オバマ大統領の広島訪問と演説のこと

昨日の夕方には、アメリカのバラク・オバマ大統領が現職の大統領として初めて広島を訪問しました。

私も夕方のテレビの生中継の放送を、何とか見ることができました。

「G7伊勢志摩サミット」が閉幕した後、オバマ大統領は「エアフォースワン」という政府専用飛行機で山口県の岩国基地へ向かい、日本の国旗とアメリカの国旗の前に集まっていた在日アメリカ軍兵士の方たちに、熊本地震での救助のことなどを挙げて、あなたたちはたくさんの命を救っていると激励していました。

オバマ大統領は「マリンワン」というヘリコプターで広島へ向かい、「キャデラックワン」という黒い車に乗り換えて、厳重に警備されている平和記念公園までの道を進んでいました。(乗り物の名前のことは評論家の方が話しているのを聞いて知りました。)

初めに平和記念資料館(原爆資料館)を訪れていたのですが、すぐに外へ出てきたのを見て意外に思いました。4月の11日にケリー国務長官が訪れた時よりは大分短く、10分ほどだったように思うのですが、後で伝えられていたことによると、通常の展示を見たのではなく、この時のために一か所に集められた展示を見たのだそうです。オバマ大統領ご自身が折ったという四つの折り鶴のうちの二つが資料館に残されたということも、後で報道で伝えられていました。

資料館の訪問を終えたオバマ大統領は、原爆死没者慰霊碑の前に高校生から受け取った花輪を献花して、少し目を閉じて黙祷をしていました。お辞儀をするという形ではなかったのですが、少し顎を引いて厳粛な面持ちで黙祷をし、少し頭を下げているようにも見えるような動作で終えていたように思います。

そして、日本の安倍首相の献花の後、オバマ大統領は招待された被爆者の方たちの席の前に進み、台の前に立って「所感」の演説を始めたのですが、「71年前の雲ひとつないよく晴れた朝、空から死が降ってきて世界が一変しました。」で始まっていた演説は、とても見事なものでした。

私は同時通訳されていた日本語訳の言葉と一緒に、オバマさんの声の演説を聴いていたのですが、日本人だけではなく数千人の朝鮮の人々や捕虜となっていたアメリカ人たちなどに触れて、全ての被爆者(「ヒバクシャ」と日本語で言われていました)や戦争の犠牲者を追悼していて、栄枯盛衰を繰り返す人類の発展と戦争の歴史と科学の進歩とを伝える内容が壮大で、しかもそれは思っていたよりも長い演説で、とても良い演説でした。

日本的な内容というか、日本国憲法(アメリカのGHQと日本との共同制作の憲法だというのならなおさらなのかもしれませんが)の平和主義の精神にもつながる内容というか、世界各地の人々に向けられたメッセージだと思うので、世界中の誰が聞いてもよく分かるものになっていたのだとは思うのですが、古来の仏教の教えのような印象もあり、日本人にはよりよく理解することのできる言葉だったのではないかと思います。

オバマさんの演説の文章は、本当にオバマさん自身が考えた文章なのでしょうか。それとも(日本の閣僚の場合のように?)官僚の誰かが考えたものなのでしょうか。オバマさんの演説を聴きながら、この演説の言葉のような思いを信念としている方に大統領や総理大臣になってもらいたく思いました。

核保有国は恐怖の論理から離れて核兵器のない世界を追及する勇気を持たなくてはいけない、という願いは、オバマさん自身が言っていたように、今のところの現実的にはオバマさんが生きているうちに達成することができないものなのかもしれないとも思うのですが、全ての国の指導者が勇気を持つことができたなら、すぐにでも達成することができるものでもあるので、そうなってほしいなと思いました。

最後は、「全ての子供たちが平和な日々を送ることができるようにする未来を私たちは選ぶことができる。未来には、広島と長崎は、核爆弾が落とされた場所としてではなく、私たちの道徳的な目覚めの場所として知られることになるでしょう。」というような言葉で演説は終わっていました。

オバマ大統領の演説の言葉の全文は、今朝の新聞や、インターネットの報道関係のサイトのいくつかで読むことができるようになっています。英語の文章と日本語の文章が一緒に掲載されているものもあれば、どちらか一つのものもあります。日本語のものは、「だ・である調」のものもあれば「ですます調」のものもありました。

昨日のオバマ大統領の演説は、71年前の第二次世界大戦中の終結間際の広島と長崎に落とされた原爆のことやその被害者となった「被爆者(ヒバクシャ)」の方たちの悲しみに寄り添うような内容のものでありながら、過去に起きた世界中のあらゆる戦争、現在も各地で続いている紛争や戦闘の犠牲となっている何の罪もない一般市民を悼むものでもありました。

理想的で高尚で優しい言葉であるように聴こえました。アメリカは原子力爆弾やその他の兵器の開発を続けているそうですし、原子力発電所の施設が爆発して町が汚染されても原発を使い続ける日本も兵器の研究や開発を行うことが検討されているそうですし、オバマ大統領の今回の演説の内容が、直ちに実行することができるような現実的なものではない、抽象的、観念的、精神的な内容であったとしても、理想を追求しようとすることや理想を語ることは、とても大切なことだと思います。

戦後70年の時の日本の“首相談話”と同じく「未来志向」の演説でも、今回のオバマ大統領の「未来志向」は、被爆地である広島や長崎の地を原点として思い留めて常にその過去を振り返ることをしながら人類の未来の方向性を考えていこう、というような過去と誠実に向き合うところからの「未来志向」なのだと思います。

アメリカでは、広島と長崎への原爆の投下を、戦争を終わらせるためには必要なものだったと“正当化”する考え方もあるそうで、そのような話を報道番組などで聞くと、日本の私にはそれを気分良く受け止めることはできないのですが、その番組の中でアメリカの退役軍人のおじいさんたちが当時の戦争のことを正しかったとか、アメリカ大統領が謝罪をする必要はないとか言い張っているのを見ていて、今の首相やその支持者の方を含め、日本の中にもこのような方たちがいることを思い出し、同じだな、とも思いました。

オバマ大統領の演説は、約17分という長い演説でした。次の安倍首相の5分ほどの演説が終わると(その中でアメリカのことを「米国」と呼んでいたのも少し気になりました)、オバマ大統領は、被爆者の坪井さんと握手をして会話を交わし、アメリカ人捕虜の調査をしているという森さんとの会話中には感極まった森さんを抱きしめていました。その場面を見ていて、当時被爆した8歳の子供の思いが救われているのではないかというような、何かそのような感じがしました。

お二人と別れた後、オバマ大統領は、安倍首相たちと原爆ドームのほうへ歩いて行きました(「NEWS23」の中で韓国の被爆者の方が訪問を願っていた韓国人原爆犠牲者慰霊碑へは、中継の映像の中では訪れていませんでした)。小道の前で立ち止まったオバマ大統領は、ピンク色やオレンジ色や黄色のバラの花の咲いている花壇のところまでも行かず、刈り込まれた木と木の隙間から対岸の原爆ドームを眺めるような形で、岸田外務大臣から説明を聞いていました。

そしてしばらく原爆ドームを眺めた後、サングラスの警備員に守られながら小道に停車していたキャデラックワンに乗り込み、安倍首相に見送られて広島平和記念公園を後にしていました。

オバマ大統領の広島訪問と演説は、確かに歴史に残るものになったように思います。

被爆を体験していない私には、被爆者として生きている方の気持ちを推し量ることはできないかもしれないのですが、オバマさんと握手をした坪井さんと森さんが本当に嬉しそうだったのが印象的で、広島や長崎の被爆者の方の多くがオバマさんの訪問や演説を歓迎していたと聞き、本当に良かったと思いました。

オバマ大統領の今回の広島での演説は、2009年のチェコのプラハでの演説の時の「核なき世界」のメッセージとは少し異なるというか、核兵器をなくしたいというだけではなく、人類の未来から戦争をなくしたいという、もっと強い反戦、非戦のメッセージだったように思います。

世界中の人々がこの言葉の思いを自分の思いとして持つことができるのなら、世界各地の人々の間で繰り広げられている暴力行為や殺人行為は無くなっていくのだろうと思いました。

オバマさんの演説が印象深かったこともあり、昨夜の各局の報道でも「G7伊勢志摩サミット」(安倍首相が「リーマンショックの前に似ている」という謎のことを言い出していましたが、結局、それぞれの国でそれぞれ頑張りましょう、というようなまとまりになっていたように思います)の話題は少し薄くなっていたように思います。土曜日と日曜日は情報番組や報道番組自体が少ないのですし、より薄まっていくのかもしれません。

「伊勢志摩サミット」が行われている間にも、500人以上の移民(報道機関によっては難民)を乗せた船が地中海で転覆したそうですし、シリアではまた自爆テロ事件が起きたそうですし、フランスでは与党が強行採決した労働法改正案に反対する若者たちによる大規模なデモが行われて衝突が起きたそうです。

労働法改正に反対したり今の社会のあり方を自分たちで考えるようになった、「立ち上がる夜」という集まりに参加するフランスの若者たちについては、先日NHKのBS1で放送されていた「ドキュメンタリーWAVE」の「激論 パリの広場で~労働法をめぐり立ち上がる若者たち」を見て知りました。昨年の安全保障関連法案が強行採決された頃の日本の若い人たちのデモもそうですが、世界各地で同じような出来事が起きているのだなと思いました。でも、フランスの集会のほうがもっと具体的で、建設的であるようにも思いました。商品のポスターをつなげたものの上に「公共の空間は商業のためのものではない」とペンキで書いた大きな幕を張るとか、主張がはっきりとしていて、すごいなと思いました。

また、報道によると、昨日には、東京の羽田空港で離陸直前の大韓航空機のエンジン付近から出火するという事故があったそうです。「G7伊勢志摩サミット」で使われていた「メディアセンター」がサミット終了後に解体されるということも、私は昨日知ったのですが、私が見た限りのテレビのニュースでは扱われていませんでした。カナダのジャスティン・トルドー首相が44歳でイタリアのマッテオ・レンツィ首相が41歳という若さであることにも驚くのですが、日本では例えば小泉進次郎さんが数年後に首相になるような感じなのかなと考えると、若い人が首相になる日も、女性が首相になる日も、日本の政界にはまだ来ないのかもしれないなと思いました。

ともかく、昨日のオバマ大統領の広島訪問と演説は、厳粛で、被爆者や戦争の犠牲者への思いやりのあるものに思えましたし、とても良かったです。オバマ大統領は、原爆の投下を命じたトルーマン元大統領から数えて11人目の、第44代の大統領ということなのですが、その歴史の重さもあるような気がしました。「核兵器禁止条約」に締結をする日は来るでしょうか。核兵器の無い世界、核武装がなされない世界、暴力や殺人や戦争のない世界を実現するための勇気が、世界各国で、アメリカだけではなく「被爆国(被曝国)」である日本においても、これからは試されていくのかもしれないなと思いました。
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