ドラマ「スクラップ・アンド・ビルド」

NHKの土曜ドラマ「スクラップ・アンド・ビルド」を見ました。

原作は、羽田圭介さんの小説『スクラップ・アンド・ビルド』です。ピースの又吉直樹さんの『火花』と同時に芥川賞を受賞した作品ということもあり、メディアでたくさん紹介されていた有名な作品なので、作者名とタイトルはよく知っているのですが、『火花』と同じく私は未読です。未読なのですが、土曜ドラマで放送されると知って、私もこのドラマを見るのを楽しみにしていました。BS日テレの「佐分と市捕物控 冬夏の章」の後の夜9時から、10時15分まで放送されていたドラマです。

会社を辞めたものの再就職のための活動が上手くいかず、行政書士の資格取得を目指し、治験のアルバイトをしながら時々恋人の亜美(山下リオさん)や介護職員として働いている大西大輔(浅香航大さん)と会うくらいの死にたいような無為な日々を過ごしていた28歳の田中健斗(柄本佑さん)は、実家で母親の春子(浅茅陽子さん)と、その父親である87歳の要介護の祖父の昭一(山谷初男さん)と暮らしていたある日、亜美さんと出かけた先で見かけたボクシングジムでインストラクターを務める女子プロボクサーの三崎楓(秋元才加さん)の「生を美しく昇華する」という言葉を読んで、身体が思うように動かず「もう死んだほうがよか」が口癖の祖父に早く穏やかな尊厳死を迎えさせるため、祖父を早く弱らせるための過剰なほどの親切な介護をすることを思い付き、筋力を付けさせようと父親に厳しくしていた母親の反対を振り切って、祖父を手厚く介護する生活を始めるのでした。

楓さんのブログで筋肉をつけるための「破壊と再構築」の言葉を読んだ健斗さんは、筋力トレーニングを積んで、祖父を背負って長い階段を上ることができるくらいの体力をつけたのですが、祖父の言動に苛立つことも増えていきました。亜美さんと大輔さんに事情を話して祖父を殺す気なのかと怒られたある夜、早めに帰宅した健斗さんは、神経痛でいつもは杖を突きながらよぼよぼと歩いている祖父が杖なしで鼻歌を歌いながら軽快にリビングに歩いていく姿を見かけ、驚いて声をかけました。リビングの祖父は、慌てたように杖を突いて、寝る時間だからと部屋に戻ったのですが、台所には食べかけのピザと飲みかけのコーラが置いてありました。

祖父は元気なのではないかという疑いを持ったまま直接祖父に訊くことができない健斗さんは、戦時中の「桜花」に乗って死んだ仲間たちのことを話し、「桜花」に乗らずに終戦を迎えた自分の人生はおまけのようなものだからもういつ人生が終わってもいいと言っていた祖父が、その娘である母親たちには「桜花」に乗る予定だったことは一度も話していないことを知り、祖父への疑惑をさらに深めて事情を訊くためにデイサービスの施設へ急いだのですが、そこにいた祖父は元気そうに女性職員にセクハラまがいのこともしていました。

祖父を車に乗せた健斗さんは、帰宅の途中、祖父に頼まれて崖のような場所に立つ神社へ行き、車椅子に乗った祖父がお参りを済ませた後、急な階段から車椅子ごと祖父を突き落とそうとしていたようでもあったのですが、健斗さんという孫に出会えたことを感謝する祖父から、じいちゃゃんがいなくなった後はどうするのかと訊かれて、手を止めていました。

祖父は、誕生日を祝うために家に来て、健斗さんが無職のまま祖父の介護を理由にして何も考えていないと怒る息子に、健斗は真剣に考えていると激怒していました。健斗さんは、自分の計画に気付いているかもしれない祖父と以前のようには気軽に向き合うことができなくなっていたのですが、今日は楽しい日だったとお風呂に入った祖父がしばらくして浴槽で溺れていることに気付くと、浴槽に入って慌てて祖父を抱き上げていました。

健斗が助けてくれた、と笑う祖父を見て、健斗さんは、じいちゃん、ごめんなさい、と祖父を抱きしめて泣いていたのですが、この場面がとても良かったです。

それから健斗さんは勉強をして行政書士の資格を取得し、医療品関係の会社の社長に気に入られて就職することになったようでした。亜美さんとも円満に別れていました。そして、新しい会社の寮で暮らすために実家を出ることになった健斗さんを、車で母親と駅に見送りに来た祖父は、じいちゃんのために戻って来なくてもいいからと励まして、手を振って見送っていました。

脚本は香坂隆史さん、演出は川野秀昭さんでした。音楽はサンガツというバンドの方でした。

私は作品のタイトルを聞いたことがあるというだけで、内容を知らずに見始めたのですが、面白くて、とても良かったです。

原作の羽田さんの小説を未読なので、その作品とドラマの物語とを比較することはできないのですが、生きる目的のようなものを見つけることができずに死にたいと思っていた孫が、死にたいが口癖の要介護の祖父を弱らせるために親切にしていたのが、反対に祖父の存在に救われる話だったのかなと思います。

ただ、後半の祖父の昭一さんの言動には謎があって、孫の健斗さんに嘘を付いていたのかどうかはっきりとはしないのですが、健斗さんの計画には気付いていたのかなと思います。最初から気付いていたというよりは、途中から気づいていたのかもしれません。

祖父の「死にたい」の口癖が少しずつ減っていき、元気そうになっていった時には、それはもしかしたら孫の健斗さんが優しくしていたからなのかなとも思いましたし、それもあるかもしれないのですが、最初から実はそれほど「要介護」の状態というほどではなかったということでもあるのかもしれません。人間魚雷の「桜花」のことも、神経痛のことも、何が本当なのかはドラマを見ている私(あるいは主人公の健斗さんにもでしょうか)にははっきりとは分からなかったのですが、健斗さんという孫の存在が祖父の生活を変え、祖父の存在が健斗さんを救ったことは事実だったのだと思います。

未来の新生活に対して「不安しかない」という健斗さんを乗せた電車が街を離れて行く場面で終わっていたのですが、健斗さんが人生に対して完全に前向きになっていない終わり方も、良かったように思います。ドラマの中のことなのですが、大丈夫かなと少し心配になりましたし、大丈夫だといいなと思いました。

前向きに生きるためには、何にせよ、目標や使命感や生き甲斐や楽しみが必要なのかなと思いますが、それのはっきりとしたものを見つけることは、私には意外と難しいことであるように思えます。現状を破壊して新しく生きるために再構築するということが、私にも少しはできるといいのかなと、何となく思いました。

ともかく、柄本佑さんの演じる孫の健斗さんと、山谷初男さんの演じる「じいちゃん」がとても良かったです。真意がいまいちよく分からない感じというか、二面性ということではないけれど一面的ではないという感じも、人間らしい感じがしました。いつかは原作の本も読んだほうが良いのかもしれないとも思いますが、少なくとも昨夜のドラマは、私も見ることができて良かったです。
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Author:カンナ
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