映画「銀座カンカン娘」

先日のBS日テレで放送されていた、映画「銀座カンカン娘」を見ました。

「銀座カンカン娘」の歌は聴いたことがあって知っていたのですが、映画を見たことはなかったので、放送されると知って見るのを楽しみにしていました。放送時間に見ることができなかったので、録画をしておいたものを後で見たのですが、長い映画ではなく、1時間10分ほどの作品でした。

終戦(敗戦)から4年後の、1949年の8月16日に公開された、東宝の白黒の映画でした。

落語家を引退した新笑(五代目古今亭志ん生さん)と妻のおだい(浦辺粂子さん)は、会社に合唱団を作った甥の武助(灰田勝彦さん)と小学生の孫のヒヨ子(服部早苗さん)と武助が拾って来た子犬のポチと暮らしていたのですが、その家の2階の部屋には、新笑さんの恩人の娘で画家を志しているお秋(高峰秀子さん)と、その親友の声楽家を志すお春(笠置シヅ子さん)が居候をしていました。

貯金箱に入っていたのは十銭で、絵具を買うお金もピアノを買うお金も洋服を買うお金もない秋さんと春さんは、おだいに頼まれてよく懐いているポチを捨てに行こうとして捨てられずにいた秋さんが犬を探している監督(山室耕さん)の映画の撮影現場に遭遇して参加することになり、噴水の池に投げ込まれる女優の代役として秋さんを紹介したことで、千円という出演料を得たのですが、そこで映画のエキストラとして参加していた歌手の白井哲夫(岸井明さん)と出会い、お金を稼ぐために銀座の繁華街のバーやクラブなどの飲食店で飛び込みで歌を披露するという流しの歌手の仕事を始めました。

お金は少しずつ溜まっていき、秋さんと春さんの衣装も少しずつきれいになっていきました。その矢先、高座に復帰をしようとしていた新笑さんは、大家から、月末までに十万円を支払わなければ家を出て行ってもらうと告げられてしまいました。そのことを知った秋さんと春さんは、稼いだお金を新笑さんに渡して使ってほしいと頼み、武助さんも経営方針の変わった会社をクビになったところだったので、自分たち3人の歌の仕事に武助さんも誘い、秋さんと武助さん、春さんと白井さんというコンビに分かれて、4人で活動をすることになりました。

ある夜のクラブで男性客に絡まれた秋さんを助けた武助さんは、秋さんと急速に親しくなりました。本当は強いのに、あのような男たちと命のやり取りはしたくないと、警官が来るまで不良客からの攻撃を受け続けて怪我をしてしまった武助さんを尊敬し始めた秋さんは、知人に誘われて東京を離れて田舎のほうで就職をすることになったという武助さんにプロポースされて、結婚することになりました。

高座に復帰した新笑さんのお祝いの席は、同時に秋さんと武助さんの結婚祝いの席になりました。新笑さんは、新婚旅行を兼ねてそのまま東京を離れる二人を祝福するため、自宅の居間に集まった十人ほどの前で噺を始め、見事な一席で二人を見送ったのでした。

このような物語でした。監督は島耕二さん、脚本は中田晴康さんと山本嘉次郎さんでした。

朗らかで、とても面白い作品でした。

ミュージカルコメディーということではないかもしれないのですが、たくさんの歌が使われていました。音楽の教科書に載っているような歌もあり、その替え歌もあって、高峰秀子さんの秋さん、笠置シヅ子さんの春さん、灰田勝彦さんの武助さん、岸井明さんの白井さんの歌声が伸びやかで、とても楽しかったです。

終戦から4年後の作品ということを、終戦から71年後の今から思うと、何だかすごいことのようにも思えるのですが、「芸術」という言葉に感激する秋さんと春さんの明るさには、4年前の戦争時代の陰気さを払拭しようとする勢いがあるようにも思えました。

ポチが秋さんを追いかける場面もかわいかったですし、小学生のヒヨ子さんが一緒に学校へ行こうと新笑さんを誘ったり、白井さんが歩く度に家が揺れて物が落ちて来るという細かいところも良かったです。

五代目古今亭志ん生さんの演じる新笑さんの一席で物語が終わるという、この映画の終わり方も見事であるように思えました。ご退屈さま、と新笑さんが言ったところで噺が終わってお開きになったのですが、当時の映画館で公開されていた時にも、お客さんたちは、寄席で落語を一席聴いた時のような感じになって、映画館から帰って行ったのかなと思いました。今ではこのような映画はないかもしれないのですが、当時の映画館の観客と映画作品との一体感のようなものが、何となく伝わってくる作品でもあったように思いました。

秋さんと春さんが参加することになった映画の撮影の行われていた場所は、おそらくなのですが、東京の赤坂の迎賓館のお庭です。

赤坂の迎賓館(迎賓館赤坂離宮)は、1909年(明治42年)にジョサイア・コンドルの弟子の建築家の片山東熊が紀州徳川家の江戸中屋敷の敷地の一部に東宮御所として建設した、ネオ・バロック様式のヨーロッパのお城のような豪華な建物です。2009年(平成21年)に、明治以降の建築物として初めて国宝に指定されたそうです。これまでは毎年夏に期間限定で公開されていたのですが、今年の4月から一年を通して有料で一般公開されることになりました。

数年前、私は母が応募していたものが当選したため、一度だけなのですが、一緒に見学に行ったことがあります。正門から真っ直ぐ歩いて中門を通る前庭の見学(これも以前は期間限定でした)には行ったことがあったのですが、本館と主庭にはその時初めて行きました。和風別館にはまだ行ったことがありません。東の間と西の間も、私が行った時には非公開でした。

その時の見学では、中央階段を歩くことはできなかったのですが、中央階段を上がったマーブル模様の柱の立つ場所の正面にある、2階の大ホールの朝日の間への入り口の横には、入り口を挟んで左右に分かれて、小磯良平さんの「絵画」と「音楽」をテーマにした大きな油絵が飾られていて、その作品が本当にとてもすてきでした。私には、小磯良平さんのその2枚の絵だけが何となく周辺のネオ・バロック様式的な装飾とは合っていないというか、そこからは少し浮いているようにも思えたのですが、ともかく単純に、清潔感のある、とても美しい絵でした。

あと、他に特に良かったのは、少し落ち着いた雰囲気の「花鳥の間」の壁に飾られていた、下絵を日本画家の渡辺省亭が描いた、涛川惣助の七宝焼です。赤坂の迎賓館の本館の見学へ行くことができることになった時、私が一番楽しみにしていたのはこの涛川惣助の七宝焼を見ることでした。柵が置かれていたので、間近で見ることができたというわけではなかったのですが、やはりとても美しい、七宝焼と知らなければ日本画のようにしか見えない、見事な無線七宝でした。並河靖之の有線七宝ではなく、涛川惣助の無線七宝が選ばれたのは、テーブルの座席から壁の作品を見た場合を考えてのことなのだそうです。

真夏のことだったので、本館の白い壁や階段や庭一面の白い石が眩しく、松の木の下以外にほとんど日陰のない主庭の見学は暑くて少し大変だったのですが、グリフィン(グリフォン)の像の口から水が噴き出す噴水は涼し気でした。

赤坂の迎賓館が今年の4月から通年で一般公開されるということになった時には、迎賓館の建物や装飾品そのものについても、また、東宮御所の敷地内であることについても、小学校が近いということについても、危険ではないのかなと、少し心配にも思えたのですが、今のところは大丈夫のようです。

映画の中で、子犬を連れている秋さんを見つけた映画の助監督(松尾文人さん)が入った背の高い門は、前庭の横にあった小さな門で、映画の撮影が行われていたのは、本館の前の主庭の噴水の前でした。小さな門を見た時には、どこかの公園かなくらいにしか思っていなかったのですが、庭の大きな石の柵の形や松の木を見て、もしかしたら迎賓館なのかなと思い始め、噴水と本館が一緒に映ったのを見て、赤坂の迎賓館だと分かりました。

「銀座カンカン娘」は1949年に公開された映画なので、もしかしたら、戦後の赤坂迎賓館の歴史の中の、国立国会図書館としても使われていたという頃に撮影されたものなのかもしれません。

迎賓館が撮影に使われたりするようなところも、まだ戦争孤児となった子供たちが町にたくさんいたらしい戦後4年の時代(今から67年前の時代)と今の時代との違いのように思えました。

「カンカン娘」の「カンカン」の意味はよく分からなかったのですが、戦後の街には「パンパン」と呼ばれる進駐軍を相手に娼婦の仕事をする女性たちがいたということなので(映画の中の新笑さんの落語の中にもその言葉が出ていました)、そのような世の中の在り方を拒否する意味を含む言葉だったのかもしれません。あるいは、秋さんと春さんは明るかったので、「カンカン照り」の「カンカン」でしょうか。

銀座で歌うことになった秋さんと春さんが腕にペンで入れ墨風の名前入りの猫の絵(腕を合わせると一匹の猫の顔になる感じでした)を描いていたのもかわいかったですし、ともかく、とても楽しくて、深く考えたなら暗くなってしまいそうでもある貧しい生活を明るく笑い飛ばすような良い映画でした。映画を見る前には「銀座カンカン娘」がこのような映画だとは少しも思っていなかったのですが、今回の放送で、私も見ることができて良かったです。

それから、映画のこととは関係のないことなのですが、今日は、秋篠宮さまと紀子さまご夫妻のご長男の悠仁さまの10歳のお誕生日です。赤坂御用地の秋篠宮邸の田んぼを散策されたと、報道で伝えられていました。田植えや野菜作りなど、自然と親しむ体験を重ねているそうです。悠仁さまがお生まれになってから10年経つのかと、少し不思議な気持ちにもなるのですが、悠仁さまがお元気そうで、良かったです。天皇陛下の「生前退位(譲位)」を巡って、政府は、今上天皇陛下の一代に限って認めるという「特別措置法」で対応し、女性天皇や女性宮家の問題は棚上げにしたまま考えないようにしようとしているらしいということが、昨日の報道で伝えられていましたが、政府与党や「有識者」の会議には、天皇陛下の先のお言葉をきちんと理解できて、素早く物事を考えることができる専門家の方に集まってほしいということを、また改めて思いました。
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