「嫌われる勇気」第1話と、三島由紀夫の未発表のテープのこと

NHKの「クローズアップ現代+」の映画「この世界の片隅に」の特集は録画をしておくことにして、昨夜の10時からはフジテレビの新ドラマ「嫌われる勇気」の第1話を見ました。初回は15分拡大版で放送されていました。

ドラマの原作は、アルフレッド・アドラーの「アドラー心理学」を解説する岸見一郎さんと古賀史健さんの著書『嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え』だそうです。

『嫌われる勇気』を私は未読なのですが、本屋さんで少しだけ立ち読みをしたことがあります。手に取って中ほどのページを開いた時、「幸せになる勇気がない」と書かれているのを読んで、私もそうなのかもしれないなと、はっとしました。それ以降、ちゃんと読んではいないのですが、数か月前のNHKのEテレの「100分de名著」(良い番組です)でも『嫌われる勇気』が扱われていたので、その時にはもう少しだけその本を読んだような気持ちになりました。

昨夜のフジテレビの新ドラマ「嫌われる勇気」は、その「アドラー心理学」の解説を取り入れた“自己啓発刑事ドラマ”でした。自己啓発本の要素と事件の犯人を捜し出して逮捕する刑事ドラマの要素が合わさったドラマというか、自己啓発本の内容を刑事ドラマで表現したドラマというか、そのような感じのドラマという印象でした。

主な登場人物は、アドラー心理学を実践する捜査一課8係の刑事で主人公の庵堂蘭子(香里奈さん)、その相棒となった新人刑事の青山年雄(加藤シゲアキさん)、係長の半田陽介(升毅さん)、刑事の浦部義孝(丸山智己さん)と小宮山正明(戸次重幸さん)と三宅隆俊(桜田通さん)、鑑識課の梶準之助(正名僕蔵さん)と村上由稀菜(岡崎紗絵さん)、帝都大学医学部の法医学教室の監察医の相馬めい子(相楽樹さん)、庵堂さんを教え子だという帝都大学の犯罪心理学の教授の大文字哲人(椎名桔平さん)、その助手の間雁道子(飯豊まりえさん)でした。

脚本は徳永友一さん、演出は池澤辰也さんでした。オープニングテーマはNEWSの「EMMA」という曲で、エンディングテーマは大塚愛さんの「私」という曲でした。

庵堂さんは、中学生(桜田ひよりさん)の頃、森の中で誘拐されたことがあるようでした。庵堂さんの、自分は自分、他人は他人、という割り切った性格は、事件に巻き込まれた過去も影響しているのでしょうか。

第1話の事件は、モデルの女性二人がファッション誌の表紙に見立てて殺害されているのが発見される、というものでした。その雑誌のモデルの一人である天野さん(南野陽子さん)が主催する昆布茶教室に通うことにした庵堂さんは、天野さんの取り巻きの中心にいる植村さん(石田ひかりさん)や本心を言うことができない鈴村さん(青山倫子さん)たちを観察しながら、犯人と疑われるようになった天野さんをも毒殺した犯人にたどり着いていきました。

「それはあなた自身の課題であって私の課題ではありません」とか、「明確に否定します」とか、いろいろはっきりと言う庵堂さんのキャラクターが強いので、庵堂さんの個性を面白いと思うことができるかどうかが、このドラマのポイントかなとも思います。

犯人の犯行動機や事件関係者たちの言動は、「悩み相談」にありそうなものでもあるので、同じ境遇にいるような方が見るなら、悩みや解決方法などに共感をすることができるかもしれません。

庵堂さんに振り回される青山さんが犯罪心理学者の大文字教授から話を聞く場面は、まさに「100分de名著」の本の内容紹介映像の一場面のようにも見えました。

庵堂さんや大文字さんの場面には、台詞の中のアドラー心理学用語?の字幕が多用されていて、分かりやすさのためかもしれないのですが、私には少し過剰な演出であるようにも思えてしまいました。心理学用語などの字幕が多いと、(一応)刑事ドラマであるのに、刑事ドラマの要素よりも、自己啓発本の要素の方が強調されてしまうような気がします。

でも、第1話は最後までそれなりに楽しく見ることができたような気がします。私はあまり「自己啓発本」というジャンルの本を読まないほうなのですが、このようにすれば今よりももう少し楽に生きることができるかもしれないという方法が具体的に分かるのだとするなら、面白そうに思います。「アドラー心理学」は「勇気」の心理学なのだそうで、ドラマの鈴村さんは、最後には天野さんの昆布茶の味について、まずかったと植村さんたちに言うことができました。

庵堂さんは、嘘が嫌いで、正直に何でも言うことのできる人ということですが、思ったことを全部口に出してしまうようなおしゃべりな人ではありませんでした。笑顔もほとんどありません。庵堂さんのように自由に正直に生きることができるといいなとも思うのですが、私にはまだできそうにないような気がします。おいしくないものをおいしいと言うことがなかったとしても、本人に向かってまずいと言うことはできそうにないです。何かを見たり聴いたりした時に全く面白くなくても、周囲の人たちが楽しそうにしていていたら、その人たちの気分を害さないように気を使って、本心をごまかして少しは適当に笑って見せてしまうかもしれません。

「嫌われる勇気」のドラマを見たことで何かが変わるかどうかは分かりませんが、次回もこの自己啓発刑事ドラマを見てみようかなと思います。


ところで、このドラマの後に見たTBSの「NEWS23」では、昨日の朝に報道されていた、TBSの社屋内で発見されたという作家の三島由紀夫の生前の肉声のテープのことが伝えられていました。テープは、三島由紀夫さんと2010年に亡くなったイギリスの翻訳家のジョン・ベスターさんとの対談を収めたものだそうで、45歳の三島由紀夫が市ヶ谷の陸上自衛隊の駐屯地で割腹自殺をする約9か月前の1970年の2月の、『豊饒の海』の第3巻の『暁の寺』の朝6時に完成した日に収録したものだということでした。公表する予定にあったらしいものが「使用禁止」に指定されて未発表となった理由は不明だそうですが、約9か月後の自決までの経緯と何か関係があるのかもしれません。TBSの社内でも、研究者の間でも、テープの存在は知られていなかったそうです。テープの音声の三島さんは、「自分に肉体ができてから死の位置が肉体の外から中に入ってきた気がする」とか、「僕の小説よりも僕の行動のほうが分かりにくいんだという自信があるんです」とか、明快な口調で話していました。

三島由紀夫は、戦後の日本社会にある「偽善」について「平和憲法」に根本理由があると考えていたそうで、一部だけ紹介されていたテープの音声の中で、今の「憲法」についても話していたのですが、「第9条」自体を悪いと言っているのではありませんでした。

テープの中の三島さんは、「憲法9条ってのは、全部いけないと言ってるんじゃないんです。つまり、人間が戦争をしないということはとても立派なことです」と言い、「(第9条の)第2項がいけないでしょ。第2項がもう念押しの規定をしているんですよ。アメリカ軍がね。念押しの規定をしているのを日本の変な学者がそれを逆解釈して自衛隊を認めているわけでしょ。そのようなことをやって日本人はごまかしごまかし生きてきた。二十何年間。僕は大嫌いなんですよ、そういうことは。僕は人間がそうやってごまかして生きていくことは耐えられない。本当に嫌いですね」と話していました。

TBSでは、このテープの音声を三島由紀夫さんと親交のあった美輪明宏さんにも聴いてもらったようでした。美輪さんは、「何て無防備なんだろう、珍しいですよね、本当に素で話していらっしゃる。日本少年のモデルみたいに純粋な本当に人間の一番純なところをそのまま持ち続けて亡くなった方だということが、本当にこれを聴いていますとつくづく思い出されて、とても懐かしゅうございました」と話していました。
 
番組の特集の最後に紹介されていた、「生きているうちは人間はみんな何らかの意味でピエロです」、「人間は死んだ時に初めて人間になる。人間の形をとるって言うんです。なぜかって運命がヘルプしますから。運命がなければ人間は人間の形をとれないんです。ところが生きているうちはその人間の運命が何か分からないんですよ」という三島由紀夫さんの言葉も、印象的でした。そうかもしれないと思いました。同時に、この9か月後に自決をした三島さんは、何かとても生き急いでいたのかもしれないという感じもしました。三島さんのこの言葉が本当なら、三島さんは早く完全な偽りのない人間になろうとしたということなのかもしれません。三島さんの作品を少ししか読んだことのない私には、三島さんのことは分からないかもしれないのですが、何となく、そのような感じがしました。

昨夜の「NESW23」のこの特集を見ることができて良かったです。三島由紀夫さんと親交のあったという瀬戸内寂聴さんやドナルド・キーンさんのような方にも、この音声のことを聞いてほしいようにも思いましたし、いつかこの約1時間20分という対談のテープの完全版が放送されるといいなと思いました。
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