「足元の小宇宙 絵本作家と見つける生命のドラマ」

一昨日の23日の夜7時半からNHKの総合テレビで放送されていた、「足元の小宇宙 絵本作家と見つける生命のドラマ」というドキュメンタリー番組を見ました。

当日番組表を見て気になり、もしかしたら面白そうかなと、何となく録画をしておいた番組だったのですが、とても良かったです。

広島出身で京都の嵯峨野に暮らしているという85歳の絵本作家の甲斐信枝さんと、甲斐信枝さんが毎日見て観察している足元の小さな草花の世界を追ったドキュメンタリー番組でした。

30冊以上の絵本を出版しているという甲斐信枝さんは、『ざっそう』や『ひがんばな』や『たんぽぽ』や『雑草のくらし』を作った方で、番組で紹介されていた絵や本を見て、私はその作者の方が甲斐信枝さんという名前であることを知りました。確かに昔に絵本を見たことはあったのですが、作者の方の名前をちゃんと憶えていなかったのだと思います。昨年の2015年には『のげしとおひさま』という絵本を出版したそうです。

きれいで精密で優しい色合いの水彩画の絵の甲斐さんの絵本は、「科学絵本」と呼ばれているのだそうです。私は「科学絵本」というジャンルがあることをあまり考えたことがなかったのですが、図鑑のようなものも「科学絵本」に入るそうなので、例えば幼稚園生や小学生の頃の私も「科学絵本」をいろいろ好きで読んでいたのだなと思いました。

甲斐さんは、麦わら帽子をかぶり、画材の入った大きなトートバッグを持って嵯峨野の畑の畦道を歩きながら、気になった草花を青い縁の虫眼鏡で見たり、いつも会っている草花に話しかけて声を聞いたりしていました。描く対象となる草花を探して歩きまわる甲斐さんのその様子がとても楽しそうで、見ている私も一緒に草花を探しているような気分になりました。

タンポポに似ているノゲシ(タンポポよりも茎が長めです)の綿毛が風に舞う時の、「舞い舞いしている」という甲斐さんの言い方も面白かったです。風が茎や葉に当たって、飛んだ綿毛が風下の一方向ばかりに飛ばすに、円を描くように上に飛んだり下に飛んだりする感じを見つける甲斐さんはすごいなと思いました。

絵本作家として甲斐さんがデビューをしたのは40歳の頃なのだそうです。一度隣の家の火事の火が燃え移って自宅が全焼したことがあるそうで、草花や虫の絵を書き溜めていたスケッチブックの多くも燃えてしまったそうなのですが、その頃、植物からの「安住せよ」という声を聴いて、世界観が変わったのだそうです。

「安住せよ」は、過ぎ去った過去やまだ見えない未来に囚われずに今を安心して楽しく生きよう、というようなことなのかなと思いました。

甲斐さんがすてきな宝物だと言っていた植物の世界は、本当に素敵そうでした。私も春になると、タンポポの花の近くに一緒に咲いているオオイヌノフグリの水色の花やホトケノザのピンク色の花やカラスノエンドウの紫がかったピンク色の花を見かけますが、甲斐さんのスケッチブックにセロハンテープで貼られていたようなオオイヌノフグリの種やホトケノザの種やカラスノエンドウの種を見たことはなかったので、種はこのような感じなのかと少し驚きました。

身近な植物たちを毎日じっくりとよく見ている甲斐さんと異なり、私は花の咲いている時にしかその植物に気付いていないし、見ていないのだということがよく分かりました。きれいな花が咲いている時にだけ、花が咲いていると気付いて、その花を見たり写真を撮ったりしているだけでは、甲斐さんの話していた「宝物」には、なかなか出会うことはできないかもしれないなと思いました。

メヒシバのことも、見たことはありましたが、私はその名前を知りませんでしたし、背の高い植物に遮られていたメヒシバが、背の高い草が土地の持ち主に刈り取られた後、一番下で待機していたところから芽を伸ばすということも知りませんでした。『雑草のくらし』をよく読んでみたく思いました。

アメリカフウロというフウロ草も、たぶん花は見たことがあると思いますが、種のあるところは初めて見ました。種の台?の赤い色がきれいでした。遠心力で種を弾き飛ばす感じが面白かったですし、飛んだ後の丸まっているところがかわいかったです。何メートルくらい飛んで行くのでしょうか。甲斐さんのスケッチブックの上にも種が飛んでいたのですが、その種のプチプチと弾き飛んでいる音(あるいはスケッチブックの上などに落ちている音)もよく聴こえていました。

朝のキャベツの葉の上の水滴に朝日が反射してキラキラとしているのを、甲斐さんが嬉しそうに見ている様子も良かったですし、テレビの前の私もそれを見ることができて楽しく思いました。水滴の粒の輝きは、朝の太陽の光の角度によって、赤だったり、白だったり、緑だったり、オレンジだったり、青だったりしていました。

キャベツの葉の一面全体に小さな水滴がついている映像もあったのですが、それは本当にダイヤモンドの細かい粒を散らしたように、あるいはブラックオパールのように、葉の表面がキラキラと虹色に輝いていて、とてもきれいでした。自然はすごいです。

「世界は美しい」ということを、甲斐さんの絵本は伝えているのだろうと思います。そのことを伝えることができるのは、甲斐さん自身が自然の生命の美しさをよく知っているからで、それを美しいと感じ取っているからで、ヒガンバナの絵をまだ十分に描くことはできないと話していた時のように自然の前で謙虚であるからで、自然を精密に写しただけでは、そのことを伝えることはなかなかできないことであるようにも思えました。

先日のNHKスペシャルの「終わらない人 宮崎駿」の特集の中の、「毛虫のボロ」という毛虫を主人公にした初のCGアニメ作りを進めていたスタジオジブリの宮崎駿監督も、世界は美しいということを伝えたいのだ、というようなことを話していましたが、作品の中でそのことを伝えることができるのは、宮崎駿監督が自然や生命の美しさに感服しているからなのだろうと思います(鈴木プロデューサーに提出されていた企画内容は不明でしたが、長編作品をまた作ってほしいなと番組を見ていて思いました)。

人間や様々な生命活動の暗い部分を見てしまうような今の私にはまだ、「世界は美しい」ということを本当の意味で理解することはできないように思うのですが、甲斐さんのような方の話を聞いていると、あるいはきれいな空の色や草花を見ていると、確かに「世界は美しい」のかもしれないなと思います。いつかは私も「世界は美しい」と素直に心から思うことができるようになりたいです。

よく知らずに何気なく録画をしておいた番組だったのですが、私も見ることができて良かったです。見始めたら約45分があっという間でした。絵本作家の甲斐信枝さんと身近な草花の、とてもすてきな特集でした。
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Author:カンナ
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