「新・映像の世紀」第1集

先月末の「NHKスペシャル」で放送され、録画をしておいた「新・映像の世紀」の第1集を見ました。

第1集「百年の悲劇はここから始まった」は、主に第一次世界大戦の特集でした。今から101年前に起きたサラエボ事件(昨年が100年目の年でした)を発端として、現代にもヨーロッパや中東やロシアやアメリカや日本を含めたアジア各地などで続いている、戦争や紛争のきっかけとなった出来事を、ムービーカメラが発明されて使われ始めた当時の白黒のフィルム映像と共に時系列で伝えるドキュメンタリー番組でした。番組の語りは、山田孝之さんと伊藤敏恵さんでした。

「アラビアのロレンス」の映画を私はちゃんと見たことはないのですが、そのモデルとなった人物のことは少しだけ知っていました。映像で見たことはなかったのですが、オスマン帝国を内部から崩壊させた、イギリスやアメリカにとっての英雄のトーマス・エドワード・ロレンスは、アラブの人たちにとっては嘘つきの裏切り者であり、番組によると、第一次世界大戦後は自己嫌悪に苛まれながら、1935年にバイク事故で亡くなったのだそうです。

ドイツで初めて女性として科学の博士号を取得したクララ・ハーバー(クララ・イマーヴァール)という方が、ドイツ軍のために毒ガスを開発した夫のフィリッツ・ハーバー(フリッツ・ハーバー)の研究に抗議をして、1915年の夫の祝賀パーティーの夜に拳銃自殺をしたという出来事も、私は知らなかったので、衝撃的でした。アインシュタイン博士も、ハーバー博士の研究を批判していたそうなのですが、ハーバー博士は妻のクララさんの死後も毒ガスの研究を続け、ハーバー博士が開発した農薬は、後にハーバー博士と同じユダヤ人の大量虐殺に使われることになったそうです。

第一次世界大戦が終わった直後のヨーロッパの地を訪れた日本人として、皇太子時代の昭和天皇(裕仁親王)の映像も紹介されていました。「破壊せられたる諸都市、荒廃せられたる諸森林、蹂躙せられたる田野の風景は、戦争を讃美し、暴力を謳歌する者の眼には如何に映ずべきか、是等は深く予の心を傷ましめたり」(「昭和天皇実録」)という言葉も伝えられていたのですが、戦地の惨状を目の当たりにしてそのように感じられた昭和天皇が、第一次世界大戦後のアジアで、大日本帝国軍(日本軍)の軍人や政治家や一部の官僚たちによって始められた「大東亜戦争(太平洋戦争)」の一連の戦いを承認してしまったのは(あるいは、拒絶することができなかったのは)一体どうしてなのだろうと、素朴な疑問として、本当に不思議なことに思えます。

番組によると、作家のH・G・ウェルズは、第一次世界大戦の勃発や大量殺戮や原子爆弾の出現による文化の破壊などは予言していたそうなのですが、第一次世界大戦終結後には、終わったばかりのそれまでの戦争を、「あらゆる戦争を終わらせるための戦争」だと思っていたのだそうです。でも、それは実際には間違いだったということが、その後の未来の歴史を知っている現代の私たちには分かります。

第一次世界大戦の前にはアメリカが「中立国」だったということも私は知らなかったのですが、戦争にお金を使い過ぎていたイギリスがアメリカを軍需産業に誘い、結局は、経済が破綻しないようにするためにアメリカはそのイギリスの戦争に参戦していったようでした。当時の大統領の取り巻きは、経済界の人たちばかりだったそうです。

第一次世界大戦の始まる頃、ヨーロッパではそれまでの戦争の記憶が40年前に遠ざかっていて、戦争を冒険の一種のように想像する若者たちも増えていたそうです。

戦争の記憶が世の中から薄れるということは、本当に怖いことだということを、今回の番組を見ていて改めて思いました。

戦争を始めるような政治家や官僚や財界人の方たちは、欲深くて好戦的で嘘つきで卑怯で前向きな人たちなのだろうと思うので(少し偏見的かもしれませんが)、そのような人たちがこの世界からいなくなればいいのではないか、というようなことも思ってしまったのですが、それもある意味では少し暴力的な考え方なのかもしれないとも思いました。

でも、生まれた時から(出生届が受理された時から?)「国民」である一般の人たちの多くは強くはないのですし、「国」を運営する政治家や官僚や財界人の方たちに支配され、その勝手な方針やプロパガンダというものに振り回されてしまうように思います。

太平洋戦争の頃の日本社会も、政府の方針に反対する人や政府の「戦争讃美」を否定して平和を訴える人は、政府寄りの人に捕まって、殴られたり、投獄されたり、殺されたり、「非国民」と呼ばれて苦しめられたりしていたそうですし、政治家や軍部やそれに追従する人々が権力を振るうという、「恐怖政治」に支配されていたのだろうと思います。

今も「戦後70年」ですが、日中戦争(支那事変)や太平洋戦争や第二次世界大戦などの惨状の記憶が世の中からは薄れているような気がします。70年前の戦争だけではなく、ベトナム戦争や湾岸戦争や、近年のアメリカ同時多発テロの「9・11」やイラク戦争のことも、メディアの映像ではそれほど伝えられなくなってきているような気がします。

今回の番組を見ていて、歴史はつながっているということを改めて思ったのですが、一昨日に報道されていた、アメリカがシリアの北部を空爆して、今年の1月頃にジャーナリストの後藤健二さんや湯川遥菜さんを殺害したとされる「ジハーディー・ジョン」という名前の「IS」の兵士を殺害したという噂や、昨日(13日の金曜日の夜)の、「IS」の関係者が起こしたとフランス政府が断定したパリの同時多発テロ事件も、個人というよりは「国」や「宗教」を背負った存在による報復の報復というような連鎖によってつながっている事件なのではないかと思います。

国同士の戦争も紛争も空爆もテロ事件も、本当の殺人犯以外の無関係な人たちがたくさん傷ついたり殺されたりすることになるのですし、本当に嫌なことだと思うのですが、やはり「テロには屈しない」とか「テロとの戦い」というような態度で各国の代表者が居続ける限りは、「テロリスト」の人たちとの戦いはいつまでも終わらないというか、長引いてしまうような気がします。標的にされている?欧米や日本の政府関係者などの誰か優秀な人物が「テロリスト」の人たちとちゃんと話し合ったことはあるのでしょうか。

「話せば分かる」が通じる人たちばかりではないかもしれないのですが、そのような人たちの話を聞くことも重要なことではないかなと思います。(あるいは、私が知らないだけで、誰かがすでにそのようなことを始めているのかもしれませんが。)

政治や経済の世界に疎い私には「複雑」と言われている世界情勢のことは分からないかもしれないのですが、それでも、今回の「新・映像の世紀」の第1集を、私も最後まで興味深く見ることができました。昔の映像を見ることができたというところもそうなのですが、今の世界各地の紛争につながっている「百年の悲劇」の「火種」となった事柄が分かりやすく簡潔に伝えられていたところもとても良かったです。録画をしておいたままになっていたのをようやく見ることができたのですが、良い特集でした。
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