「夏目漱石の妻」最終回

NHKの土曜ドラマ「夏目漱石の妻」の最終回(第4回)「たたかう夫婦」を見ました。

最終回となる第4回は、主に、朝日新聞から穴埋めの原稿を依頼された夏目金之助(夏目漱石、長谷川博己さん)が足尾銅山の元坑夫の荒井伴男(満島真之介さん)から聞いた話をまとめた小説『坑夫』の連載を始めた明治41年の1月から、金之助さんの飼い始めた文鳥がある日死んでいたことを『文鳥』に書いた6月頃、そして夏目家に五女の雛子さんが生まれ、胃潰瘍の痛みに耐えながら小説を書き続けていたもののついに長与胃腸病院に入院することになった明治43年の6月から、療養のために滞在していた伊豆の修善寺の温泉宿で大量の吐血をして危篤状態に陥った8月、一命を取り止めて回復した翌年、妻の夏目鏡子(尾野真千子さん)と二人で講演のために長野を訪れる夏の頃までの物語でした。

脚本は池端俊策さん、演出は柴田岳志さんでした。

楽しみにしていた最終回も、とても良かったです。

荒井さんから「文鳥」は理想の女性を表したものだと言われた鏡子さんが、金之助さんが理想の女性だと言っていた作家の大塚楠緒子(壇蜜さん)の色白美人ぶりに衝撃を受けて木曜会に集まる門下生の一人の小宮豊隆(柄本時生さん)に詰め寄る場面などとても面白かったのですが、第3回までの物語よりは、重い内容の場面が多かったような気がします。

「平民新聞」を発行していた幸徳秋水たちが明治天皇の暗殺計画を企てたとして逮捕された「大逆事件」があり、鏡子さんの従妹の山田房子(黒島結菜さん)や木曜会の人たちからお金を借りていた元坑夫の荒井さんは、「社会主義者」として警察に捕まって厳しい取り調べを受けていたようでした。荒井さんは、実家の名前ではなく夏目漱石の名前を出して夏目家に引き取ってもらっていたのですが、事情を話する中で、金之助さんを、軍需産業で儲けている横柄な実家の父親に似ていると言って、娘の筆子さんや恒子さんは父親を怖がっている、夏目家は崩壊しているのではないか、鏡子さんを愛していますかと問い質していました。

金之助さんは、小説のことばかり考えているという鏡子さんの言葉をそのまま使って、愛しているとは答えませんでした。鏡子さんが直接訊いても答えませんでした。

それでも鏡子さんは、胃腸病院に入院した金之助さんに、金之助さんと結婚すると幸せになれるという鏡の占いを信じていると答え、一人で療養のために伊豆の修善寺の温泉に滞在することにした金之助さんから時々届く大丈夫だから心配するなという手紙の言葉を信じて帰りを待っていたのですが、8月中旬のある日、吐血したとの電報を受け取り、急いで修善寺へ向かう汽車の中で、金之助さんのお嫁さんになると決めた日のことや、金之助さんが優しかった時のことや、金之助さんと楽しく過ごしていた時のことを思い出していました。

鏡子さんが修善寺の宿で治療を受けていた金之助さんの大吐血に遭遇する場面が衝撃的でしたが、危篤状態に陥った金之助さんの回復を願う鏡子さんと、苦しい中で鏡子さんを探す金之助さんの気持ちが通じ合うような場面は感動的でしたし、何より、金之助さんが無事だったことにほっとしました。実際の夏目漱石も危篤状態を乗り越えて助かっているので分かっていることではあるのですが、良かったと、安心しました。

実家に帰ってみると言って夏目家を訪れなくなった荒井さんは、房子さんに借りた8円を返したそうです。房子さんは、金之助さんが大吐血をした翌年、名古屋の人との結婚が決まって夏目家を出て行ったということでした。房子さんが、「青鞜」の平塚らいてう(らいちょう)のことを切り出して、女性にも個性がある、だから美しく生きることができると鏡子さんと金之助さんに話したのも良かったです。

最後の長野の場面は、青空の下に広がる緑の草原のような雄大な山の風景と、夏目夫妻の洋服や日傘の白色との対比が鮮やかでした。私の本当の名前は鏡と書いてキヨと読むから『坊っちゃん』に登場する「清」は私のことではないかと嬉しそうに言う鏡子さんと、君は君だな、そういうことにしておこうと答える金之助さんの様子が、とても幸せそうで良かったです。

房子さんの語りで、『それから』や『門』などの作品が発表されていったことが伝えられ、激動の明治が終わりを告げようとしていた、というところで終わっていました。

その語りの中で言われていたように、夏目漱石の数々の作品は夏目金之助さんと鏡子さん夫妻の「たたかい」の記録でもあるのだということが、誠実に描かれていた最終回だったように思います。最後の夏目夫妻と山の風景の場面から、これからも夫婦の「たたかい」は続いていくのだろうなということがさわやかに伝わってくるような気がしました。

このドラマの中では描かれていないのですが、実際の夏目漱石は、大正5年(1916年)の12月に亡くなったそうです。でも、その金之助さんの亡くなるところまで描かずに、これからも一緒に生きていく夫婦の希望の場面で終わっていたのは、やはり良かったのだと思います。ドラマの中の金之助さんは最後まで鏡子さんに愛しているとは言いませんでしたが、金之助さんが鏡子さんを愛しているという現実は、ドラマの中にしっかりと描かれていたように思います。

長谷川博己さんの演じる夫の夏目金之助さんも良かったですし、尾野真千子さんの演じる妻の鏡子さんも良かったです。夜9時から10時15分までの75分のドラマでしたが、見応えのある作品で、見終わる頃には毎回あっという間にも思えていました。本当にとてもすてきな夏目夫妻のドラマでした。私も最後まで無事に見ることができて良かったです。
プロフィール

Author:カンナ
ブログ初心者です。
感想などを書いています。
マイペースで更新します。
すきなもの
 月・星空・雨・虹・雪
 飛行機雲・入道雲・風鈴の音
 透き通った水・きれいな色
 富士山・東京タワー・ラジオ・音楽
 本・絵画・ドラマ・(時々)アニメ
 掃除機をかけること
にがてなもの
 人ごみ・西日・甘すぎるお菓子
 

最新記事
カテゴリ
月別アーカイブ
カウンター
検索フォーム