特集ドラマ「赤レンガ」

NHKのBSプレミアムで夕方の頃に放送され、録画をしておいた「被爆70年特集ドラマ 赤レンガ(Red Brick)」を見ました。広島放送局制作の、1時間15分ほどのドラマです。

私はこのドラマのことを知らず、番組表を見て何だろうと気になって録画をしておいたものなのですが、ロサンゼルスのクラブハウスで歌手活動をしている日系4世のアニー・アン(プリシラ・アーンさん)が、心臓病を患って入院していた日系2世の祖父のジェームス(宝田明さん)が亡くなる直前まで書き残していた月子さん宛の手紙の束を日本のどこかで暮らしている月子さんに届けるため、1941年に祖父が父親の死に直面して帰国するまでの間月子さんと会っていた広島を訪れ、月子さんが戦時中に働いていた赤レンガ造りの「陸軍被服支廠」の見学中、アンさんの歌をテレビで聞いて当時のことを思い出して「旧被服支廠の保全を願う懇談会」の中西さんという方の誘いで東京から出てきていた月子さんと偶然出会い、最初は頑なだった月子さんの話から、広島と長崎に落とされた原爆の被害のこと、広島の原爆で家族や親戚や友人を失った月子さんと日系アメリカ兵となっていた祖父の間に何があったのかを知り、平和のために自分には何ができるだろうかということを自問して、一つの答えを導き出していく、という物語でした。

作(脚本)と演出は、大橋守さんでした。「基町アパート」や「かたりべさん」のドラマを作った方でもありました。

タイトルの「赤レンガ」の「旧被服支廠」は、戦前、兵士の服や靴などを作っていた施設で、戦時中には、戦死した兵士の服が集められたのを洗濯して修繕する仕事が行われたり、被爆者を収容したりする施設として使われていたようでした。被爆したものの、無事だった月子さんは、そこでたくさんの人が苦しみながら亡くなっていくのを目の当たりにしていたようでした。

戦時中、アメリカで暮らしていた日系2世のジェームスさんは、「人間秘密兵器」と呼ばれていた日本軍の機密情報を解読する部隊に所属していて、投降するビラを作る仕事などもしていました。原爆投下後、アメリカの飛行機から撒かれたビラを拾った月子さんは、その文字を一目見てジェームスさんの手紙の文字と同じであることに気付き、戦後、一緒にアメリカで暮らそうということを伝えるために月子さんに会いに来たジェームスさんを、家族を殺したアメリカ人として、冷たく突き放してしまったようで、ジェームスさんが70年月子さんのことを思っている間、月子さんは広島から逃げるように東京へ出た後も、そのことを後悔し続けていたようでした。

「旧被服支廠」をアンさんに案内した月子さんは、アンさんからジェームスさんの最後の手紙を渡されて読んでいました。今思えば、一握りの人間が始めた戦争なのに、自分の人生を戦争に明け渡すことが正しいことだと思い込んでいた、間違いだったと思い直すのは正直辛いが、君とお互い年を重ねてきたねと笑い合えたら取り返すことができるのではないか、そして、こんな悲しい運命は私たちだけのものにしてほしいと子や孫たちに伝えられたら、戦争に対して雪辱を果たせるのではないか、お互い年を取ったがまだまだこれからだ、人は変われるのだ、ということが、その月子さん宛ての手紙には書かれていました。

ジェームスさんは、月子さんが生きているかどうかを確認しないまま手紙を書いていたようだったので、それは自分への問い掛けでもあったのだろうと思います。

ジェームスさんの最後の手紙を読んで泣いていた月子さんは、あの戦争中をどうやって生き延びてきたのかを伝える仕事をしなくては、と決意していました。あなたに会えて良かった、とアンさんに感謝していた月子さんは、私は今から少し変われそうだと笑い、あなたは変われる?あなたには何ができる?と若いアンさんに訊いていました。

シンガーソングライターのアンさんは、最後、「2015ヒロシマピースコンサート」というイベントで、平和を願う歌を披露していました。

その本編の後、アンさんを演じていたプリシラ・アーンさんや、アンさんの少女時代を演じていた久保田紗友さん、ジェームスさんの少年時代を演じていた佐野岳さんたち7人が、「旧被服支廠」の道を歩きながら、国籍や肌の色で悪者扱いしても傷付くだけ、世界中のどの人も「鬼」でもないし「猿」でもない、若い世代の自分たちは原爆を落としたアメリカに恨み言を言っているのではない、核兵器は人類全員を不幸にすると、広島で起こったことを伝えたいだけだ、これから生まれてくる世界中の子供たちが幸せに生きていくことができるようにベストを尽くしたい、と言い、最後にアンさんを演じていたプリシラ・アーンさんが、私は音楽で頑張ります、それが私の選んだ仕事だから、と手を振っていました。

メッセージ性の強いドラマだったように思うですが、とても良いドラマでした。

プリシラ・アーンさんは、アメリカと韓国のハーフの方だそうで、スタジオジブリのアニメ映画「思い出のマーニー」の主題歌を歌っていた方でもありました。ドラマの中で歌われていた歌も良かったです。

エンドロールによると、ドラマの冒頭で歌われていたのは「TELL HER」(「あの人に伝えて」でしょうか)、挿入歌は「見えない子供」(谷川俊太郎さん作詞、武満徹さん作曲)、最後のコンサートで歌われていたのは「ALL PEOPLE CAN CHANGE」という曲でした。

意欲的なドラマであり、誠実に作られたドラマだったように思います。広島を訪れた日系4世のアメリカ人のアンさんが、結婚や出産などの自分の将来のことを少し不安に思いながら、同時に70年前の戦争のことや原爆のことを知っていくという過程や揺れる感情が、丁寧に描かれていたように思います。「戦後70年」ですが、個人の中ではまだ「戦争」は終わっていないということも改めて思いました。

みんな同じ人間であるということはちょっと考えれば分かることだ、というメッセージは素直なものですし、その素直さが、「世界平和」という理想を実現に向かわせるためには、一番大切なことなのではないかなと思いました。「世界平和」のためには犠牲者が出ても仕方がないというような考え方が通ってしまう社会の下では、いつまで経っても「世界平和」は実現しないのだろうとも思いました。

平和のために自分に何ができるか、ということはまだよく分からないけれど、少なくともそれを考えながら生きることは良いことなのだと思います。

ところで、このドラマは今年の9月11日に総合テレビで夜7時半から放送されたと書かれていたのですが、私は気付きませんでした。見逃してしまっていたのかもしれません。でも、今回BSプレミアムで放送されたものに気付くことができて良かったです。良いドラマだったので、もう一度、という言い方で合っているのかどうか分かりませんが、BSよりもたくさんの人が見ることのできる総合テレビで放送されるといいのではないかなと思いました。
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