ドラマ「東京裁判 TOKYO TRIAL」

NHKの総合テレビの「NHKスペシャル」として月曜日から4夜連続で放送されていた、日本とオランダとカナダの共同制作の特別ドラマ「東京裁判 TOKYO TRIAL」を見ました。

東京裁判(極東国際軍事裁判)は、第二次世界大戦に敗戦した日本が降伏をした翌年の1946年(昭和21年)の5月3日から1948年(昭和23年)の11月12日まで、約2年半にかけて市ヶ谷の旧陸軍士官学校講堂で行われた、戦勝国である連合国が「戦争犯罪人」と指定した日本の軍人や政治などの指導者たちを、ナチスの戦犯を裁いたニュルンベルク裁判の結果に基づいて裁いた裁判のことです。

私はこの東京裁判のことを歴史の授業で習った程度にほんの少ししか知らないのですが、このドラマを見るのを楽しみにしていました。

ドラマは、公式記録の他、世界各地を調査して新たに見つかったという手紙や記録、証言、覚書、日記などを基に、70年前の東京に集まった11か国の代表の11人の判事たちが判決を出すまでの攻防や葛藤を描いたドラマでした。裁判の場面には、当時の実際の裁判の、白黒からカラーにした映像を使っていました。

第1話は夜10時25分から11時25分までの約1時間の放送で、第2話と第3話と第4話は夜10時25分から11時20分までの約55分間の放送でした。三宅民夫アナウンサーが紹介するドキュメンタリーパートは、第1話では最初と最後にあり、第2話以降は最後にありました。

東京の日比谷の帝国ホテルに集まり、東京裁判を行った11人の判事は、オランダのレーリンク判事(マルセル・ヘンセマさん)、オーストラリアのウェッブ裁判長(ジョナサン・ハイドさん)、イギリスのパトリック判事(ポール・フリーマンさん)、インドのパル判事(イルファン・カーンさん)、中国の梅判事(デイヴィッド・ツェさん)、フランスのベルナール判事(セルジュ・アザナヴィシウスさん)、アメリカのヒギンズ判事の交代で入ったクレイマー判事(ティム・アハーンさん)、カナダのマクドゥガル判事(スティーブン・マクハティさん)、ニュージーランドのノースクロフト判事(ジュリアン・ワダムさん)、フィリピンのハラニーリャ判事(ベルト・マティアスさん)、ソ連のザリヤノフ判事(ケステューティス・ヤクスタフさん)です。

その他の主な登場人物は、ウェッブ判事を裁判長にしたGHQのマッカーサー最高司令官(マイケル・アイアンサンドさん)、オランダ代表部のウィリンク将軍(ポルヘイ・フランセンさん)ザリヤノフ判事の通訳の女性(ガービヤ・シュクヴィエさん)、音楽家のエタ・ハーリッヒ=シュナイダー(ハーデウィック・ミニスさん)、鎌倉に住むドイツ文学者の竹山道雄(塚本晋也さん)でした。

清瀬一郎弁護士やキーナン検事、「A級戦犯」に指定された東条英機や東郷茂徳や広田弘毅などの人たちは、実際の裁判記録の映像の中に登場していました。

脚本はロブ・キングさん、高木徹さん、ケース・ファンバイナムさん、マックス・マニックスさん、演出はピーター・フェルフーフさん、ロブ・キングさん、高橋陽一郎さんでした。音楽はロバート・カルリさん、テーマ音楽は中島ノブユキさんでした。語りは草笛光子さん、題字は赤松陽構造さんでした。

1945年8月8日に制定された「国際軍事裁判所憲章」には、「侵略に対する罪(平和に対する罪)」と「人道に対する罪」と「通常の戦争犯罪」とが決められ、「侵略に対する罪」は、侵略戦争を起こした責任を国の指導者個人に問う罪だそうです。

このドラマの主人公は、バイオリンを嗜むオランダのレーリンク判事だったように思うのですが、最初はイギリスやカナダ、ニュージーランド、アメリカ、フィリピン、中国、ソ連などの「多数派」に賛同していたレーリンク判事は、インドのパル判事(パール判事)の、「侵略に対する罪」は「事後法」だから今回の被告たちには適用するべきではないという意見を聞いて法律家として考え直し、判事の自主性を重んじて、パル判事と同じように意見書を提出していました。フランスのベルナール判事も、復讐心に囚われてはいけないと考えていました。

イギリスのパトリック判事たち多数派は、日本の戦争指導者たちに重い刑罰を課そうとしていたのですが、それは戦勝国の敗戦国に対する憎しみや復讐心というよりは(それも多少はあったかもしれませんが)、いつか「第三次世界大戦」が起きるかもしれないのを阻止したいという、平和を望む思いがあったようでした。

ニュルンベルク裁判の場合には公式の判決文しかないのだそうですが、日本の国立公文書館には、東京裁判の公式の判決文と6人の判事の個別の意見書が保管されているそうです。その内のウェッブ裁判長、レーリンク判事、ベルナール判事、パル判事の意見書は、多数派の判決に反対する部分を含むものだったそうです。

パル判事(パール判事)のことは、何年か前にNHKでも特集をしていたように思うのですが、東京裁判の11人の判事の中に日本の戦犯たちを冷静な判断で「無罪」としようとした方がいたことを知った時には、私はとても驚きましたし、何というか感動しました。パール判事は、日本の戦争指導者たちがしたことというか、日本軍が戦時中に行った民間人の殺戮を酷いものだということは理解しつつも、法律家として、事後法で裁くのは間違っているのではないかという考えを貫いていたようでした。

「人は戦争を裁くことができるのか」という難しいテーマのドラマだったのですが、ドラマとしては、最後まで興味深く見ることができました。それぞれの国の事情を背負う11人の判事たちの意見の対立や立場が分かりやすく丁寧に描かれていました。詳しいことは分からないのですが、それでも、とても誠実に作られたドラマだったように思います。

東京裁判について、日本では、戦勝国が敗戦国を一方的に裁いた裁判だと言われることが多いように思いますし、確かにそうなのかもしれないとも思うのですが、おぞましい戦争の始まりを、誰か政治家や軍人の個人の責任にしたいという気持ちも、何となく分かるような気がします。

11人の判事たちは、アメリカによる広島と長崎への原爆投下という惨劇については、(このドラマではパル判事に少しだけ言われていたのですが)罪に問わないということにしていました。8月8日に制定されたものなら、8月9日に投下された原子爆弾で長崎の民間人が殺されたことについては「人道に対する罪」などが適用されそうにも思えるのですが、(そもそも戦勝国側は裁かれないのですし)適用されなかったようでした。東京裁判でも「人道に対する罪」が使われなかったというのは、アメリカの原爆投下の問題を避けるためでもあったのかもしれません。

東京裁判は、日本の戦争指導者の罪について考えるもので、第二次世界大戦という大きな戦争全体に罪を認めたものではないのでした。国際法上戦争は合法であり、戦争は犯罪ではないから、戦争による殺人も犯罪ではない、というのが当時は一般的な考えだったようなのですが、それは政治家や軍人といった戦争指導者たちの間では今でも続いているのかもしれません。

11人の判事たちが判決を出すまでを描くこのドラマでは、日本の指導者たちが戦犯として選ばれるまでのことは描かれていなかったので、誰が選ばれて誰が選ばれなかったのか(外されたのか)ということも描かれていませんでした。でも、判決を町の人たちがラジオで聴いていたり、判決を受け入れた戦犯の人たちの様子が当時の映像で伝えられていたり、リアルな雰囲気がありました。判決文は1200ページもあって、ウェッブ裁判長は7日間かけて読み上げたのだそうです。死刑賛成派と反対派の混ざった判事たちが話し合った結果、死刑(絞首刑)になったのは7人でした。

ドラマでは、ウェッブ裁判長はマッカーサーに被告の減軽を頼んでいたのですが、却下されていました。マッカーサーは、これからも戦争は起こるし、それに勝たなければならないと話していました。

ドラマの最後に伝えられていたことによると、国際裁判所は後にオランダにできたそうなのですが、アメリカと中国とロシアは加盟しておらず、本来の役割は果たせていないそうです。そして、世界では今も戦争や紛争が続いている、という言葉で終わっていました。

ドラマには、竹山道雄さんも登場していて、レーリンク判事と鎌倉の海辺やご自宅で戦争や東京裁判について話していました。私は1947年に発表されたという竹山道雄さんの小説『ビルマの竪琴』は知っているのですが(小学生の頃に読んで好きになりました)、竹山道雄さんが東京裁判に間接的に関わっていたことは全く知らなかったので、どうしてレーリンク判事と会っているのだろうと、少し驚きました。ドラマの竹山さんは、レーリンク判事と二人で、ゴッホと歌川広重(安藤広重)の浮世絵の話をしていて、オランダに帰ることになったレーリンク判事に広重の「大はしあたけの夕立」の浮世絵を贈っていました。

落ち着いた雰囲気の映像も良かったですし、劇中の音楽も、オープニングなどで流れていたテーマ音楽も良かったです。

約70年前の東京裁判で裁かれた政治家や軍人たちのことも、当時の11人の判事たちのことも、私はよく知らないままではあるのですが、例えば当時の戦犯は一律に悪だとか、戦勝国が行った東京裁判の判決は不公平だとか、そのように単純に考えることは、あまり良いことではないのかもしれないなと思いました。一般市民が殺傷されていく戦争自体は、やはりとても悪いことだと思いますし、現在行われている戦争やこれから行われるかもしれない戦争については、誰が「戦犯」であるのかをはっきりと決めて裁いてほしいようにも思うのですが、「人は戦争を裁くことができるのか」という問題は、これからも考えていかなくてはいけない問題なのだなということが、ドラマを見ていた私にも少し分かったような気がしました。良いドラマ作品でした。
プロフィール

Author:カンナ
ブログ初心者です。
感想などを書いています。
マイペースで更新します。
すきなもの
 月・星空・雨・虹・雪
 飛行機雲・入道雲・風鈴の音
 透き通った水・きれいな色
 富士山・東京タワー・ラジオ・音楽
 本・絵画・ドラマ・(時々)アニメ
 掃除機をかけること
にがてなもの
 人ごみ・西日・甘すぎるお菓子
 

最新記事
カテゴリ
月別アーカイブ
カウンター
検索フォーム