伊方原発とショアハム原発の特集

日本テレビの深夜の「NNNドキュメント'16」の「3・11大震災シリーズ(74) 避難計画で原発やめました 違いは何だ?伊方と米・ショアハム」という約30分の特集を見ました。

政府が再稼働しようとしている四国電力の伊方原発は、愛媛県の佐田岬半島の西宇和郡にある原子力発電所で、1号機は廃炉とすることが決まったそうなのですが、2号機と3号機に関しては、政府と四国電力が今年中に再稼働をしようとしているそうです。

アメリカには、マンハッタンから車で1時間ほどのロングアイランド島という島の、ニューヨーク州のサフォーク郡に、ショアハム原子力発電所という、2011年の3月に水素爆発して炉心溶融した福島第一原子力発電所と同じ型の原発があるそうなのです。しかし、1972年頃に建設が始まり1984年に完成したショアハム原子力発電所は、1979年のスリーマイル島の原子力発電所の事故や、1986年のチェルノブイリ原子力発電所の事故を受けて住民が反対し、一度も使われることのないまま廃炉が決まった原発なのだそうです。

私はこのショアハム原発のことも知らなかったのですが、原発が島の途中に建設されていて、事故が起きた時に島の先端の側(陸から遠い側)の住民たちの避難が遅れたり取り残されたりする可能性があるというところが、とてもよく似ているということでした。地図で見ると、確かによく似ています。ただ、アメリカのロングアイランド島のほうが日本の佐田岬半島よりも平らかで広く、ショアハム原発のほうは原発から住民の家や避難に使う道路までの距離が16kmあるのに対して、急斜面の場所の多い細長い佐田岬半島の伊方原発のほうは1kmしかないそうです。

ショアハム原発と伊方原発の違いは、避難計画書にありました。地元のストーニーブルック大学の図書館にも保管されていたショアハム原発の「放射線緊急事態避難計画書」には、事故が起きた際に、50%、90%、100%の住民が何時間何分で避難できるかを細かく計算したものが掲載されていました。

しかし、日本の伊方原発の避難計画(「原子力災害時における円滑な避難対応について」)は、津波は来ないと想定して原発の西側の住民は港から船で逃げる、東側の住民はバスで逃げる、というようなもので、バスは原発のすぐそばの道を通るそうなのですが、県とバス会社との間で交わされている「覚書」によると、運転手が1ミリシーベルト以上被曝する場合には派遣しないことになっているそうで、福島第一原子力発電所のような放射性物質が放出される大事故が起きた場合には、バスは来ないのだそうです。その避難計画書には、最悪のケースの場合にどのように住民を救助するのかは書かれていないそうです。

日本政府や自治体や電力会社は、何か大事故があった際にはまた「想定外だった」で済まそうとするのかもしれません。原子力規制委員会の田中俊一委員長は、科学技術による判断基準に基づいて判断している、別に安全上の問題が起こるというわけではないというようなことを話していましたし、ジャーナリストの倉澤治雄さんが取材をしていた愛媛県の中村知事は、住民が半島に缶詰にされることは考えていない、避難しなくても済む状況を作ることが大事だと考えていると薄く笑いながら答えていました。避難計画は機能すると思うかと倉澤さんが訊ねると、愛媛県知事は、ある程度できると思うが100%かは分からないとしか言いようがない、と答えていました。

アメリカの原子力規制員会の元委員長のグレゴリー・ヤツコさんは、立地自治体が避難計画を実行できない原発は閉鎖しなければいけないと話していたのですが、本当にそうだなと思いました。原発事故があった時の住民の避難がその場対応のものになるというのは、怖いことですし、残酷なことだと思います。

ショアハム原発の場合は、1983年に住民たちが、どのような計画も住民の健康と安全を守ることはできないと反対し、当時のニューヨーク州の知事もそのことを認めて、約150万人の住民が向こう30年間電力会社の損失を負担するということで決着がついたのだそうです。島の住民の方の電力会社からの明細書にはその金額が書かれていた書かれていたのですが、毎月支払うのは電気代の3%だということでした。ロングアイランド島の半分の約120万人の住民が2026年頃までに支払うという予定なのだそうです。

ショアハム原発のあるロングアイランド島と違い、伊方原発のある佐田岬半島から沖へ6kmの伊予灘の下には、高知大学の地震地質学の岡村眞教授たちの調査によって、4本の活断層があることが分かったそうです。伊方原発は、大きな地震来ないだろうという設定で1972年に設置が決まった原発で、その頃にはその地域が中央構造線活断層とはされていなかったということなのですが、今はそうであることがはっきりと分かっているのですし、岡村教授は、自分たちは10万円の予算で断層があることが分かったのになぜ電力会社は分からないのか、そんな会社が安全だ安全だと言っても全く信用できないと話していました。本当にそうだと思いました。

中央構造線活断層は世界一級の360kmもある活断層ということで、原子力災害専門家の松野元さんは、その大きな活断層に短い活断層の研究結果を当てはめていいのかと批判していました。原子力発電所の新規制基準には福島第一原子力発電所の事故のことは反映されていないそうで、事故原因が特定されない限り日本の原子力の将来はないと話していました。

原発が作られた昔には、事故は起きても100万年に1回という目標が設定されていたそうなのですが、実際には50年に3回も大きな事故が起きていて、住民が被曝しています。

アメリカの原発関連の法律では、避難計画の実効性が認められないと運転することができないということになっているそうなのですが、日本の法律では、避難計画は再稼働の法的要因になっていないそうです。原発の近くで暮らす人々を避難させるための自治体や電力会社の計画が不十分であっても、原発を稼働することができるようになっているのだそうです。

特集のタイトルは「避難計画で原発やめました 違いは何だ?伊方と米・ショアハム」ですが、再稼働予定のある日本の伊方原発の場合と、廃炉になったアメリカのショアハム原発の場合との違いは、ショアハム原発は稼働する前に住民の反対運動が認められて中止になったということもあるのかもしれませんが、政府や自治体や電力会社の住民の安全を守るということに対する意識の違いの他に、住民の方の覚悟の違いもあるのかなと思いました。

原発を廃炉にするかどうかの話題が報じられる時にはいつも、原発の廃炉に反対するというか、原発の再稼働に賛成する方たちの意見として、原発関連施設で働いている地元の人の仕事がなくなるとか、原発施設の作業員の方がいなくなるとその方たちを相手に商売をしている人の仕事がなくなるというようなことが言われているように思うのですが(沖縄の米軍基地の場合にも言われていることのように思いますが)、これは本当なのでしょうか。その場所で暮らしていない私には分からないことがたくさんあるのだと思いますが、でも、廃炉になっては困ると思っている地元の方は、見えない未来の大事故で土地や命を失うことになるかもしれないことには、困らないのでしょうか。

その土地で暮らしている方の多くが原発に反対するなら、いくら安倍政権や知事や電力会社が再稼働を進めようとしても中止になるのではないかと思うのですが、どうしてもそうはならないのでしょうか。

福島第一原子力発電所で大事故が起き、事故の原因も特定されず、経緯も公表されず、事故後の放射性物質の汚染の問題やその地域の街としての復活の問題も解決されずに残っているのに、それでも、原発は稼働していたほうがいいと思う人が原発の設置されている地域の人々には多いのでしょうか。それとも、反対意見が出ていることを政府に無視され続けて、強行されているのでしょうか。原発の稼働に賛成の方の中には、原発に反対している方が目に見えない放射性物質による健康被害を心配したり怖いと思ったりしていることを、ただの想像だとか妄想だと思っている方もいるそうです。

報道によると、伊方原発3号機の1次冷却水ポンプで水漏れが起きるトラブルがあり、「軸封部」の部品が耐圧検査の際に変形していたことが分かったそうですが、再稼働に向けての準備を進めている四国電力の担当者は、重大事故につながるようなトラブルではない、と話しているそうです。福井県にある、日本原子力研究開発機構の高速増殖炉の「もんじゅ」も、政府は使い続けようとしているそうですが、何か大きな事故や事件が起きた時にまた想定外だったというようなことを言うのではないかと思います。

毎回欠かさず見ることができているというわけではないのですが、「NNNドキュメント'16」は、日本テレビの良心であるように思います(フジテレビの「新・週刊フジテレビ批評」も、フジテレビの良心だと思います)。良い特集でした。私も伊方原発とショアハム原発のことを少しだけでも知ることができて良かったです。

ところで、これは日本テレビのことではないのですが、昨夜のTBSの「NEWS23」に新しく雨宮塔子アナウンサーが加わっていました。昨年の「報道の日」にも出演していましたが、昔、TBSでは「どうぶつ奇想天外!」という動物番組が放送されていて、うろ覚えではあるのですが、その番組で見ていた印象があります。「NEWS23」は良い報道番組だと思うのですが、それでも、他の多くのニュース番組と同じように東京都知事選挙の立候補者を“主な3人”しか伝えていないところはやはり残念に思います。仮に立候補者の人数が最多だから公平に紹介することができないということなのだとしても、主要な人はせめて5人か6人くらいにして紹介したほうがいいのではないかと思います。
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