ドラマ「川獺(かわうそ)」と、「ブラック・ユニバース」と、木村武山の屏風絵

昨夜、NHKの「第39回創作テレビドラマ大賞」を受賞した作品のドラマ「川獺(かわうそ)」を見ました。

どのような物語なのだろうと気になって、何気なく見てみることにしたドラマだったのですが、良いドラマでした。

ドラマの舞台は、高知県の漁港の町でした。

母親を亡くし、妊娠中の恋人の香山由美(岡本玲さん)と暮らしていた27歳の松浦保(堀井新太さん)は、ある日、叔母の須藤圭子(高岡早紀さん)から離れて暮らす父親の須藤明憲(勝村政信さん)の危篤の連絡を受けて14年ぶりに故郷の高知の町へ帰り、意識不明のまま入院中の父親と対面するのですが、かつて絶滅したはずのニホンカワウソを発見したと嘘の公表して世間を騒がせ、それをきっかけに母親と離婚をすることになった父親に対して抱いてきた複雑な思いを払拭することができずにいました。

どうして父親はあのような嘘をついたのかと苦しんでいたある時、カワウソの資料の並ぶ父親の書斎の本棚に父親の子供の頃の写真を見つけた保さんは、父親の同級生で元漁業組合長の磯貝信二さんに会いに行き、材木会社にいた磯貝さんから、明憲さんは漁港を工業団地の建設計画から守るためにニホンカワウソを発見したと嘘をついたのだと謝られました。

1970年、中学生の磯貝さん(中澤準さん)は、明憲さん(若山耀人さん)と、もう一人の同級生の町岡徹さん(土屋楓さん)と海岸で釣りをして遊んでいた時、天然記念物のニホンカワウソが飛び跳ねたのを見たのでした。

そしてその後、徹さんの母親からの手紙を見た保さんは、叔母の圭子さんの勧めもあって、香川に暮らす徹さんの母親に会いに行くことにしました。フェリーに乗って港に着いた保さんは、待っていた徹さんの母親の寿子(左時枝さん)から、徹さんと仲の良かった明憲さんについて話を聞きました。

ニホンカワウソの姿を目撃し、役場の人たちに聴取されることになった明憲さんは、見ましたと正直に答える徹さんの隣で、見ていませんと答えてしまい、ニホンカワウソがいたという証言はないことになってしまいました。明憲さんは、漁の網にかかったニホンカワウソの死体を見たことがあるという、水産加工会社を経営する父親から、ニホンカワウソがいたということになれば、保護のためにその漁が制限されてしまうかもしれないとして、見なかったと答えるようにと言われていたのでした。

ニホンカワウソを目撃した徹さんは、徹さんの父親がニホンカワウソを守ろうとしていたこともあって、その後も一人で川や海辺でニホンカワウソを捜し始め、夜の磯での事故で亡くなってしまったということでした。

徹さんが亡くなった後、嘘をついたことを後悔していた明憲さんは、寿子さん(伊勢佳世さん)に謝りに行き、寿子さんから、徹さんは明憲さんを巻き込みたくなくて一人でニホンカワウソを探していたこと、徹さんにとって明憲さんはかけがえのない友達だったということを言われていました。徹さんの父親がカワウソを探していた海岸に、徹さんも生きていると思う、と寿子さんが言うのを聞いた明憲さんは、自分が後悔しない道を探す、徹君がこの町にいるというなら一緒にカワウソを捜します、大切な人を思い続けて生きて行きたいのです、と寿子さんに手紙を出していました。

その父親の手紙を帰りのフェリーの中で読んだ保さんは、海岸の岸壁に立つ、入院しているはずの父親の姿を見ていました。

病室へ向かった保さんは、父親の明憲さんの手を握って涙を流していました。しばらくして明憲さんは、意識が戻らないまま息を引き取ったようでした。

最後、海岸に来ていた保さんのそばには、由美さんも来ていて、二人で顔を見合わせていました。

作・脚本は山下真和さんです。音楽は冬野ユミさん、演出は伊勢田雅也さんでした。

保さんは、父へのわだかまりの気持ちを解いていき、再び父親を尊敬することができるようになり、

現在の保さんの物語と、回想で描かれる保さんの過去や父親の過去の物語とが交錯している感じでもあったのですが、保さんの父親の明憲さんの14歳の頃のドラマも、一つのドラマとして成立しそうに思えました。

父親と息子の絆の物語であり、父親の思いを受け継いで海岸でニホンカワウソを捜していた徹さんと、亡くなった親友の徹さんの思いを受け継いで海岸を守るためにニホンカワウソの目撃証言をした明憲さんの友情の物語でもあったのだと思います。

中学生の明憲さんと、徹さんの母親の寿子さんとの場面も、良かったです。

保さんがこれからニホンカワウソを捜す人、あるいは多津海岸を守る人になるのかどうかは分からないけれど、父がなぜ絶滅したはずのニホンカワウソを見たという嘘をついたのか、父がどのような思いで生きてきたのか、ということが分かって、本当の父親の姿を知って再び父親を尊敬することができるようになった保さんが、父親へのわだかまりの気持ちを解き、中途半端な態度で接してしまっていた恋人の由美さんと子供のことも率直に大切に思うことができるようになって、二人を自分の大事な存在として守る決意をした終わり方だったように思いました。

海岸の松の木のある黄土色の岸壁や、フェリー(連絡船?)から見る海の風景もきれいでした。

日本固有の種と言われているニホンカワウソが最後に目撃されたのは、1976年の、高知県の須崎市の新荘川という場所なのだそうです。河童の招待はニホンカワウソなのではないかという説もあるそうなのですが、昭和初期頃、毛皮の乱獲によって激減し、高度経済成長期の自然破壊などによって絶滅したとされているそうです。

ニホンオオカミもそうですが、ニホンカワウソも、まだどこかで生きているような気がします。私は直接見たことがないので分かりませんが、きっと人間に見つからないように、静かに生きているのではないかなと思います。


ところで、この「川獺」のドラマの後、NHKでは「ブラック・ユニバース~宇宙に抱かれる特別な夜~」という30分番組が放送されていました。宝石箱をひっくり返したような、とか、ビーズを散りばめたような、という感じの、きらめく小さな星々が濃紺の空を埋め尽くす、とても美しい星空の映像で始まり、一気に惹き込まれました。

ボリビアのウユニ湖の風景やチリの天文台、漆黒の太陽である皆既日食やブラックホール、ダークマターの研究のことが伝えられていたのですが、ゆったりとしたナレーションが、何となく、東京FMの「JET STREAM(ジェットストリーム)」のような感じにも思えました。美しい自然風景の映像を見ていると、本当に地球は美しい星なのだなと思います。夢のように思います。すてきな番組でした。

それから、私は、この「川獺」のドラマを見る前には、テレビ東京の「開運!なんでも鑑定団」を見ていたのですが(22年間出演していた司会の石坂浩二さんとアシスタントの吉田真由子さんが“卒業”となっていました)、その中で最後に鑑定されていた、木村武山の六曲一双の屏風が、とてもきれいでした。木村武山は、岡倉天心や下村観山のもとで新しい日本画に挑戦していた画家です。

砂金のような金地の屏風の右隻の下のほうには松の木が描かれ、白い山が見えていて、左隻の上のほうには天女が描かれていました。富士山の見える三保の松原の羽衣伝説を題材とした作品だそうです。中央に流れている淡くて白い雲が空の広さを感じさせる印象で、空間にはいくつかの散華が舞っていたのですが、その一つ一つが陶器のようにも見えました。保存状態がとても良かったこともあり、白色や金色やピンク色や水色、淡い緑色や紫色などがくっきりとした鮮やかな色合いの屏風絵でした。テレビの画面で見ただけでもきれいに見えたので、本物はもっと美しいのだろうなと思いました。私は詳しくは知らないのですが、番組の解説によると、病で右手が不自由になった武山が尼僧に勧められて左手で描くようになった「左武山」の頃の作品だそうです。

木村武山の天女の絵は、静岡県立美術館に「羽衣」という作品があるそうです。千葉の成田山新勝寺にも襖絵があるのだそうです。これからも大切になされるといいなと思いました。
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