「武器ではなく 命の水を~医師・中村哲とアフガニスタン~」

昨日は、2001年の9月11日の「アメリカ同時多発テロ事件」から15年目の日でした。

昨日には15年前の事件のことはあまり報道されていなかったように思いますが、「9.11」と呼ばれるハイジャックテロ事件は、アメリカへの報復として行われたものだそうで、アメリカ政府はテロ事件後その報復としてタリバン政権のアフガニスタンを攻撃し、イラク戦争にまで発展させて、謎の過激派組織の「IS」による事件が起きている今に至っています。

一昨日の土曜日、プロ野球の広島カープが巨人との試合に勝って25年ぶりに優勝したという夜の11時から、私は、「ETV特集」の「武器ではなく 命の水を~医師・中村哲とアフガニスタン~」という特集を見ていました。

アメリカの同時多発テロ事件から15年ということを伝える特集の一つだったのだと思うのですが、とても良い特集でした。

私は、名前を聞いたことがあるような気がするというくらいで、今は69歳の、中村哲さんという医師の方のことを知りませんでした。

昨夜の特集は、同時多発テロが起きた頃の酷い干ばつに苦しむアフガニスタンに診療所を作って診療を始めた中村哲さん、病気の治癒には水と食料が欠かせないということに気付いて、水路の建設計画を始めてからの15年間の軌跡を伝えるものでした。

人々の努力と豊かな水によって砂漠地が緑地に変わり、そこで暮らす人たちにとっての平和な故郷となっていた様子が、本当に感動的でした。

水路の建設を決意した医師の中村さんは、「無謀な計画と恥じることはない」と地元のアフガニスタンの農民たちを説得し、地元の文化を尊重しながら、「緑の大地計画」を立てたそうです。

そして、アメリカ軍による機銃掃射などの攻撃を避けるために一時はパキスタンに避難しながら、再びアフガニスタンに戻り、集まった農民たちとガンベリ砂漠の硬い岩盤を掘って長い水路を作り、氷河の溶けた水が豊富に流れるクナール川の水を水路に引き込むことに無事に成功したのですが、そこには、石工のようでもあったという地元の農民たちの能力と、江戸時代の日本の工法が活かされていました。

独学で水路造りを研究していた中村さんは、蛇籠(じゃかご)という、金網で作った籠に石を詰めたものを組み合わせて護岸を作っていたのですが、それは、アフガニスタンの農民たち自身がいつでも修理できるようにするためでした。

クナール川は、水深5メートル以上ある急流で、水路に水を引き込むための堰をなかなか作ることができなかったのですが、春になる2か月前、中村さんは江戸時代の「山田堰」というものを知り、川の流れに垂直に石を置くのではなく、斜め上の方向に水圧を逃がしながら石を並べるという方法で堰を作ることに成功し、2004年の2月、水は1.6キロの水路を流れ出しました。その水路は、真珠という意味の、マルワリード用水路と名付けられたそうです。翌日、泥の地盤の上にあったという護岸が崩れた時に地元の人たちがすぐに集まって素早く改修工事をすることができたのだそうです。

用水路から水が届くようになって、一帯には小麦や稲の田んぼが作られるようになったそうです。中村さんは、護岸の上に柳の木を植えて、蛇籠の護岸が柳の根で丈夫になるようにしたそうで、2001年頃の写真と、2008年頃の写真が紹介されていたのですが、灰色がかったベージュ色の砂漠地帯は、一面が緑色の草木で覆われていて、それは想像以上のすごい変化だったので、砂漠がこのように変わるのかと驚きました。

中村さんや地元の方は、貧しいから家族を守るために米軍やタリバンや反タリバンなどの傭兵の仕事をせざるを得ない人々が出て来る、農業の仕事があれば戦に参加する暇などないし、誰も好きで戦には行かないと話していました。

それから中村さんは、約25キロになった水路の一体の地域の中央辺りに、イスラム教のモスクを建設することにしたそうなのですが、その計画を聞いた地元の人たちが「これで解放された!」と喜んだというのが印象的でした。

イスラム教徒である地元の人々は、アメリカとタリバンとの戦争によって、イスラム教徒であることが悪いことであるかのように少し委縮していたそうなのですが、地域コミュニティーの中心となるモスクが建設されることになって、水路が完成した以上に喜んでいたのだそうです。2015年には水路は2.7キロになったそうなのですが、完成したモスクの敷地の中には学校も作られて、今では600人の子供たちが通って勉強をしているということでした。

学校の授業風景の場面で、小学校低学年くらいの子供たちが「地雷を見つけたら近づかない」という勉強をしていることに少し驚いたしたのですが、日本で地震や不審者のことを習うのと同じくらいに、誰かが仕掛けた地雷が近くに落ちているという状況がよくある出来事になっているのだと思い、はっとしました。

畑では、今はサトウキビも作られていて、昔その地元で作られていたという黒糖が復活したのだそうです。畜産もできるようになって、牛が育てられていたり、市場が開かれたりもしていました。

中村さんは、自身の活動について、平和運動をしているのではなく、人の命を助けるという医療の延長なのだと話していました。今では、NGOなどの団体の他にJICA(国際協力機構)も中村さんの活動に協力しているのだそうです。

用水路の水で耕された畑は1万6千ヘクタールに広がり、60万人の人が助かっているということなのですが、それでも、それはアフガニスタン全体の2パーセントだということでした。

干ばつ地域など、貧しい地域で暮らす人々は、家族を養うために、ISの傭兵になるなどしているそうです。ISの活動が拡大している地域と、砂漠の貧しい地域は重なっているそうです。

中村さんは、地元のアフガニスタンの農民の人たちに、何よりも大切なものは命だと伝えていました。中村さんは、モスクの学校の経営を地元の人に託し、今は水路を造ることのできる人を養成するための学校を建てる計画を進めているそうです。水路工事の教科書を作っていました。医者を100人連れて来るよりも、診療所を100箇所作るよりも、1本の水路を造ることのほうがその地域の人たちを救うことにつながるということを中村さんは話していました。

砂漠が中村さんたちの造ったマルワリード用水路の水によって緑地に変わっていたのが本当にすごくて感動したのですが、何というか、スタジオジブリのアニメ映画「となりのトトロ」の中の、夢の中のサツキとメイがトトロと一緒に、庭に埋めたどんぐりの芽をたくさん伸ばして森にしていた場面を思い出しました。

中村さんの活動は、現実的、物理的なものなのだけれど、魔法のようでもあるような気がしました。

近くに豊かな川があったということも良かったのかもしれませんが、中村さんの用水路造りと緑地化の計画は、決して「無謀な計画」ではなかったのです。

「IS」などの組織の活動を止めたいと本気で思っているのなら、アフガニスタンやイラクやシリアなどへの空爆(空襲)をすぐに辞めて、地元の人々と一緒に水路と田畑を造り始めるべきなのだと、中村さんの活動を伝える特集を見ていて思いました。破壊活動や殺傷行為を繰り返していても、砂漠化して貧しくなったその地域にさらに苦しむ人が増えるばかりで、当然のことだと思うのですが、「平和」になるとは思えません。

現地で活動している中村哲さんが、「生きとし生けるものが和して暮らすこと」のできる平和で豊かな世の中を作ろうとしていて、水路や学校を造ることでそれを少しずつ実現させようとしているのに、どうして各国の政府規模でそうしないのだろうと、不思議に思います。

表向きにはその国の人たちを助けたいと言いながら、何かの利権のために、本当の救済のための行動を阻んでいる人たちがいるのかもしれません。

日本では、今は先日に報道されていた、北朝鮮の5度目の核実験を行ったということが話題になっています。専門家の人たちは脅威だと言っていて、確かに脅威かも知れませんが、報道で映像が流れていた、地震のような揺れを感じて校庭に避難していたという中国の小学校付近の人たちの被爆のことや放射能汚染のことは伝えていません。自衛隊の調査の結果、日本の空気は大丈夫らしいということは報道で伝えられていましたが、実験場近くの被爆の問題は、過去の実験の時にも報道されていなかったように思います。実験場に近い場所で暮らしている地元の人たちの健康や、空気や土や水は、大丈夫なのでしょうか。

昔のアメリカのビキニ環礁での水爆実験の時のような映像がないことも、少し不思議に思えるのですが、あるいは、最近の核実験は映像を出さないようにしているのでしょうか。日本政府はアメリカ政府や韓国政府からの情報でしか北朝鮮の核実験の情報を得ることができないようですし、一般市民の私たちは、さらにテレビ局や新聞社などの国内メディアの報道によって、核実験が行われたらしい、というくらいのことを知ることしかできません。

報道によると、北朝鮮は「核の抑止力」として核兵器を作っているということですが、それなら、アメリカやロシアや中国などの「核保有国」と考え方は同じであるような気がします。現代の日本の中にも「抑止力」として核武装することを考えている人はいるそうですし、北朝鮮政府の問題を報道などで見ていると、いつも何となくなのですが、戦前や戦中の日本政府に似ているように思えます。

北朝鮮は「脅威」なのかもしれませんが、安倍首相と金正恩さんの日朝首脳会談もなされていないようですし、情報が一方的であるような気もするのです。日本政府は本当に、拉致被害者を日本に戻って来てもらおうと考えているのでしょうか。拉致被害者の家族の方は、日本政府の方針と同じように、何かあると北朝鮮に制裁の強化を要請しているように思います。私にはいまいち分からないことではあるのですが、拉致被害者家族の方が、経済制裁を強化すると日本人の拉致被害者が帰国しやすくなると考えるのはどうしてなのでしょうか。早く返してほしいと伝えるためなら、公にでも公にではなくても、どこかで直接話し合うことができるようにしたほうがいいような気がします。小泉純一郎さんのが首相を務めていた2002年の頃に5人の方が帰国して以来、日本が経済制裁を行っても行わなくても、拉致被害者の方は一人も帰国していません。

また、北朝鮮の5回目の核実験の報道があった日には、元自民党の政治家の加藤紘一さんが亡くなったという報道もあって、驚きました。77歳だったそうです。戦時中を知るリベラル派の方がまた一人いなくなるのだなと思いました。

医師の中村哲さんのアフガニスタンでの水路造りの活動のように、平和な世の中を作る方法としては、市井の人々の暮らしを穏やかなものにする方法が取られなければいけないのだろうと思います。

日本も第二次世界大戦前には連合国から経済制裁を受けていたそうですし、今でも、戦が始められて酷い目に遭うのは前線で戦う兵士や一般の人々なので、そのような紛争に発展する前に、各国の政府が協力して、少しずつでも荒れた貧しい地域の環境を立て直して、水と土と空気をきれいにして、豊かな緑の田畑の広がる環境に変えると良いのだろうと思います。

番組の最後の、アメリカ軍のヘリコプター(オスプレイのようなヘリコプターでした)が空を飛んでいる環境の中、大地で地道に仕事を続ける地元のアフガニスタンの農民と医師の中村先生たちの姿も印象的でした。

私は医師の中村哲さんのことをほとんど知らなかったのですが、今回の特集を見ることにして良かったです。まさに文字通りの「建設的」な方で、本当にすごいなと思いました。とても良い特集でした。
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Author:カンナ
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