「100分de手塚治虫」

昨夜のNHKのEテレでは「100分de名著」の特別編、「100分de手塚治虫」が放送されていました。

「100分de名著」は、2011年の春に始まった、スタジオに解説者を迎えて「名著」と呼ばれるような有名な本の内容をその本質を簡単に捉えることができるように少しずつ読み解いていくという番組で、私も毎回を楽しみにして見ている番組です。解説に納得できることもあるのですが、それは違うのではないかなと納得できないことも時々あって、いろいろ考えながら見ることができるところも面白いのだと思います。今は、道元の『正法眼蔵』を紹介していて、仏教思想家のひろさちやさんによる朗らかな解説がお寺のお坊さんの「説法」のようでもあります。通常は、25分を4回に分けて放送して合計で「100分」になっているのですが、お正月のスペシャルの時のように、初めて漫画作品を扱う今回の「100分de手塚治虫」は、夜11時から12時40分(23時から0時40分)という「100分拡大版」でした。

司会は伊集院光さんと礒野佑子アナウンサーで、講師は女装家のブルボンヌさんと映画監督の園子温さんと精神科医の斎藤環さんと宗教学者の釈徹宗さんでした。漫画コラムニストの夏目房之介さんもVTR出演で解説をしていました。

伊集院さんは、冒頭で『日本発狂』を紹介していました。ブルボンヌさんは性の揺らぎを描く作品として『リボンの騎士』と、それから同性愛を描いた作品として『MW(ムウ)』を紹介していて、園子温さんは線の魅力がよく表れている作品として『鉄腕アトム』を、斎藤環さんは多声性のある文学的な長編漫画作品として『奇子(あやこ)』を、釈徹宗さんは、漫画と宗教性というテーマで『火の鳥』の「鳳凰編」を紹介し、解説していました。

「名著として読み解く手塚治虫作品」というテーマを、まさにその通りだなと思うことができる回でした。「漫画の神様」と呼ばれる手塚治虫の漫画は、漫画だけれど文学作品でもあるという講師の方たちの意見が、漫画をよく知らない私にもよく分かるような気がしました。

メタモルフォーゼ(変身)、性的流動性、円運動、ピカレスク、両性具有、多様性、多義性、反骨精神、戦争、スペクタクル、俯瞰的視点、群像劇、悲劇的運命、宇宙生命、死、輪廻転生、というような言葉が、解説の中で手塚治虫作品のキーワードとして出ていたように思います。私が最初から最後までちゃんと読んだのは『三つ目がとおる』と『W3(ワンダースリー)』くらいなのですが、丁寧な解説がなされる番組を見ていて、そのような要素をよく分かるように思えました。

先日に見たBS朝日の特集番組の中でも、漫画家の水木しげるさんは、漫画にとって一番大事なものはストーリーであり、ストーリーの面白くない漫画は技術があっても面白くないということを話していましたが、斎藤環さんによると、手塚治虫さんの漫画作品も「ストーリー」が重視されている漫画で、群像劇を良く描くことができる代わりに、「キャラクターが立った」作品にはなり難いのだそうです。

表現とは自分の価値を創造することだという解説も、なるほどなと思いました。生きることは表現をすることで、手塚治虫さんにとっては漫画を描くことで、どのような表現もそれは全てコミュニケーションであるということでした。

手塚治虫さんの作品に限らないのかもしれないのですが、過去に表現されたものを現代の人が吸収して受け継いで、新しい表現を生み出していくというようなことを、伊集院さんが「表現の輪廻」と表していたのも、良かったです。そうなのだなと思いました。

「名著」は何度読んでも新しい発見がある、というのも、そうなのだと思います。「古典」と呼ばれる本は、何度も繰り返し読み継がれているものですし、音楽にしても絵画にしても、名作として残っているものは、やはりすばらしいのだと思います。今は少し難しくて分からないように思える作品でも、いつか急に分かるようになるのかもしれません。新作にも良いものはたくさんあるのかもしれないですし、その内のいくつかが未来の世界ではまた古典になるのかもしれませんが、本の場合は昔の作品のほうが文章の言葉遣いが美しいということもありますし、長い時間をかけて今に残ってきた古典作品を、私も少しずつでも読んでいきたいということを、昨夜の「100分de手塚治虫」を見て改めて思いました。深夜に見たのですが、眠くならずに最後まで楽しく見ることができて良かったです。
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Author:カンナ
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