ドラマ特別企画「破獄」

昨夜、テレビ東京で放送されていた「テレビ東京開局記念日」のドラマ特別企画「破獄」を見ました。

夜10時からは日本テレビの新水曜ドラマ「母になる」の初回もあったのですが、放送時間にはこちらの2時間と少しのドラマを見ることにしました。

ドラマの原作は、2006年に亡くなった吉村昭さんの長編小説『破獄』です。私は未読なのですが、そのタイトルは聞いたことがありました。過去にも映像化されるなどしたことのある作品なのかもしれません。何となく怖そうにも思えたのですが、面白そうに思えて、見るのを少し楽しみにしていました。

ドラマは、昭和16年12月に日本軍がアメリカのハワイの真珠湾を攻撃した翌年の昭和17年6月の深夜、秋田刑務所の囚人の佐久間清太郎(山田孝之さん)が独房の天井を破って脱獄し、3か月後、東京の小菅刑務所の看守部長を務めていた浦田進(ビートたけしさん)の自宅を訪ねて来る、というところから始まっていました。佐久間さんは、信頼していた浦田さんに、囚人を人間扱いしない秋田刑務所の看守を訴えてほしいと頼んだのですが、浦田さんは佐久間さんが足を洗いに行っている間に通報し、佐久間さんは再び収監されることになりました。

日本の戦局が悪化し始めた昭和18年、佐久間さんは小菅刑務所から網走刑務所へ移送されることになったのですが、同じ頃、浦田さんも網走刑務所への転任を命じられました。浦田さんには、大正11年の関東大震災の発生時に千人の囚人たちを無事に避難させ一人の脱走者も出さなかったという功績があったのですが、その仕事のために家族を助けに行くことができず、妻と長男を震災の火事で亡くしたという辛い過去があり、一人助かったものの左脚を悪くした長女の美代子(吉田羊さん)との間にも少し距離ができていました。

定年間近の網走刑務所の所長の貫井千吉(橋爪功さん)は、佐久間を絶対に逃がしてはならないと看守たちに命じ、浦田さんはそこの看守長として、看守部長の泉五郎(勝村政信さん)や佐久間担当の野本金之助(中村蒼さん)や藤原吉太(池内博之さん)と共に、自由を求めて繰り返し脱獄を試みる囚人の佐久間さんと対峙していくことになるのでした。

脚本は池端俊策さん、音楽は福廣秀一朗さん、監督は深川栄洋さんでした。

太平洋戦争開戦後の日本の社会を生きる刑務所の看守たちと無期懲役で服役中の一人の囚人との脱獄を巡る闘いの日々を描いた物語でした。

時代背景を伝えるものとして、当時の実際の白黒の写真や映像が時々登場していました。“豪華キャスト”ということもあるのかもしれませんが、映画のようなスペシャルドラマだったように思います。

佐久間を特別な鉄の手錠や足枷で拘束し続ける網走刑務所の独房の環境の劣悪さや不潔さの演出もすごくて、実際にはもっと酷かったのかもしれないと思いますが、最近のドラマの中では挑戦的なものであるように思えました。お風呂に入れてもらえない夏の独房の佐久間さんの手首や足首の傷からウジ虫が湧いているという描写も衝撃的でした。

佐久間さんは、青森出身で、昭和8年に仲間と雑貨店で盗みを働き、仲間を助けるために追って来た店主を棒で殴って殺害したということのようでした。佐久間さんに脱獄を思い止まらせたい浦田さんは、佐久間さんの心を開こうと、青森の農村で幼い娘と暮らす佐久間さんの妻の光(満島ひかりさん)に会いに行くのですが、光さんは面会へ行くこともや手紙を書くことも拒否し、あの人は私の神様だ、脱獄してでも早く帰ってきてほしいと浦田さんに訴えていました。

満島ひかりさんの演じる佐久間さんの妻の光さんも、とても良かったです。光さんは、父親の借金のかたで遊郭へ売られ、お客を取っても少しも借金が減らないという中で蟹工船の下働きをしていた佐久間さんと出会い、ある日、自由になれと大金を渡され、この人は私の神様だと思うようになったということでした。しかし、その大金が原因で佐久間さんも借金地獄に陥ってしまい、借金を一気に返そうとギャンブルにも手を出すようになってしまったようでした。

ビートたけしさんの演じる浦田看守長の厳しさに芯の通った雰囲気も良かったのですが、山田孝之さんの演じる佐久間清太郎の自由を求め続ける信念を曲げない迫力にも驚きました。

北海道の網走の寒さを私は知らないのですが、布団まで霜が出るほど凍るというのは、すごい寒さなのだろうなと思いました。浦田さんは、佐久間さんに塩湯を持って行っていましたが、お湯につけた手が冷えたらそのまま凍ってしまうのではないかとも思えました。

佐久間さんは超人的な身体能力(手錠を引きちぎるほどの怪力でもありました)と知力の持ち主で、どうしてもっと普通の生き方ができなかったのだろうと、少し不思議な感じもしたのですが、物語の中には描かれていなかった、佐久間さんの生まれた時代や育った環境などが関わっているということなどもあるのかもしれません。

言うことを聞かない佐久間さんにノイローゼになりそうなほど悩まされ、赤紙で招集されて戦死した、中村蒼さんの演じる若い看守の野本さんの場面も良かったです。私はよく知らないのですが、戦時中、囚人たちは出兵しなかったのでしょうか。出兵していたら戦地で逃走する囚人が続出したのかもしれないとも思いますが、刑務所の看守の人たちは招集されて出兵していたようだったので、どうなのかなと少し気になりました。あるいは、もしも囚人が出兵しないとするなら、出兵しないために罪を犯して囚人になったという人も、中にはいたのかもしれないなと思いました。

「鳥籠の中の鳥」に象徴される人間の不自由さについて、浦田さんは、この国にいる間は自由になることはできないと、自由を求めて脱獄を繰り返す佐久間さんの行動を愚かだと考えていたのですが、本当には、この国を出て外国へ行っても、宇宙へ行っても、自由になることは難しいかもしれません。魂と呼ばれるものが自分の身体の中に閉じ込められているように、自由を封じ込める「鳥籠」は何重にもなっているのではないかと思います。

昭和19年の冬、お味噌汁で釘を腐食させるということをして網走刑務所を脱獄した佐久間さんは、敗戦の翌年の昭和21年、北海道のある村で捕まり、札幌刑務所へ送られました。アメリカのGHQの指導により、刑務所の運営はそれまでよりも囚人たちの基本的人権が尊重されるようなものへ変わっていったようでした。

殺人罪で捕まった佐久間さんは、札幌刑務所の看守の浦田さんに正当防衛を主張したのですが、昭和22年の3月、死刑を宣告されました。佐久間さんは、塩湯を持ってきた浦田さんと網走刑務所のことを思い出すと懐かしそうに話していたのですが、その後脱獄し、翌年の1月に見つかって連れ戻されたようでした。しかし、裁判で傷害致死事件の正当防衛が認められ、死刑囚になるのは免れたようでした。

東京の府中刑務所へ移送されることになった佐久間さんが、浦田さんから渡された青森のリンゴを見て、この辺りに自分の家があると、トラックの隙間から青森の妻と娘の家を確認しようとしていた場面も良かったです。佐久間さんは、府中刑務所では模範囚として過ごし、昭和36年に仮出所したそうです。

ドラマのナレーションは、吉田羊さんの演じる浦田さんの娘の美代子さんだったのですが、退職した父親と一緒に東京で暮らすことになった美代子さんによると、仮出所後時々浦田さんにも会いに来ていた佐久間さんの音信は、その後しばらくして途絶えたということでした。

そのままドラマは終わっていたので、佐久間さんがどうなったのかということは描かれていなかったのですが、また逮捕されたとも言われていなかったので、佐久間さんはついに自由になった、ということなのかなとも思いました。浦田さんの言っていた通り、最初から「模範囚」になっていれば佐久間さんはもっと早く出所できたのではないかとも思いますが、佐久間さんには囚人を人間として扱わない看守たちへの反抗心があったということなので、もしかしたらですが、佐久間さんの「脱獄(破獄)」は、佐久間さんの人間としての尊厳の強さを表していたのかもしれないなとも思いました。

江戸時代の、八丈島に流された人の「島抜け」も大変なことだったのだろうなと思うのですが、現代の日本では、犯人が移送中に逃走するなどの事件は時々報道されていても、犯人が脱獄したという報道はなされていないように思います。脱獄は、現代ではさすがに難しいのかもしれません。ドラマ(小説)の佐久間清太郎さんのモデルは、「昭和の脱獄王」と呼ばれたという白鳥由栄という人だそうです。当時の刑務所でも脱獄は難しいと思われていただろうと思うので、現代の刑務所でももしかしたら脱獄に成功する人はいるのかもしれませんが、今の刑務所では囚人となっている人の人権が初めから尊重されていて、施設内も清潔ということですし、その点では、あえて脱獄というリスクを冒す人はいないかもしれません。

昨日の「破獄」は、薄暗い画面の、少し重めのドラマでしたが、見応えのある良いドラマでした。私もこのドラマを見ることにして、最後まで見ることができて良かったです。
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