「トナリのウチュウ」

先日のNHKのBSプレミアムで放送され、録画をしておいた、「大人のためのサイエンスファンタジー トナリのウチュウ」という番組を見ました。

何だろうと何となく気になって録画をしておいた番組だったのですが、面白かったです。自然観察をテーマにした、ドラマとドキュメンタリーで構成された番組でした。

ある日、中学受験のための塾へ出かけた少年・大樹(込江海翔さん)は、近所の雑木林のようになっている空き地の前を歩いていた時、スニーカーの足元に転がってきた水滴のような透明なガラス玉を拾うと、その空き地の中からこちらを見ていた黒猫に誘われるようにその茂みのへ入っていくのですが、少年が黒猫をソラと名付けて話しかけると、ソラは人間の言葉で少年に語りかけるようになりました。自分を詩人だと言う黒猫のソラは、谷川俊太郎さんの詩を少年に諳んじてみせていたのですが、自作の詩は制作中ということでした。

塾に行く時間を気にしていた少年は、自分を知っている人がいない場所へ行きたいという理由で中学受験をしようとしていました。猫と話しているところを知り合いに見られたくないと人目を気にする少年の前に人間の老人の姿(田中泯さん)となって現れた黒猫のソラは、不思議なビー玉の魔術を使って、「一つの世界」の中で生き辛さを感じている少年に、草木の中に生きている虫や両生類などの小さな生き物たちの姿、その小さな生き物たちが見ている世界を見せ始めるのでした。

人間よりも丈の低い猫の目や、複眼のトンボの目などで世界を見て、自分が見ている世界以外にもたくさんの世界があることに気付き始めた大樹さんは、妻の小言を聞きながらの自宅リビングでの書類作りの仕事を中断して散歩に出ていた父親(眞島秀和さん)にもビー玉の魔法で小さな生き物たちの世界を見せて遊んでいたのですが、大樹さんの父親が昔猫と話したことがある人だということに気付いたソラは、大樹さんの父親の前でも人間の姿となって現れ、二人に“空き地の宇宙”を教えていました。

ソラに世界の見方を教わった大樹さんは、塾を休んで空き地内に「秘密基地」を作り、見つけた虫たちの名前をノートに書いたり、図鑑で調べたりいました。風が葉を揺らす音を聞いたり、空気の動きを身体の感覚で感じ取ったりもしていたのですが、それから大樹さんと父親は、昼間の空き地だけではなく、夕方の空き地でも自然を観察して、コウモリを小石で集めたり、暗い夜の空き地にも寝袋と懐中電灯を持ってやって来て、セミが抜け殻から出てくるところを見たり、土の上に寝転がって、星が出ている東京の夜空を見上げたりしていました。

ソラのビー玉をどこかに落としてしまった大樹さんに、父親は、想像力があれば大丈夫だと話していました。植物や猫やカエルや虫たちにもそれぞれの世界があることを知った大樹少年は、もう少し元気に塾へ出かけるようになっていました。空き地にいる黒猫のソラも、猫としての生活に戻っていたようでした。

脚本と監督は毛利匡さんでした。

ドキュメンタリー部分では特に虫たちのアップの映像が多かったので、最初はその迫力が少し苦手に思えてしまっていたのですが、田中泯さんの演じる黒猫のソラ(猫おじいさんのソラ)の話を聞きながら見ていくうちに、ドラマの中の大樹さんやお父さんのように、興味を持って見ることができるようになっていきました。

私も幼稚園生や小学生や中学生の頃のほうが、もっと自然を見ていたような気がします。自然の中で遊ぶということができなくなってから、自然(自分以外)との距離ができて、人目を気にするようにもなってしまって(例えば高校生が公園の砂場で遊んでいたら、目立ってしまうのではないでしょうか)、「世界」が一つしかなくなってしまったのかもしれないなと、番組を見ていて思いました。

大樹さんのお母さんが厳しい、という設定もあって、ドラマは、父と息子の物語になっていたのですが、核家族の父子の前に現れた人間の姿の黒猫のソラが祖父のような感じだったので、親子3世代の物語のようでもあり、そのようなところもとても良かったように思います。自然に詳しい祖父がいたなら、孫は楽しいだろうなと思いました。

大人しい黒猫のソラもとてもかわいかったのですが、本当はジャックというのだそうです。父子をすぐそばに広がる別世界、「トナリのウチュウ」に誘う黒猫のジャックの名演技も、ドラマの重要な要素だったように思います。

黒猫が詩人であるというところも何か良かったですし、宇宙は天地(空間)と時間であるという『大辞林』の説明が紹介されていたのも良かったです。

番組に登場していた雑木林の空き地は、東京の江戸川区の住宅街にある「カンタンの里」と呼ばれる場所だそうです。カンタンというのは、薄い黄緑色のコオロギのような、秋に鳴く虫の名前でした。昔は私有地だったそうなのですが、区が管理するようになり、そうして草を育つままにしておいたら、あのようなたくさんの小さな生き物の集まって暮らす空き地になったのだそうです。

先日ノーベル医学生理学賞を受賞した大村智さんも、子供たちは自然の中で遊ぶことが大切だというようなことを、何かのインタビューの中で話していたように思います。都会でも、風が吹いたり雨が降ったりしますし、全く草木のないところはないのですし、公園や川の土手もありますし、少しの好奇心や想像力があれば、自然に親しむことは気軽にどこでもできることなのだと思いました。

NHKのBSプレミアムで夜7時半頃から放送されていたように思うのですが、良い番組だったので、いつか総合テレビで放送されたなら、もっとたくさんの人に見てもらうことのできる番組になるのではないかなと思いました。楽しかったです。
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Author:カンナ
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