそうです。

世界史にも詳しくない私には、この映画の内容がどのくらい歴史的事実に忠実なのかということなどはよく分からないのですが、各地に侵攻するローマ帝国(大国)の兵士と先住民族(小国)の兵士との戦い、親を殺された子供が時を経て再び戦に挑むというような、戦争の悲劇の繰り返しがテーマとして描かれていた映画だったように思います。

ブリタニアの北部というのは、今のヨークという街の辺りになるそうなのですが、古代の宗教やイギリス(グレートブリテン島)の先住民族が登場していたところも、その歴史を知らない私には新鮮な感じがしました。西暦120年頃は日本だと弥生時代の後期に当たるようなのですが、邪馬台国よりも前の時代の物語を題材にした映画を作るのは難しそうだなと思いました。マーカスがお祈りをしていた「ミトラスの神」は太陽神だそうで、キリスト教が栄える前の、ローマ帝国時代にはよく信仰されていたそうです。

アザラシ族(シール族)の村の残された人々(マーカスに親切だったおばあさんや、首長の息子の妹など)は、その後どうなったのでしょうか。映画ではそこまでは描かれていなかったので、見終わってから少し気になりました。

友情の物語という部分では、というか、この映画の全体を見てもそうなのかもしれないのですが、ローマ帝国の奴隷となっていたエスカが、何というか、賢くて優しくて義理堅くて誠実で強くて、とてもかっこよかったです。

西洋画で見るような風景も美しかったですし、エンドクレジットの部分に流れていた、スコットランドの曲のような音楽(特に最初のほう)も良かったように思います。真面目に作られた作品であるように思えましたし、何も知らずに見た映画なのですが、見ることができて良かったです。
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