「今を生きる君たちへ~92歳の作曲家 大中恩のメッセージ~」

先週のNHKの「特報首都圏」の「今を生きる君たちへ~92歳の作曲家 大中恩のメッセージ~」を見ました。

私は、「サッちゃん」や「犬のおまわりさん」や「ドロップスのうた」などの歌を知っていたのに、その作曲者の大中恩(おおなかめぐみ)さんのことを、この番組を見るまで知りませんでした。

大正13年に東京に生まれた大中さんは、歌を好きで、昭和17年に東京音楽学校(現在の東京藝術大学)に入学したそうなのですが、戦争が激化し、勤労動員で音楽の勉強はほとんどできなくなり、昭和18年の学徒出陣での壮行会では東京音楽学校の学生としてマーチを演奏し(トランペットを吹いたそうです)、翌年の昭和19年に海軍に召集されると、学生たちの異様な熱気の中、自身も特攻隊に志願したそうです。

特攻隊として出陣する仲間たちを見送る時には、大中さんも羨ましい感じで見送っていたそうなのですが、そこから帰ると、ふと我に返って、助かった、と思っていたのだそうです。

「つつましき母の願いは つねに良き心を持ちつつ つつがなく生い立ちませと」という歌詞の歌を大中さんはその頃に作ったそうで、その歌を聴いた特攻隊の仲間たちの表情には生きたいという思いが溢れ、涙を流していたということでした。大中さんは、泣いたら弱い人間と思われるかもしれないのに思わずみんな泣いてしまった、あの時代に歌の力、音楽の力は大きいと思ったと話していました。

戦後、大中さんは、死んでいった仲間たちを思い、曲作りを始めたそうです。中でも、子供たちのための歌に力を入れて、戦時中に口にすることができなかった言葉を、これからの子供たちには大きな声で歌ってほしいと思って、「サッちゃん」や「おなかのへるうた」や「犬のおまわりさん」などの曲作りに協力したのだそうです。

「寂しい」とか「お腹が空いた」という言葉も言うことができなかった時代というのは、本当に凄まじいようにも思えますし、僕らの時代には「お巡りさん」は敵だった、という大中さんの言葉にも、はっとしました。「犬のおまわりさん」は、ただかわいい歌というわけではなく、厳格なイメージの警察官をユーモラスに表現した歌だということでした。そう言われると確かにそうなのかもしれないのですが、そのような社会背景があったことには、私は全く気づきませんでした。

スタジオには、元歌のお姉さんのつのだりょうこさんと、ピアニストで奈良教育大学教授の宮下俊也さんが来ていました。キャスターの寺澤敏行さんは、パネルで日本の子供の歌の歴史を紹介していたのですが、それによると、江戸時代までは「わらべうた」で、明治から大正、昭和初期時代は「唱歌」で、戦後の昭和20年代から30年代は「童謡」、昭和30年代以降は「テレビ主題歌」ということでした。宮下さんは、大中さんの「サッちゃん」を弾いて、大中さんの曲には芸術性の高さがあると話していました。童謡だけではなく、歌曲や合唱曲なども含めて、大中さんは今までに2400曲以上作っているそうです。

大中さんは、2011年の3月11日の東日本大震災の半年後、被災した福島県の鏡石町の第一小学校に「鏡石のこどもたち」という曲(作詞は山岸千代栄さん)を贈ったそうです。前向きな言葉の並ぶ歌詞に、先生たちは子供たちの負担になるのではないかと少し心配していたそうなのですが、子供たちは歌を気に入って、今でも大切に歌っているそうです。今月の10日には、大中さんを招待して、歌を披露したのだそうです。

『からすのパンやさん』や『にんじんばたけのパピプペポ』や『おたまじゃくしの101ちゃん』を作った、90歳の絵本作家の加古里子(かこさとし)さんと大中さんは古い友人だそうです。

加古さんは、昭和20年までの私は本当は死んでいるはずなんです、その当時の大人の人は信用無い、だから子供に未来を担ってもらうために応援しようと作品を作っているという話をしていました。

私は未読なのですが、『パピプペポーおんがくかい』というかこさとしさんの絵本が2年前に出版されて、その絵本では、最後に地球の生き物たちが大合唱をするのだそうです。大中さんは、その歌の言葉に曲を付けたいと考えていました。

大中さんを自宅に迎えていた加古さんは、今の時代だからこそ子供たちに歌ってほしい、「社会的生物」と言われている人間なのに戦争だとか紛争だとか至るところで起きている、こんなことでは社会性もへったくれもない、僕の時代ではとてもダメだけれどあとは頑張ってほしいというのが願いです、と話していました。

加古さんを訪ねた3日後、大中さんは、ピアノで作曲を始めていました。子供たちの平和を大切にする気持ちを育みたいと、作曲された曲は、番組の収録の日の朝?に完成したということでした。

宮下さんのピアノの伴奏に合わせて、つのださんが歌っていました。「うみにうまれ いのちをつなぎ だいちにすんで いのちをわけた このほしにすむきょうだいたちよ ともよ なかまよ こころをむすぼ うみとだいちのこのほしとともに」というような歌詞の歌でした。

歌うことによって感性や感受性が豊かな子が育っていくのではないかと、宮下さんが最後に話していました。平和な時代だからこそを歌を自由に歌うことができるということが、私にもよく伝わってくる特集でした。

私も、特に小学生の頃は、好きな歌を大きな声で歌うのが好きでしたし、好きな絵本を読むのも好きだったので、今回の番組で紹介されていたような、90歳代の大中恩さんやかこさとしさんによる子供たちへ平和のメッセージを伝える取り組みを、とても有り難いものであるように思いました。戦争時代を知っている方が、「今の時代」だからこそという思いで子供たちへ向けて平和を大切にしてほしいというメッセージを伝えている感じが、感動的でもあり、もう少ししたら今より平和ではなくなっていくかもしれない、時代が逆戻りしたようになってしまうかもしれないという不安感が伝わってくるようでもありました。

でも、ともかく、とても良い特集でした。平和を大切に、という以前にはよく言われていた短い言葉が最近は少し軽んじられているように思えるというか、その言葉の中に込められているメッセージが最近は重要な理想としては考えられなくなってきているのかもしれませんが、平和がなくなった時に初めて真に迫って感じられるのだとしたならその時にはもう遅いのだと思うので、これからも、単純にでも、平和の大切さや、平和の大切さを訴える人の活動が、このような主要なメディアで紹介されていくといいなと思いました。
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