「朗読屋」

NHKのBSプレミアムの山口発地域ドラマ「朗読屋」を見ました。NHK山口放送局制作のドラマです。

放送時間には見ることができなかったので、録画をしておいたものを後で見ました。私はこのドラマの宣伝を見ていなかったので、山口発地域ドラマということと、朗読屋とは何だろうというくらいの気持ちで見始めたのですが、とても良かったです。

仕事に忙しくしていて妻に家を出て行かれた茨城出身の西園寺マモル(吉岡秀隆さん)は、元の仕事を辞め、大学の庭を清掃する仕事に就いていたのですが、年下の同僚の角田(前野朋哉さん)からは仕事ができないと呆れられていました。妻がいなくなってから眠れない日が続き、倒れてしまったマモルさんは、うつ病の初期症状と診断され、清掃の仕事も辞めることにしました。そのようなある日、元妻のサユリ(声・富岡英里子さん)から電話がかかってきました。サユリさんは、悲しいという気持ちがよく分からないと話すマモルさんを心配しながら、マモルさんが行きたがっている「24時間図書館」が実在することを教え、忘れた物があるけれど見つけたら必ずすぐに捨ててほしいと伝えて電話を切りました。

夜の街にバイクを走らせたマモルさんは、カエルに驚いて止まり、24時間営業の「スサ図書館」を見つけ、本を借りることにしました。司書の沢田ひとみ(吉岡里帆さん)に夜の図書館で働きたいと訊いてみたマモルさんは、ひとみさんから、図書館のパートの募集は今はしていないけれど「朗読屋」という仕事があると教えられ、声がいいからと褒めるひとみさんの教えてくれた場所へ、漁港の漁師の倉田さん(山下真司さん)の船で向かうことになりました。

そこは、孤島の洋館のお屋敷でした。朗読屋を探しているのはそのお屋敷の主の老婦人・小笠原玲子(市原悦子さん)でした。玲子さんのお世話役の早川(緒川たまきさん)に中原中也の『山羊の歌』の本を渡され、「サーカス」を朗読したマモルさんは、オーディションに合格し、この声を探していたと涙を拭く玲子さんに中原中也の詩の朗読屋として雇われることになりました。

ひとみさんからは干乾びたゾンビみたいだと心配され、朗読に厳しい早川さんからは朗読の勉強をするようにと言われたマモルさんは、中原中也記念館へ行き、戦死した父親の声を探している玲子さんへの朗読を続けながら、中原中也の詩に託された悲しみの気持ちを少しずつ自分にも引き受けていきました。

倉田さんに勧められた港の定食屋でサユリさんの妹(市川実日子さん)に会ったマモルさんは、姉がいなくなっても寂しくないのかと呆れられていました。その後、図書館の落とし物の棚に小さな青い手帳を見つけたマモルさんは、サユリさんが見つけたらすぐに捨ててほしいと言っていた忘れ物はその青い手帳であることに気付きました。サユリさんがその手帳を持っていた光景を思い出したのでした。手帳を引き取ったマモルさんは、手帳を見るべきか見ずに捨てるべきか迷い、サユリさんの妹に相談に行き、サユリさんの妹から、サユリさんが数か月間妊娠していたということを教えられました。マモルさんは、そのことにも少しも気付いていなかったようでした。サユリさんの妹は、姉はその手帳をあなたに見てほしいということではないかと話し、マモルさんは手帳のページを開きました。

マモルさんは、その夜、倉田さんたちに勧められたお酒を頑張って飲み、吐きながら泣き崩れました。泣きながら「汚れちまった悲しみに」を口ずさんでいたマモルさんは、闇の中に中原中也の幻を見ていました。

病床に伏せることが多くなった玲子さんは、父親が幼い自分とかくれんぼをしている間に姿を消したのだということをマモルさんに話し、その後父の戦死の知らせが届いたけれど、今でもまだお屋敷のどこかに隠れているのではないかと思っていると言いました。詩の朗読を頼まれたマモルさんは、青い手帳を開き、玲子さんに「月夜の浜辺」を朗読しました。静かに聴いていた玲子さんは、私はもう十分に生きた、もういいよ、と言ってほしいとマモルさんに頼み、マモルさんは、もういいかい、と呟く玲子さんに、もういいよ、と返事をしました。

朝、24時間図書館の机で目を覚ましたマモルさんは、中原中也を「中也さま」と呼ぶ早川さんの姪でもあったひとみさんから、玲子さんが息を引き取ったことを教えられました。玲子さんを穏やかに看取るという使命を果たすことができた早川さんは、ひとみさんによると、玲子さんに譲られた遺産で遠い外国へ旅行に行ったのかもしれないということでした。

マモルさんは、これからどうするのかとひとみさんに訊かれて、妻を探そうと思うと答えていました。ひとみさんに言われた通りに、マモルさんが水をたっぷりあげて太陽の光に当てていたベランダのサボテンは、小さな花を咲かせていました。

脚本は荻上直子さん、音楽は光田康典さん、演出は関友太郎さんでした。

サボテンの花を見たマモルさんの「あっ」と驚く声で終わっていたところも、良かったです。

元妻のサユリさんは、家を出て行っただけで、亡くなっているのではなく、生きているのですが、どちらかはっきりとしないという感じでもありました。妻も仕事も失っているマモルさんが、妻の出身の山口県で、山口出身の詩人の中原中也と出会い、生きるということと向き合い、少しずつ救われていく物語でした。

詩人の中原中也の幻を演じていたのは、詩人のカニエ・ナハさんなのだそうです。中原中也の詩は、今、NHKのEテレの「100分de名著」でも紹介されていますが、読む人の心に残る、長く読み継がれていく詩を作る人は本当にすごいなと思います。

悲しみの感情を失くしていたマモルさんは、中原中也の詩に触れて、その感情を取り戻すことができたようでした。吉岡秀隆さんの声の詩の朗読も良かったですし、玲子さんを演じる市原悦子さんの声も、とても良いなと改めて思いました。カエルがマモルさんを導いていたようだったのも含めて、全体的にファンタジーの雰囲気があったのですが、それには市原悦子さんの声の存在感が大きかったようにも思いました。

緒川たまきさんの演じる毅然とした独特な早川さんと吉岡秀隆さんの演じる少し気の弱そうなマモルさんとのやり取りも、面白かったです。

山口県の豊かな海や川の風景も美しくて良かったです。不思議な雰囲気のある、面白くてすてきなドラマでした。
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Author:カンナ
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