「ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子」最終回

フジテレビのドラマ「ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子」の最終回(第9話)を見ました。

ホテルの廊下で首を切りつけられた刑事の片岡啓造(高橋努さん)を介抱しようとした警視庁刑事部捜査第一課・厚田班の新人刑事の藤堂比奈子(波瑠さん)は、故郷の長野の町で暮らしていた高校生の頃の自分に「自分らしく人を殺せばいい」と進言して真新しい血の付いたナイフを渡してきた真壁永久(とわ、芦名星さん)と再会しました。

比奈子さんの先輩刑事の東海林泰久(横山裕さん)を気絶させて拉致した永久さんは、比奈子さんへの復讐を望む佐藤都夜(佐々木希さん)と東海林さんをある倉庫へ運び、手錠をかけた東海林さんを柱につなげました。目を覚ました東海林さんは、都夜さんに殺されそうになったのですが、東海林さんをすぐには殺したくない永久さんは都夜さんのほうをスタンガンで倒し、倉庫の前の庭で灯油をかけた都夜さんを焼死させてしまいました。

翌朝、連続殺人犯の永久さんは、木箱の中に揃えてあった、遺体の一部を名前の書かれたフィルムケースのようなものに入れた「コレクション」を東海林さんに見せました。新しいコレクションには、都夜さんの歯が収められていて、8歳の時に親元を離れて児童養護施設「永久の翼」に預けられていたという永久さんは、自分を虐待していた父親と母親、施設長の指の入ったケースを見せていました。人体入り動物殺傷事件の時に使われていた5人分の男性の遺体の一部は、永久さんが過去に殺した人物のものだったようでした。

班長の厚田巌夫(渡部篤郎さん)たちは、都夜さんに送られていた同じ字体で書かれた5通の手紙の人物が殺された人物だと推測していました。

帝都大学医学部の法医学教授で監察医の石上妙子(原田美枝子さん)は、片岡さんが一命を取り止めたことと、事件に使われていた遺体の一部の3人のDNAは一致したということを比奈子さんに報告した後、比奈子さんを心配して、比奈子さんを抱きしめていました。「人とのつながり」を比奈子さんの実感してもらおうと考えたようでした。妙子さんに抱きしめられた比奈子さんは、子供の頃に母親の香織(奥貫薫さん)に抱きしめられたことを思い出していました。そして、妙子さんに頼まれて、精神・神経センターに入所中の心療内科医の中島保(林遣都さん)に会いに行くことになりました。

「侵入」をして調べていた中島さんは、比奈子さんに、比奈子さんは子供の頃に父親から言われた「怪物だ」、「いつか人を殺すかもしれない」という言葉に囚われているだけなのではないかと説明しました。「殺人」を思い止まらせているもう一つの言葉について訊かれた比奈子さんは、母親から、大丈夫、あなたはきっと間違えずに正しく生きていくことができる、と言われていたことを思い出しました。中島さんによると、比奈子さんは、自分は本当に人を殺さない人間なのか、母親の愛情を証明しようとして試していたのだろうということでした。

永久さんが自宅の郵便受けに入れていた、殺された情報屋の藤川さんの携帯電話をおとりに使って、先輩刑事の倉島敬一郎(要潤さん)たちを別の場所へ誘導した比奈子さんは、その隙に、東海林さんを拉致している永久さんのもとへ向かいました。

倉庫に灯油を撒いて比奈子さんが来るのを待っていた永久さんは、東海林さんの手錠の鍵を飲んだ、比奈子さんがナイフを出して3分以内に自分の腹部を裂きに来なければライターで火を点けると脅して、比奈子さんが自分を殺しに来るのを待っていました。

比奈子さんは、東海林さんを助ける「正当防衛」のためにナイフを取り出して永久さんに近づいていったのですが、東海林さんに止められてナイフを下げました。永久さんは、倉庫内に火を点け、火の迫る中から東海林さんを助けようとする比奈子さんを刺殺しようとしたのですが、駆け付けた倉島刑事に捕まり、手紙の「まつり縫い」の暗号を解いた厚田班の警察官たちに逮捕されました。連行されていく永久さんに声をかけた比奈子さんは、あなたもこのようにされたかったのではないかと、永久さんを抱きしめました。比奈子さんに突然抱きしめられた永久さんは、パニック状態になったように絶叫していました。

東海林さんは、比奈子さんを助けに来たみんなと比奈子さんはつながっているのだということを、比奈子さんに話していました。

それから比奈子さんは、先のことは分からないけれど今は東海林さんや母親が自分を信じてくれているように自分を信じようと思うというようなことを中島さんへのメールに書いて送っていました。

マンションの自室に戻った比奈子さんは、「スイッチオフ」と呟いて部屋に入り、眠りにつこうとしていました。夢の中で比奈子さんは、倉庫で比奈子さんを待っていた永久さんに手錠をかけ、私は刑事だから、と断言して永久さんと別れ、明るい光のほうへ歩いていきました。

脚本は古家和尚さん、演出は白木啓一郎さんでした。音楽は菅野祐悟さんでした。

このような最終話だったのですが、藤堂比奈子は殺さない、東海林さんは殺されない、ということが、特に最終回の冒頭からはっきりと分かってしまう展開で、ドラマ全体として考えると、何というか、「竜頭蛇尾」的な印象のドラマだったようにも思いました。

青い目の謎の永久さんの存在は、比奈子さんと対比的で良かったと思うのですが、「趣味は殺人」という永久さんが、比奈子さんを呼び出すためだけに最後まで東海林さんを生かしておいた理由が、いまいちよく分かりませんでした。比奈子さんを殺人犯の側に送りたいのなら、比奈子さんに自分を殺させたいのなら、あの場所で東海林さんをほぼ無傷にさせておくことには、ドラマの永久さんのためには、あまり意味がないことのようにも思えました。

永久さんの灯油の撒き方が雑なのは、このようなドラマの演出にはよくあることのようにも思えますが、その灯油が東海林さんに少しもかかっていないのは、さすがに不自然に見えました。

そもそも、永久さんとの過去の出来事に苛まれている比奈子さんを永久さんが呼び出すために、東海林さんを拉致する必要はなかったのかもしれないですし、東海林さんの拉致の展開は、東海林さんに比奈子さんを止めさせるためだけの展開だったのかもしれないなと思います。

あるいは、永久さんは本当には比奈子さんを自分の側に引き込みたくなかったということなのでしょうか。

自分はいつか人を殺すのだろうかと悩んでいた比奈子さんが人を殺さないのは、母親や警察官仲間に愛されていることを実感したからで、永久さんが小動物や人を殺傷せずにいられなかったのは(永久さんが人を殺ず場面は全く描かれていませんでしたが)、親から愛されずに虐待され、預けられた施設の職員たちからも愛されずに酷い目に遭わされ続けていたからだということなら、「闇」の深さは永久さんのほうが圧倒的です。

比奈子さんは、父親の大切にしていた時計をきれいに分解しただけで父親から「怪物」と呼ばれて悪口を言われていたようだったので、ドラマを見ていた限りでは、単純に父親の怒り方がおかしかっただけなのかなとも思えます。比奈子さんに「心がない」という描写も、時々無表情になるとか、友達の遺体を見て泣き喚いたりしないということくらいで、それを「心がない」状態だという風に比奈子さん自身や東海林さんが判断する理由も、私にはいまいちよく分かりませんでした。

比奈子さんに抱きしめられた永久さんが叫んだ場面は、人間性を少し取り戻した、というような意味だったのかもしれないとも思うのですが、私としては、偽物の愛情表現への拒絶反応であってほしいようにも思えました。

比奈子さんは、おそらくとても真面目な人で、身近な人の言葉に影響を受けやすい人というか、身近な人の自分に対するイメージに近い人物になろうとする人、期待に応えようとする人だったのだろうと思います。そのため、周囲の人たちに愛情に支えられている限り、比奈子さんは自身が恐れるような動物殺しや人殺しにはならないのだろうと思います。最終回の中では、比奈子さんは、自分が「殺さない」理由を「刑事だから」という言葉に収束させていましたが、「刑事だから」もまた比奈子さんの呪縛になりそうな気がしますし、どちらかというと、「殺さない」の理由は、「私だから」というようなことになったほうがいいのかもしれないなと思いました。

私はこのドラマの原作の内藤了さんの小説『ON 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子』のシリーズを未読なので、このような展開の最終回になったことが、原作の物語がこのような展開だったからなのかどうかは分からないのですが、少し取って付けたような、「闇」から「光」の側へ転向していく比奈子さんの物語になっていたような気もしてしまいました。

このドラマとしては、刑事の比奈子さんが人を殺すか殺さないか、ということをテーマにした物語として終わるということで良かったのでしょうか。

東海林さんは「殺人」をする人を憎んでいて、永久さんは弱い自分を虐待し続けてきた人たちを憎んでいました。殺人はとても悪いことで、とても嫌なことだということを、私は道徳的に、あるいは想像的に理解していますが、殺人よりも傷害や暴行のほうが悪くない、あるいは罪が軽いということは、何か間違っているような気もします。

ドラマの中の永久さんが言っていたように、ニュースで毎日のように報道されているように、誰もが加害者になる可能性や被害者になる可能性を持っているはずですが、一瞬で死ぬのと、少しずつ死んでいくのとでは、一瞬で殺すのと、少しずつ殺すのとでは、結果的には同じ「死ぬ」、「殺す」でも、その内容は全く違うように思います。

最終回では、シリアルキラーの永久さんとは対照的に、ナイフは持っていたけれど拳銃は持たないでいた刑事の比奈子さんは、(もともとそれほど「変わり者」ではなかったように思いますが)「普通の人」として描かれていました。

“刑事ドラマ”ということではなかったのかもしれないとも思いますが、「心理」を中心に描いていたので、ドラマを見ながらいろいろ考えることができて、少し怖いような場面もありましたが、良かったです。私は基本的にはスプラッター的要素の多い作品はとても苦手に思えるのですが、このドラマは大丈夫でした。それはやはりその「心理」の面が強く、「猟奇殺人」そのものの場面が少なかったからなのだろうと思いますし、「猟奇殺人」(遺体)の場面があっても、それが猟奇性を描くためだけのものにはなっていなかったからだと思います。(同じフジテレビで数年前に放送されていたドラマ「ストロベリーナイト」は、私には、そのようなところが少し浅いようにも思えてしまい、演出も苦手に思えてしまって、西島秀俊さんが出演していたにも関わらず、最初の1話か2話で見るのをやめてしまいました。)

オープニングの映像もきれいでしたし、そこに流れるテーマ音楽も良かったです。最終回の展開は、私には少し物足りなく思えてしまうところもあったのですが、最後までそれなりに楽しく見ることができました。明るいのほうへ向かって歩き出した時の比奈子さんの表情が無表情だったのも、このドラマの比奈子さんらしくて良かったように思いました。
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