映画「レ・ミゼラブル」(2012年)

NHKのBSプレミアムで放送されていた、2012年に公開されたイギリスの映画「レ・ミゼラブル」を見ました。

映画の原作は、ヴィクトル・ユゴーの小説『レ・ミゼラブル』を基にした有名なミュージカル作品の「レ・ミゼラブル」ということでした。

私はずっと昔に、帝国劇場で「レ・ミゼラブル」のミュージカルを見たことがあります。その時には、登場人物たちによって歌われていた音楽は好きに思えたのですが、厳格な警察官のジャベールに追われる元囚人で盗人から市長になったジャン・バルジャンを主人公としていながら、途中からフランスの“革命”やコゼットたちの恋愛が盛り込まれていく物語全体のことを、いまいちよく分からずに思えていたような気もします。昔のことなのでうろ覚えなのですが、そのような印象がありました。

そうして一度見ただけで、それからこのミュージカル作品を見に行っていなかったので、公開当時人気のあったこの映画の「レ・ミゼラブル」が放送されると知り、私も見るのを楽しみにしていました。

放送されていたのは、吹き替えではない、日本語の字幕の付いた映画です。

主な登場人物は、貧しい妹の子供のために1個のパンを盗んで19年間投獄され仮釈放された元囚人の主人公のジャン・バルジャン(ヒュー・ジャックマンさん)、銀食器を盗んだジャン・バルジャンを救い銀の燭台を渡す教会の司教(コルム・ウィルキンソンさん)、逃亡したジャン・バルジャンを追いかける警察官のジャベール(ラッセル・クロウさん)、市長になったジャン・バルジャンが経営する工場の工場長の嫌がらせでクビになり一人娘のコゼット(イザベル・アレンさん)を育てるために娼婦に身をやつしたファンティーヌ(アン・ハサウェイさん)、ジャン・バルジャンの養女となったコゼット(アマンダ・サイフリッドさん)、ファンティーヌから一時コゼットを預かり使用人としていた宿屋の主人で詐欺師のテナルディエ(サシャ・バロン・コーエンさん)、夫と一緒に詐欺を働く強欲なテナルディエ夫人(ヘレナ・ボナム=カーターさん)、エナルディエ夫妻の一人娘のエポニーヌ(サマンサ・バークスさん)、祖父の家が裕福ながら革命への参加を決意していたマリウス・ポンメルシー(エディ・レッドメインさん)、社会を変えるために革命を起こそうとする学生運動のリーダーのアンジョルラス(アーロン・トヴェイトさん)、革命の仲間として学生たちと一緒に戦う最年少のガブローシュ少年(ダニエル・ハトルストーンさん)でした。

ジャン・バルジャンが19年間の服役を終えた1815年から、「愛」に生きたジャン・バルジャンが養女のコゼットが幸せになるのを見届けて亡くなるまでの約17年か18年間の物語でした。

約3時間の映画だったので、元囚人のジャン・バルジャンと警察官のジャベールの対決の構図は分かりやすいものなのですが、その間にもたくさんの登場人物がいて、その様々な感情がミュージカルの音楽の台詞で直接的に伝えられるので、特にパリの革命の展開の中にコゼットとマリウスの恋愛要素が盛り込まれていく後半は、映画を見ながら少し疲れてきてしまいました。

映画でミュージカル作品を見るということは、映像を見ながら音楽を聴き続けるのと同じことなのではないかと思います。何というか、劇場で観るミュージカル作品と違い、その場にいるという空気感かないので、双方向的ではなく、映画を見ている私に一方的に複数の登場人物の感情が流れ込んでくるというような感じでもあったような気がします。

普通に台詞を話す映画やドラマも一方的なのかもしれないのですが、有名な「レ・ミゼラブル」のミュージカル作品の音楽の迫力というか、完成度の高さは、やはりすごいです。

私はあまりミュージカル映画を見たことがなく、そのためでもあるかもしれないのですが、私が見たいくつかのミュージカル映画、例えば「オズの魔法使」(「魔法使い」ではないようです)や「サウンド・オブ・ミュージック」、マーク・レスターさん主演の「オリバー!」、「オペラ座の怪人」、「魔法にかけられて」などの作品を見た時と、今回見た「レ・ミゼラブル」とでは、ミュージカル映画としての印象が異なっていたように思います。

あるいは、物語の内容の重さがそう思わせているのかもしれません。罪と正義、法と裁き、支配者と被支配者、抜け出すことのできない生活の貧しさ、恋愛の成就と失恋、俗物と聖者、そのようなものが入り混じった人生の全部を一気に集中して描こうとするような重厚さが、ミュージカルらしい音楽の台詞によって、映画を見ている私に迫ってきたのだと思います。

後半は少し気持ちが疲れてしまったのですが、それでも、コゼットの優しい父親になっていったジャン・バルジャンのヒュー・ジャックマンさんや、“法の番人”であり続けることに迷い始めるジャベールのラッセル・クロウさんの歌声はすばらしかったですし、私としては、マリウスを好きだった心の優しいエポニーヌを演じていたサマンサ・バークスさんの歌声も美しかったように思いました。

辛い思いをして生きながら、でも明日がある、明日が来れば新しい未来がやって来る、と思って一日一日を生きる民衆の歌は、力強くて感動的で、生命力に溢れているように思えました。でも、映画や劇の中ではない、実際の現実には、社会の貧富の差はなくなっていないですし、支配する者と支配されるものという構図は至るところに存在し続けています。

この「レ・ミゼラブル」の映画を見ながら、先日のドキュメンタリー番組で知ったフランスの「立ち上がる夜」や香港の「雨傘運動」、5年ほど前の「アラブの春や、27年前の「天安門事件」などのことを思い出し、圧制政治に立ち向かって戦う若者たちはその時々に現れても、世の中がなかなか良い方向には変わっていかないということに、少し寂しいような気持ちにもなりました。

でも、とにかく、2012年のトム・フーパー監督の映画「レ・ミゼラブル」は、とても良い映画だったように思います。人間の嫌なところや怖いところもたくさん描かれているのですが、美しいところも描かれていました。何よりも、キリスト教的な「愛」、神様のいるところに愛があり、愛のあるところに神様がいるというようなことを伝える映画でもあったのかなと思いました。
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