「未来のために SP」と、「憎しみとゆるし~マニラ市街戦 その後~」

昨夜の10時、私はNHKの「未来のために SP」という、映画監督の山田洋次さんと歌手で俳優で演出家の美輪明宏さんと嵐の二宮和也さんの対談番組を見ていました。

二宮さん主演の山田洋次監督の最新映画「母と暮せば」は、長崎に投下された原子爆弾によって殺された息子の幽霊と母親の物語のようで、山田監督は、映画で描く長崎の被爆について、美輪さんにも相談をしていたということでした。番組のナレーションは、その映画に出演している女優の黒木華さんでした。

最近のNHKは民放のように公開前や公開直後の映画の宣伝をよくするようになったので、それはともかくとしても、昨夜の番組は、今年の「戦後70年」に関連した企画であり、戦争時代を体験した84歳の山田監督と80歳の美輪さんと、戦争時代を知らない32歳の二宮さんが、約70年前の「戦争」について話し合い、これから先の「未来」を考えるという番組でした。

戦時中に見た悲惨な出来事を二宮さんに聞かせていた山田監督と美輪さんは、最後に、人間は賢くなっているのか考えてほしい、今の時代は不安が多く、「きな臭い」状況になっている、“戦争”は足元まで忍び寄っている、今自分たちは「波打ち際」にいるのだと話し、当時日本人がどのような暮らしをしていたのか、どのような気持ちでいたのかを考えなくてはいけない、賢明に想像することが大切だ、戦争がいかに悲劇的なものなのかを想像する能力をみんなが持っていなくてはいけない、と話していました。

それでも美輪さんは、錦織選手や浅田真央選手など近年活躍している若いスポーツ選手のことを挙げて、親孝行で謙虚な正統派の若い人たちが出てきているから日本も捨てたものではないと思う、自信を持っていい、と笑っていました。

番組の最後、二宮さんは、お二人が「戦争」を自分の中で消化して昔話として話すことができ、それを聞くことができるのは貴重なことだ、リアルに昔の話に色がつき始めたという趣旨のことを答えていました。番組は、原爆が投下された時のキノコ雲の映像で終わっていました。

山田監督と美輪さんの話を聞いていた二宮さんは、きっと“若者代表”だったのであり、本当はもっとよく想像することができているのだろうと思います。

私も70年以前の戦争を直接体験してはいないけれど、誰かを傷つけたり傷つけられたり、殺したり殺されたりすることが、どれほど嫌なことかは分かります。政治家や役人などの一部の“権力者”の命令によって、好きなものを取り上げられたり、価値を押しつけられたり、考え方や発言を禁止されたり強制されたり、自由を奪われたり、「一丸となる」タイプの全体主義で集団行動に無理矢理参加させられたり、戦争を否定することを言っただけで「非国民」と罵られたり、自分の持ち物を没収されたりすることがどれほど不快なことであるかも分かります。

それは70年前の「戦争」を想起しなかったとしても、今現在の社会の中で少なからず起きていることだからだと思います。

日本が行った戦争は自衛のための戦争だったと思っている方がいるのは知っていますが、それならそれはどこの国の戦争も、近年の「テロ」と呼ばれている攻撃や破壊活動も、その人たちにとっての大切なものを守るために行われていることで、同じものということになるように思います。

少なくとも日本のことについて言うなら、戦時中の大日本帝国時代の日本政府の政治家たちや軍人たちやその思想に賛同した協力者たちは、外国の人を虐げたり殺したりしただけではなく、一般の日本人のことも、苦しめていたのではないでしょうか。(お隣の共産主義の国々?は、きっとその時代の日本の悪い部分を受け継いだのではないかとも思えます。)

今の内閣は、70年前の戦争で日本軍が外国で行ったことについて、謝らされている、と思っているようですが、そもそも日本政府は、「哀悼の意」だけではなく、戦争時代を生きてきた日本の国民に対して、公式に謝罪をしたことはあるのでしょうか。聞いたことがないように思えて、どうなのかなと、少し気になりました。

「国」を守るためと言って国民同士を監視させたり、国民を傷つけたりした政府関係者や警察関係者が(その人たちも国民の一人ではあるはずですが)、国民に対して「多大な迷惑をかけた」などの言葉で終わらせようとしまうのだとしたなら、70年前のことに限らず、今起きたことだとして考えたとしても、本当に理不尽で、無責任で、職権乱用的なことであるように思います。

でも、今が「波打ち際」だとするなら、戦争や戦争に準ずる行為を否定しない人たち、日本が直接攻撃をされていなくても外国を攻撃することを認めるという考え方を支持する人たちが増えているのだとするなら、怖いことだなと思います。

日本では、特に日中戦争や太平洋戦争(大東亜戦争)のことがあまり検証されていないように思います。「犯人探し」は普通にはあまり良くないことかもしれないのですが、でも、一般市民(国籍問わず)が大量に殺される原因を作った本当に悪い人たちが誰なのかを、「東京裁判」を戦勝国による一方的なものだったと否定する政府が、いつまでも隠し続けたりごまかし続けたりするというのは、何か卑怯なことでもあるような気がするのです。

今年の1月の「ISIL」に日本人ジャーナリストが殺された事件や、安全保障関連法案が採決され成立したこと、沖縄に駐留している米軍基地の辺野古への移設問題が法廷闘争に発展していること、「ISIL」による?報復としてのテロ事件、その報復攻撃としての空爆、難民の急増、「従軍慰安婦」の問題、「南京事件」が世界記憶遺産になる問題、原発再稼動の問題、軍需産業を始めようとしている問題など、歴史的にずっと続いている「戦争」関連の問題は、本当にたくさんあって、時々報道番組やドキュメンタリー番組を見たり本や新聞を読んだりするくらいの私には、難しく、分からないことばかりです。

ついに今年政府によって始められてしまった不気味な国民番号制度(マイナンバー制度、という名前も何だか気持ち悪く思えます)も、国民の情報が集められて管理されるという点では、つながっているのかもしれません。

毎年話題になる(そして毎年過去の年のものを忘れてしまう)「今年の漢字」が発表される前、その特集が組まれたニュース番組などを見ながら、私は「法的安定性が揺らいだ」の「法」かなとも思っていたのですが、結果は「安」でした。安保の安、首相の安部さんの安、不安の安、とにかく明るい安村さんの安、安っぽいの安、などの意味だそうです。

世の中の空気感や私を含めた一個人の暮らしがこれからどのように変わっていくのか分かりませんが、今回の「未来のために」の番組の中でも話していた、敗戦直後に少年時代の山田監督が思い描いたという、「これから良くなっていく」はずの日本は、今が“戦争”の「波打ち際」にあるのだとするなら、今のような直接的な戦闘状態にはないという意味での平和な世の中は、70年と少しで終わってしまうことになるのかもしれません。

誰にも分からない未来のことを勝手に不安に思っても仕方がないことかもしれないとも思うのですが、少し憂鬱な気持ちになります。

ところで、この番組の後の夜11時から、NHKのBS1では、「憎しみとゆるし~マニラ市街戦 その後~」が再放送されていました。私が最初に見たのは昨年の2014年の8月の放送だったように思います。

1945年の2月に始まったマニラの市街地での日本軍とアメリカ軍による戦闘で、妻と3人の子供と5人の親戚を日本軍に殺されたというキリノ元大統領が、思い悩んだ末に日本兵を赦すという決断をし、1953年の夏、モンテンルパの収容所にいた日本兵の戦犯108人を「特赦」として船で日本へ送り返した、ということを伝えるドキュメンタリー番組です。

「ああモンテンルパの夜は更けて」の歌詞と曲が、戦犯として収容されていた方によって作られたものであるということも、私はこの番組を見るまで知らなかったような気がします。

フィリピンの方の9割はキリスト教徒なのだそうで、終戦直後のフィリピンを治めていたキリノ元大統領もそうでした。そして、もともと日本人の友人とも親しくしていたキリノ元大統領は、病気になるほど悩み、多数の国民が反対する中、家族を殺した日本兵を赦すという「特赦」(大統領の権限で決めることのできる恩赦)の決断をしたということだったのですが、番組を見ていて、本当にすごい方だと思いました。

まさに、神の赦し、という印象でした。憲兵だった代田銀太郎さん(「ああモンテンルパの夜は更けて」の作詞をした方)を救った方や、当時父親や兄を殺されたという市民の方たちの「赦し」も、本当にすごいというか、大きくて崇高な感情だと思います。

いつまでも憎み続けていては前へ進むことができない、ゆるさなければ穏やかな人生を送ることはできない、という趣旨のことをキリノ元大統領は生き残った娘さんに話していたそうなのですが、普通の人にはなかなかできることではないように思えましたし、そのような境地に至るまでの苦悩は、大変なものだっただろうと思います。

山田洋次監督と美輪さんと二宮さんの対談番組を見た後、テレビ朝日の池上彰さんの「ニュースマニア」は録画をしておくことにして、こちらの再放送を見ることにしたのですが、やはりとても良いドキュメンタリー番組でした。

「戦後70年」の年はもうすぐ終わりますが、日本の中の出来事と同じくらい、海外の激戦地での出来事も忘れてはいけないことで、テレビの番組などでも頻繁に特集されるべきものなのだと思います。私も全部を覚えていることはできないですし、すぐに忘れてしまうことも多いのですが、それでも、これからも、少しでも知ることができるようにしていきたいと改めて思いました。
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