「ラスト・アタック~引き裂かれた島の記憶~」

昨日は71年目の終戦の日でした。NHKのBSプレミアムでは、終戦企画ドラマ「ラスト・アタック~引き裂かれた島の記憶~」が放送されていました。夜9時からの1時間半のドラマでした。

内容を知らずに見始めたのですが、とても良かったです。

沖縄の伊平屋島という離島を舞台にした、実話を基にしたドラマでした。

1945年の6月3日、アメリカ陸軍の兵士たちを乗せた船が伊平屋島へ向かっていました。陸軍第726水陸両用トラクター大隊の一等兵の20歳のジェームス・ブリィーディンガイザー(アレッサンドロ・ダマトさん)と21歳のアンドリュー・バーストゥ(セルゲイ・クワエフさん)は、日本兵と島民による激しい抵抗が予想されると言われていた島へ上陸したのですが、抵抗は全くなく、わずか3時間で島を制圧する作戦は終了したということでした。

その島には、約1か月前の5月10日、奄美大島の古仁屋基地から飛び立ち、米軍に撃墜されて海に落ちた、海軍4航戦641空「瑞雲隊」所属の少尉の飯井敏雄(大野拓朗さん)がいました。22歳の飯井さんは、意識を失って海に落ちていたところを島の人に助けられ、区長の東江慶栄(竹中直人さん)の家で治療を受けて、島民として暮らしていました。

伊平屋島は、戦時下にあって、戦争から忘れられているような平和な島でした。飯井さん自身も戦争から切り離されたように暮らしていたのですが、6月3日、米兵が上陸し、飯井さんは東江さんたちを連れて洞窟に隠れました。拳銃を持っていた飯井さんは、米兵を撃ちに行こうと考えていたのですが、飯井さんが日本兵として出て行ったら島民が殺されてしまう、桃太郎になったつもりで軍人を辞めて私の息子になってほしいと、東江さんに必死に止められました。その時、東江さんに掴まえられながら洞窟を出ようか迷っていた飯井さんは、手元にバナナが落ちているのを見つけ、母親と一緒に雪の上にバナナの絵を描いていた時のことを思い出していました。母親のことを思い出した飯井さんは、洞窟内に女性や子供もいることを今知ったかのように思い出し、東江さんの息子になると決め、拳銃を洞窟の砂の中へ埋めて、島民を守るために、島民としてみんなと一緒に米兵に投降しました。

“日本兵狩り”を始めた米兵に対して飯井さんが声を出して名前を名乗ることができずにいたところ、東江さんは長男は生まれた時から知恵が少し足りないのですと機転を利かせて助け、飯井さんは、東江さんが咄嗟に付けた「東江太郎」という名前で暮らしていくことになりました。

太郎さんになった飯井さんは、海の水を汲む島の仕事を上手くできないでいる中、米兵の残飯を集めて豚の餌にするという仕事を命じられることになりました。英語を理解することはできても伊平屋島の言葉を話すことができなかった太郎さんは、島民たちを守るために沈黙を貫くことを決め、「トージョー」というあだ名を付けられて米兵にバカにされたりすることにも耐え続けていたのですが、その様子をジェームスさんと見ていたアンドリューさんは、佇まいが美しいと、太郎さんに他の島民とは違う何かを感じ取っていたようでした。

太郎さんのほうでも、アンドリューさんに何か不思議な魅力を感じるようになっていました。アンドリューさんは、トージョーに興味を持つようになっていました。“日本兵狩り”から太郎さんを助けたアンドリューさんは、英語を上手に話すことができるトージョーが戦争前には機械工学を勉強していたという共通点を見つけていたのですが、太郎さんの飯井さんは、仲間を殺したのはあなたたちだと、米兵全体を憎んでいました。

島民は米兵が自分たちに対して敵対的ではないと分かって来ると、少しずつ心を開いていったようでした。米兵を家に招待して食事をふるまったり、お米作りを手伝いに来た米兵と遊んだりしていました。急に態度を変える島民の様子に戸惑う太郎さんに、東江さんは、この島の人たちは喜んでいる人がいたら一緒に喜び、悲しんでいる人がいたら一緒に泣くのだということを話していました。アンドリューさんは、島民が意味もなく笑うのは好きになれないと言うジェームスさんに、風邪を引いた子供が自分を心配する母親に笑って見せるという例を出して、笑うのは相手のことが分からなくて怖いからだと言い、日本人のことをもっと知りたいと話していました。

戦禍を逃れるために沖縄本島から一人で伊平屋島に来たという新垣安子(藤本泉さん)は、飯井さんのことを「隊長さん」と呼び、本当の家族を心配しながら島で暮らしていて、ある時、米兵の軍医と結婚式を挙げました。島民として暮らしていた田村というもう一人の日本兵は、島の女性を助けようと?結婚式の夜、軍医を殴りに行ったのですが、安子さんが軍医をかばったため、田村さんは引き上げることにしたのですが、そばで見ていた飯井さんの太郎さんは、米兵と結婚しようとしていた島民の女性が安子さんであったことに戸惑っていました。

太郎さんが寝床からいなくなっていることに気付いた東江さんは、洞窟に一人で座っていた太郎さんを見つけると、掘り出されていた拳銃を砂に埋めて、太郎さんを家に連れて帰りました。

島の外の出来事を知ろうとラジオを点けて英語の放送を聞いていた太郎さんは、アンドリューさんとジェームスさんに見つかり、英語で少し話すようになっていました。3人で浜へ出かけたアンドリューさんは、浜に流れ着いた日本兵の鉢巻きを洗って白い砂浜に埋めていました。ジェームスさんは、トージョーが日本兵だと知って少し驚いていたのですが、その相棒のアンドリューさんは、なぜ戦争に参加することにしたのかと尋ね、祖母や母や妹を守るために戦わなければならない、自分の命を捨てることで残された人たちの生活が良くなるならそれでいいということを答える太郎さんに、命より大切なものなどないと教えていました。少し前まで軍人として生きてきた太郎さんは、考えたことがなかったとはっとしていました。

沖縄での組織的な戦闘が終わり、8月15日には玉音放送が流れました。島民と敵だったアメリカ兵との交流の行われている平和な島で過ごす中で、太郎さんは、このまま戦争が終わるのだろうかと、元軍人として何か虚しいような気持にもなっていたようなのですが、その夜、「ラスト・アタック」が突然島に来たのでした。

玉音放送から5時間後の夕方、日没を過ぎた頃、日本軍の特攻隊の飛行機が突然島に突っ込むように飛んできて、ジェームスさんと一緒に浜辺で帰国後のことを話していたアンドリューさんの命を奪いました。相棒のジェームスさんによると、特攻の飛行機が突然自分に向かってくるのに気付いたアンドリューさんは、ただぼーっと立っていたのだそうです。突然のことだったので、避けることができなかったようでした。

「ラスト・アタック」は、宇垣纏海軍中将の率いた「最期の特攻」のことでした。アンドリューさんを殺した飛行機に乗っていたのが誰であったのかということは描かれていなかったように思うのですが、大分基地から飛び立つ前の宇垣中将の写真が出ていました。そして、アメリカ陸軍の資料には、「最後の特攻」によってアンドリューさんが死亡したことが記されていました。

太郎さんは、日本軍の特攻隊の飛行機が島に墜落して炎上するのを見て、戦争はまだ終わっていなかったと、少し興奮するような気持になっていたようでした。しかし、翌朝、米兵の宿舎の前を通りかかり、島の子供の作った蛇のおもちゃを握ったままの血塗れの腕を見て、アンドリューさんが亡くなったことを知った太郎さんは、飛行機の炎上を見て興奮した気持ちになった自分のことを後悔して恥じていました。

ジェームスさんは、帰る前に、「トージョー」の太郎さんを呼び止めて、アンドリューさんの手紙を渡しました。太郎さんは手紙を読むことができないまま、東江さんにずっとこの島で暮らしてほしいと頼まれて、一生この島で暮らすと約束していました。しかし、その後、島を出た人が、太郎さんの素性を米兵に話してしまったようでした。

太郎さんは、海軍少尉の「飯島敏雄」を迎えに来たアメリカ兵に連れられて、島を出ることになりました。浜にいた島民たちは、行かないで、と飯井さんを引き留めようとしたのですが、すると、おばあが飯井さんのほうへ進み、懸け橋になってほしいと飯井さんを抱きしめて、「マブイ マギサ チュラサ シマサ」と伝えました。東江さんは島民たちの後ろの方から、米兵と歩いて行く飯井さんを見送っていました。

沖縄本土の捕虜収容所に入れられ、取り調べを受けた飯井さんは、戦犯ではないと認められて収容所を出されることになったそうです。本土へ渡る船の中で、戦死せずに生き残った自分について迷っていた飯井さんは、シャツのポケットに入れていたアンドリューさんからの手紙に気付き、開いて読み始めました。自分たちが戦争時代に生まれたのは偶然にすぎない、自分の存在について考えながら生きて行かなければいけないというようなことが手紙は書かれていたのですが、手紙は書きかけで終わっていました。手紙を読んだ飯井さんは、生きていく決心をしたようでした。

ジェームスさんは、帰国後に復学し、オハイオ州の高校の数学の教師となったそうで、今年の、2016年の1月に、92歳で亡くなったそうです。飯井さんは、東京で仕事を見つけて結婚し、35年後、島民たちとの約束を守って、伊平屋島へ移住したそうです。死んだ仲間たちが寂しくならないように、迷わないようにと、夜の間中家の灯りをつけていたのだそうです。平成26年(2014年)の2月に、91歳で亡くなったそうです。

本編の終わった最後の画面に、島を出る飯井さんにおばあが伝えていた、伊平屋島の呪文のような、魔法の言葉のような「マブイ マギサ チュラサ シマサ」の意味が書かれていたのですが、それは「あなたの心が美しくて大きな島のようでありますように」という意味の言葉でした。

脚本と演出は、上野潤也さんでした。

静かで、繊細で、とても丁寧に作られたドラマであったように思います。

大野拓朗さんの演じる飯井さん、竹中直人さんの演じる東江さん、アレッサンドロ・ダマトさんの演じるジェームスさん、セルゲイ・クワエフさんの演じるアンドリューさんなどの俳優さんが良かったということもあると思うのですが、脚本も、映像も、音楽も良かったですし、映画のようにも思えました。大野拓朗さんの飯井さんを見ていて、何となくなのですが、ムリーリョの「蚤をとる少年」の絵を少し思い出しました。

島の風景もとてもきれいでした。青くて透明な海も、白い砂浜も、青い空も、緑の森も、黄色の田畑も、鮮やかに輝いていました。戦時下にあって、米軍の上陸を受けながらも、奇跡のような平和を保っていた伊平屋島のような島があったことを、私は知りませんでした。

島民と米兵の異文化交流、飯井さんとアンドリューさんの魂の交流とも言えるような一定の距離感を保った不思議な友情、海に流れて来る日本兵の遺品、島の平和な日常の風景、家族を沖縄本土に残して一人で島へ来たという女性の葛藤、玉音放送の流れた後の突然の特攻によって断たれた優しいアンドリューさんの人生、島民として暮らしながら軍人であることを本当には辞めることができていなかった自分を省みる飯井さんの決意、飯井さんを見送る島民の思いなどが、全て尊重されているというか、大切な出来事として描かれていたような気がします。

美しい島での体験から生き直すことができた飯井さんとジェームスさんは、戦後に再会することはなかったのでしょうか。飯井さんが35年後に島へ移住した時に、東江さんとも再会することができたのでしょうか。アメリカの軍医と結婚式を挙げた安子さんが終戦後どのように暮らしたのかということも、ドラマを見終わって少し気になりました。

実話を基にしたドキュメンタリードラマということで、ところどころに実際の当時の映像や資料が使われていたのですが、ドラマとドキュメンタリーの部分が別になっているという感じではなく、ちゃんとドラマの一部になっていたように思います。

玉音放送後に部下を連れて飛び立った宇垣中将の話は、以前テレビ番組で特集されているのを見たことがあったのですが、その「最後の特攻」の飛行機が墜落した先の島の話は、私は今回のドラマで初めて知りました。日本への進駐を進めようとしていたアメリカ側がこの事件のことを問題視しないようにしていたのかもしれません。でも、日本軍の特攻で亡くなったアメリカ兵の方がいたということは、埋もれさせていてはいけない事実なのだと思いました。

ジェームスさんがアンドリューさんに「詩人にでもなるつもりか?」と話している場面がありましたが、詩のような物語であるようにも思いました。

美しくて優しい、終戦企画のドラマだったように思います。私もこのドラマを見ることができて良かったです。
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