「時空超越ドキュメンタリードラマ 江戸城無血開城」

NHKのBSプレミアムの「ザ・プレミアム」の「時空超越ドキュメンタリードラマ 江戸城無血開城」を見ました。

今年の元日に放送されていたドキュメンタリードラマで、何となく気になって録画をしておいたものをようやく見ることができたのですが、とても面白かったです。

幕末、倒幕軍を率いる薩摩の西郷隆盛と幕臣の勝海舟とのトップ会談が行われたことにより、江戸の町が戦火に巻き込まれる事態が未然に防がれたという、1868年(慶応4年)3月15日の江戸総攻撃計画中止による歴史に名高い「江戸無血開城(江戸城明け渡し)」を、19歳の時に来日し、大英帝国の駐日英国公使パークスの通訳官を務め書記官になった、25歳の外交官のアーネスト・サトウの視点から伝える、ドラマとドキュメンタリーで構成された番組でした。

私はアーネスト・サトウさんのことを、日本史の授業で習ったことがあるくらいにしか知りませんでした(「サトウ」という名前を日本の「佐藤」のようだなとも思っていたのですが、本名であるようでした)。『英国策論』という論文を新聞「ジャパンタイムズ」に投稿して“志士”たちの間に広めて日本を貿易相手国として開国させたいパークスの政策を後押しし、アジアを回って27年後三度来日して新政府軍の人々が作った明治の日本で後に第6代駐日イギリス大使になった、というアーネスト・サトウさんの日記には、幕末の物語に登場する有名な歴史上の人物が、薩長土肥の側や江戸幕府の側に関わらず、たくさん登場しているのだそうです。

今から約150年前の幕末のドラマの主な登場人物は、アーネスト・サトウ(満島真之介さん)、幕臣の勝海舟(高橋和也さん)、薩摩藩士の西郷隆盛(佐藤二朗さん)、薩摩の寺島宗則(宇野祥平さん)、幕府の老中の阿部正外(千葉哲也さん)、薩摩藩士の五大友厚(川口覚さん)、幕臣の山岡鉄舟(増田修一朗さん)、大名の立花種恭(襄ジョンミョンさん)、長州藩士の木梨精一郎(松浦祐也さん)、イギリス公使のハリー・パークス(マーク・チネリーさん)、フランス公使のレオン・ロッシュ(イアン・ムーアさん)さんでした。

脚本と演出は佐野達也さんでした。翻訳は、アーネスト・サトウ研究者のイアン・ラックス教授によるものだそうです。

番組によると、アーネスト・サトウさんは、今の港区の高輪の泉岳寺の前の辺りに住んでいたそうです。ドラマのアーネスト・サトウは、上司のパークスと連絡を取りながら、江戸の勝海舟と西郷隆盛のお屋敷を行ったり来たりしていました。勝さんと西郷さんの部屋のセットが隣同士なっていたのも演出として良かったように思います。

満島真之介さんの演じる日本語のよくできる“青い目の志士”のアーネスト・サトウもとても良かったですし、高橋和也さんの演じる江戸弁の粋な勝海舟さんも、佐藤二朗さんの演じる柔と剛の二面性を垣間見せる以外と怖そうな西郷隆盛も、とても良かったです。

スタジオでは、タイムスリップをして来たアーネスト・サトウさんと、歴史の専門家の方が話していて、そのような趣向が何となくNHKらしい感じではありましたが、満島真之介さんのアーネスト・サトウさんになりきって答える感じも楽しく思いました。

アーネスト・サトウさんは、子供の頃から頭が良かったそうです。当時のイギリスで移民の子という立場から出世をするために外交官を目指し、遠い日本へ来たようでした。来日してからは、日本語を研究して、英和口語辞書も作っていたそうです。すごいです。三省堂でその一冊が紹介されていました。私は未読なのですが、英和辞書だとしても、幕末の頃の江戸で使われていた日本の言葉が分かって普通に読むのにもとても面白そうだなと思いました。「love story」は「人情話」とか、「emergency」は「いざ鎌倉」とか、なるほどなと思いました。イギリスにはない「下足番」を訳したりもしたそうです。アーネスト・サトウさんはスパイ扱いを受けなかったようなのですが、それには、日本の人々に馴染もうとするアーネスト・サトウさんの性格の柔軟さのようものがあったのかもしれません。

ドラマによると、アーネスト・サトウさんは、江戸の町を好きで、火の海から守りたかったようでした。幕府と敵対し武力攻撃を辞さない西郷隆盛も、江戸の町を戦火から守りたいという気持ちはあったようですし、反乱軍から江戸の町や人々を守りたい勝海舟も江戸を焼き払いたいわけではありませんでした。アーネスト・サトウさんは、西郷さんに江戸の総攻撃を辞めてほしいと頼み、西郷さんが暗に示したことを受けて、公使のパークスに急いで手紙を送りました。手紙を受け取り、すぐに理解したパークスは、江戸総攻撃を行うなら大英帝国は新政府軍を支援しないと伝え、勝さんと一緒に会談を引き延ばして大英帝国の決断を待っていた西郷さんは、大英帝国がそう言うのならと、「武士が一度抜いた刀を鞘に収めるための大義名分」を得て、江戸総攻撃を中止することができたようでした。その中止の知らせにアーネスト・サトウさんが喜んでいる感じも良かったです。ドラマを見ていた私もほっとしました。

太平洋戦争の敗戦後の日本社会には、アメリカのGHQの影響が大きいようですが、幕末の内戦の後の、貿易国として開国し富国強兵を目指した明治の日本社会には、イギリスの影響が大きかったのかもしれないなと思いました。日本の社会を実際に作っているのは日本人だとしても、今から約150年前の明治時代になる頃やそれ以降の日本社会のその背後には、外国人の思惑がたくさん動いているのかもしれません。

大英帝国の利害の考えがあったのだとしても、“青い目の志士”(ドラマのようにご自身でそう言っていたのでしょうか)として当時の日本の政治に関わっていたアーネスト・サトウさんの働きかけが「江戸城無血開城」につながり、江戸の町と市民たちの命が守られたのだとしたなら、それはやはりすごいことだと思います。

最後には、アーネスト・サトウさんが植樹をしたという駐日英国大使館の前の桜の木や皇居のお堀の千鳥ヶ淵の桜の木が紹介されていました。

「時空超越ドキュメンタリードラマ」というタイトルの言葉を最初に見た時には、何なのだろうと思いましたが(昔の「時空警察」という歴史探求ドラマのことを少し思い出しました)、ドキュメンタリードラマ自体は面白かったですし、解説も分かりやすくて、楽しい番組でした。私も見ることができて良かったです。
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