「一千兆円の身代金」

先日のフジテレビの「土曜プレミアム」の枠で放送され、録画をしておいた、スペシャルドラマ「一千兆円の身代金」を見ました。約2時間のドラマです。

ドラマの原作は、私は未読なのですが、八木圭一さんの小説『一千兆円の身代金』です。

ある日、元副総理大臣の国武義和の孫で小学生の篠田真由(本田望結さん)が誘拐され、真由さんの母親の由美(木村多江さん)に娘を誘拐したとの電話をかけた犯人の平岡ナオト(香取慎吾さん)から後にマスコミ宛に、一週間後までに身代金1085兆円を用意し、昨年度に1085兆円という国の財政赤字額を作った責任者の国武副首相は国民に公式に謝罪せよ、という趣旨の犯行声明文が届き、声明文から「政治犯」と考えた警察によって、刑事部捜査第一課特殊犯捜査係(SIT)の片岡晋太郎(杉本哲太さん)や今村淳子(仲里依紗さん)たちが捜査を始める、という話でした。

脚本は龍居由佳里さんと小峯裕之さん、演出は河野圭太さんでした。

私は原作の小説を知らなかったので、香取慎吾さんが誘拐犯を演じる話というくらいにしか内容を知らずにこのドラマを見始めたのですが、かなり社会派の要素を含むドラマでした。

国のためと言いながら国民の生活のことを考えない無責任で私利私欲にまみれた“政治屋”の国武元副首相が、男尊女卑の考えを持つ、「モラルハラスメント」の祖父であり父親であるという設定にも、何か少しリアルな感じがしました。

このドラマを見始めてしばらくは、(「革命係」というナオトさんの言葉から「特命係」を連想したのかもしれないのですが)フジテレビのドラマであるということを忘れていたほどでした。そのくらい、政権与党を批判することをテレビや新聞などでの報道が自主規制しているように見える現代社会の風潮に、正面から斬り込んでいこうとする物語であるような気がしました。

香取さんの演じるナオトさん(仮の名前でした)は末期癌を患い、残り少ない人生を思って、身内を一家心中に追い込んだ政府、国武元副首相を批判するブログを作っていたようなのですが、そこに、不倫をしていた国武の娘婿から中絶を迫られたという過去のある看護師の橋本沙織(MEGUMIさん)からメールが届き、国武の孫の真由さんとは顔見知りだという橋本さんと3人で会い、そこからナオトさんと真由さんは知り合いになったようでした。

家族を失っていたナオトさんは、財政破綻の勉強をしてから学校で国武の孫としていじめられるようになり、両親からも相手にされず(母親の由美さんもモラルハラスメントの父親と夫から虐げられて苦しんでいて、自分のことで精一杯になってしまっていたようでした)、孤独を感じていた真由さんと親しくなり、時々秘密裏に会うようになっていたある日、真由さんから、「私を誘拐して」と持ちかけられ、実行するのでした。

国武元副首相の悪質さを訴えたい、政治的な主張をしたいということと同時に、真由さんを孤独から救いたい、家族のもとへ帰したいということもナオトさんの「狂言誘拐」の目的となっていたようでした。ナオトさんは、犯行声明文の中で自分のことを「革命係」と名乗っていたのですが、後に片岡刑事は今村刑事に、共に孤独な二人の人生をかけた革命だったのだろうと話していました。

真由さんの小学校の先生が、授業で政治の話をしただけで、「公平・中立」ではないとして政治犯のような扱いをされたという件も、数年前ならば単に戦時中の日本のようだなと思えただけなのかもしれないのですが、今は「安倍政権(安倍総理大臣)を批判してはいけない」というような雰囲気がマスコミに漂う印象もあるので、何か現代的、現実的であるような感じがしました。(そもそもマスコミは、政権を批評・批判するのが普通で、擁護したり絶賛したり、何も起きなかったことにしたりするのは、正しくないことのように思えます。例えば今年の1月の、安倍総理大臣のカイロでの演説後に後藤さんと湯川さんという二人の日本人ジャーナリストが「ISIL」によって殺害された事件のことも、政府には全く問題がなかったと政府が決定して以降、特にテレビの報道番組ではほとんど取り上げられなくなっていったように思います。今年のことなのに、衝撃的な事件だったはずなのに、何事もなかったかのようになっているのが不思議です。報道番組ではもう検証されないのでしょうか。)

ナオトさんが、公園の噴水の中で、現代の政治家(政治屋?)たちへの批判や若者たちへの期待を叫ぶ場面は、それを見ていて、何となく、TBSの「未成年」というドラマを思い出しました。

片岡刑事に止められる中、ナオトさんが自殺をしてしまうという最後は、見ていて少し辛く思えたのですが、その後マスコミがそのようなナオトさんのことをどのように報道したのだろうかということも、ドラマでは描かれなかったので、少し気になりました。(実際にも、例えば官邸にドローンを置いた人や、JRの山手線の電気系統の一部を燃やした人のことは、政治的な主張?があったことよりも、“変わった人”であるというところばかりが報道されていたような気がします。)

全体的には社会派で良かったように思えるのですが、私としては、ナオトさんと真由さんが最初から親しかったという展開が、少し無理やりというか、意外であるようにも思えました。

このドラマの前半では真由さんがいわゆる「ストックホルム症候群」でナオトさんに馴染んでいるように見えたので、後半で「狂言」だったことが明かされると、最初のほうの、例えばコーンフレークを食べない真由さんの描写や、雑な命令口調の犯人のナオトさんの描写が、急に不自然だったように思えてきました。狂言であるということは最初から描かれていても良かったのではないかなと思います。

不自然だったことといえば、私としては、「とくダネ!」(フジテレビの朝の情報番組)の部分についても不自然に思えてしまいました。現実とのつながりを持たせる目的の演出だったのかもしれないとも思うのですが、ドラマのシリアスな展開が、謎の「とくダネ!」の場面で中断されてしまうように思えました。わざわざ作られたという感じが前に出てしまって、むしろ現実感を失くしてしまう印象で、私には少し残念に思えました。

ドラマの後半は特に、真由さんとナオトさんという“孤独な二人の革命”を中心に展開していたので、このドラマ全体がそのための物語であるように思え、そのことが、社会派の要素を少し薄めていた印象もありました。

私としては、小学生の女の子が少し親しくなった大人の男性に「私を誘拐して」と言う辺りなど、何となく、男性の作者の物語なのだろうなという感じもしてしまいました。仮に原作通りの言葉なのだとしても、私には、少し違和感がありました。また、ドラマの中の「元副総理大臣」が、「現副総理大臣」か「現大臣」か「現総理大臣」でも、ドラマとしては成立したのではないかなとも思えました。

それでも、それなりに良いドラマだったように思います。ナオトさんが最後に見たのが、真由さんからもらった四葉のクローバーのしおりだったところも、ほんの僅かだとしても未来には希望があるという感じがして、良かったように思います。

物語として描かれる内容に「勇気がある」と思うのは少し間違っているのかもしれないのですが、今の世の中においては何となく、勇気があるな、と少し思えるような、社会派のドラマになっていたように思います。
プロフィール

Author:カンナ
ブログ初心者です。
感想などを書いています。
マイペースで更新します。
すきなもの
 月・星空・雨・虹・雪
 飛行機雲・入道雲・風鈴の音
 透き通った水・きれいな色
 富士山・東京タワー・ラジオ・音楽
 本・絵画・ドラマ・(時々)アニメ
 掃除機をかけること
にがてなもの
 人ごみ・西日・甘すぎるお菓子
 

最新記事
カテゴリ
月別アーカイブ
カウンター
検索フォーム