「世にも奇妙な物語‘16 春の特別編」

フジテレビの「土曜プレミアム」で放送されていた「世にも奇妙な物語‘16 春の特別編」を見ました。

テレビ朝日のドラマ特別企画「ゴールドウーマン」とも重なっていたのですが、放送時間には恒例の「世にも奇妙な物語」を見ることにしました。

夜9時から11時10分頃まで放送されていた2時間と少しのオムニバスドラマだったのですが、今回は4作品でした。

最初の「美人税」は、ある日の国会で美人の女性に税金を課すことが決められた日本の会社員の貴島愛子(佐々木希さん)が、税率に関わる美の基準に振り回されていくという話でした。原案は加藤公平さん、脚本は高山直也さん、演出は西坂瑞城さんでした。

次の「夢見る機械」は、漫画家を志しながら工場でアルバイトをする日々を送っていたある日、両親や工場長や街行く会社員たちがロボットになっていることに気付いた野間崎健二(窪田正孝さん)が、交際相手の稲葉慶子(石橋杏奈さん)に教えられた「ユートピア配給会社」を訪れ、夢を見続けるために現実を捨てた家族と対面する、という話でした。原作は、諸星大二郎さんの『夢見る機械』だそうです。脚本は高山直也さん、演出は松木創さんでした。

その次の「通いの軍隊」は、日本からの独立を計り、政府軍と戦うこととなった「ニュー・イバラキ」の、武器を販売する会社の営業部の前島啓一郎(西島秀俊さん)が、不具合のあったライフル銃を納品したことを戦地の政府軍に謝りに行くことになったことから、目先の給料の高さと定時で帰ることのできる戦地の楽しさに惹かれて兵士に志願し、次第に本当の戦闘に巻き込まれていくようになる、という話でした。原作は筒井康隆さんの『通いの軍隊』だそうです。脚本は徳尾浩司さん、演出は佐藤祐市さんでした。

最後の「クイズのおっさん」は、福澤朗さん司会のクイズ番組に参加して優勝し、賞金の100万円と、副賞として「クイズ一年分」を贈られることになった営業成績の悪い会社員の古賀三郎(高橋一生さん)が、謎のクイズのおっさん(松重豊さん)につきまとわれているうちに、晴れの日も雨の日も朝も夜もクイズを出し続けるだけでありながら誠実な人物でもあるクイズのおっさんに不思議な友情を感じるようになっていく話でした。原作は、竹本友二さんの『おっさんの宴』だそうです。脚本は宇山佳佑さん、演出は石川淳一さんでした。

今回の4作品は、国に徴収される税金や女性差別の話だったり、夢の叶わない現実から逃避をする話だったり、軍需産業や徴兵制の話だったり、コミュニケーションが苦手な人の話だったり、そのような点では、社会派の作品が集められていたのかなと思います。

でも、何というか、私としては、今回の4作品をいまいち面白く思うことができませんでした。決して酷かったというのではないですし、「世にも奇妙な物語」の作品としてではなく、普通のオムニバスドラマだと考えるなら、それなりには楽しかったのかもしれないのですが、約30分ずつの短編ドラマとして、今回の物語をあまり「世にも奇妙な物語」らしく思うことができませんでした。

「美人税」や「夢見る機械」や「通いの軍隊」の物語の設定や展開に、新鮮さがなかったようにも思えてしまいました。昔に見ていたなら、あるいは新鮮に感じることもできたかもしれないのですが、例えば「美人」が女性だけのものになっているところや、美人の女性は得をしているのではないかとかいうような話題も、サラリーマン(会社員)を軍隊の兵士と重ねて見るところも、「ユートピア配給会社」の衝撃に弱過ぎるロボットや夢を見せる機械の作りも、私には昔風に思えてしまいました。

最後の「クイズのおっさん」の古賀さんとおっさんの一年間の不思議な友情の場面は良かったと思うのですが、古賀さんが次のクイズ番組の優勝者に嫉妬心?を感じて終わるというのは、よく分からないように思いました。

約2時間で4作品というのも、オムニバスドラマの「世にも奇妙な物語」としては、少ないように思いました。これまでのスペシャルの時のように、5作品のほうが良かったのではないかと思います。

良かったように思えたのは、「理想郷」と訳される「ユートピア」について、トマス・モアの『ユートピア』で広まった「ユートピア」という言葉には「管理社会」の意味合いが強い、というようなことがストーリーテラーのタモリさんの場面で言われていたところです。

よく掛け軸の絵に描かれいる「桃源郷」こそ、本当に自由な理想郷なのだろうと思います。

エンドロールでは、出演者たちが実は「ユートピア配給会社」のロボットだった、というような映像が流れていました。この部分も、私には、いまいち面白く思うことができませんでした。

それでも、私は「世にも奇妙な物語」を好きなので、毎回それなりに楽しみにして見ています。次の「世にも奇妙な物語」が夏になるのか秋になるのか分かりませんが、今度はもう少し「世にも奇妙な物語」らしく思えるような作品が混ざっているといいなと思いました。


ところで、この「世にも奇妙な物語‘16 春の特別編」を見た後、途中からなのですが、ETV特集の「水俣病 魂の声を聞く~公式確認から60年~」を見ました。

熊本の水俣病を引き起こした加害企業のチッソの社員で労働組合のリーダーだった81歳の岡本達明さんは、40年間に500人以上の証言を集め、『水俣病の民衆史』という全6巻の本にまとめて、昨年出版したそうです。

番組の中で流れていた、水俣病が公害と認定された当時の映像には、当時の島田社長(番組では特に言われていなかったのですが、江頭豊社長の後任の社長だそうです)の会見場に直接訴えに来ていた患者団体の一人の女性の姿があったのですが、その女性が、お金は要らない、お金ではなくて命がほしい、身体がほしい、と島田社長に強く訴えていた言葉が印象的でした。

岡本さんは、地獄を見てきた人間たち(患者たち)は「人間」として話すけれど、島田社長たちは「組織の人間」として話すから、交渉の場で企業の幹部たちと患者たちが対等に話したことはこれまでないのではないか、という意味のことを話していて、それを聞いて、本当にそうかもしれないと思いました。

患者の63歳の渡辺栄さんは、お金ではなくて身体がほしいと言ったのにお金で解決されてしまったと、チッソからの補償金を受け取って、そのお金で家族で暮らす家を建てたということを、とても後悔していました。今は錆びている海辺の家は、昔は螺旋階段が屋上まで続く「御殿」だったそうですが、水俣病患者ではない周囲の人たちからは、「奇病御殿」と揶揄されたり、お金をもらっていいねと嫌味を言われたりしていたそうです。

昨夜の特集を見ていて、2011年の東日本大震災の時の、東京電力福島第一原子力発電所の爆発事故の場合とも、少し似ているように思いました。熊本や新潟の水俣病は工場の排水にメチル水銀が含まれていたことで起きたもので、放射性物質が空気中や海に放出された福島の原発事故は「公害」とはされていないかもしれませんが、責任の所在が不明瞭にされる公害の問題について(日本では71年前の戦争の日本政府側の責任の所在も不明瞭のままですが)、お金での解決策によって被害者の訴えの収束が計られるということは、とても怖いことなのだと思います。そして、「加害企業」となった企業を様々な事情から受け入れ続けなければいけないという現実もまた大変なことであるように思いました。
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