ドラマ「たからのとき」

NHKのBSプレミアムで放送され、録画をしておいた、福岡放送局制作のドラマ「たからのとき」を見ました。福岡発地域ドラマです。

ドラマの舞台は、福岡の博多から電車で2時間の場所にあるという山の中の東峰村でした。冒頭の水と棚田の風景が、とても美しかったです。東峰村は、棚田と焼き物(小石原焼や高取焼)の里なのだそうです。

主人公は、室井たから(寺島しのぶさん)でした。たからさんは、小さな金型工場を経営する夫の室井啓介(山崎銀之丞さん)と、高校生の娘の娘のみのり(藤野涼子さん)と3人で暮らしていたある日、村で喫茶店を経営する友人の梶原真知子(美保純さん)にディレクターにならないかと誘われ、「とうほう村テレビ」というケーブルテレビを秋に立ち上げてその村民ディレクターになり、自ら撮影を行って村の情報を発信していました。

夫の啓介さんはたからさんの仕事を応援していたのですが、電車で片道約2時間の高校に通うみのりさんは、慣れないケーブルテレビのことで一杯の母親に不満を感じていました。都市部の大学に進学して早く村を出たいと考えていたみのりさんは、進路面談のお知らせを母親に渡したのですが、面談の当日、ケーブルテレビの生放送には出演しながら、面談のことをすっかり忘れて学校に来なかった母親に、先生に嫌われて内申の点が悪くなったらどうするのかと怒っていました。

たからさんは、面談のお知らせをみのりさんに渡されてからすぐにカレンダーに書き込んだのですが、それをすっかり忘れてしまっていました。カレンダーを見て不思議に思ったたからさんは、病院で検査を受けることにしたのですが、その結果、若年性の認知症であると医師に告げられました。

たからさんが林の中で泣いていると、村の松本せつ(佐々木すみ江さん)が声をかけてきました。松本さんと亡き夫の思い出の場所をたからさんがケーブルテレビで放送したことを、松本さんは感謝していました。たからさんは、記録してあるからと、その放送時の映像を松本さんに渡すことを提案すると、松本さんは喜んで、それは私の宝物になると言いました。

その言葉を聞いてはっとしたたからさんは、家族との幸せな思い出の記憶を映像に記録し始めました。夫に若年性認知症と診断されたことを打ち明けたたからさんは、大学受験を控えた娘には黙っていることにしようと決めました。そうして、娘と遊んだ川やお参りに行った岩屋神社(御神体の宝珠石は隕石なのだそうです)、家の中の様子や縁側から見える景色や家族が使っている食器などを撮影していました。

みのりさんの学校の友人たちは、インターネットの動画で「とうほう村テレビ」のことを知り、みのりさんの母親がディレクターを務めていることも知りました。みのりさんは友人たちの前では笑ってやり過ごしていたのですが、帰宅して、家族の思い出をケーブルテレビで話していた母親に恥ずかしいから辞めてほしいと母親を責めると、父親に叩かれてしまいました。

たからさんは、家を飛び出したみのりさんを捜して、真っ暗な夜道を走り回り、駅のベンチにいたみのりさんを見つけました。たからさんから若年性認知症のことを聞いたみのりさんは、どうして教えてくれなかったのかと動揺していました。家に帰って自分の部屋に籠もっていたみのりさんは、父親から、たからさんの出演するケーブルテレビを見てみるよう言われました。

たからさんは、とうほう村テレビで村民アシスタントをしている友人の真知子さんの喫茶店を訪れ、認知症のことを話しました。話を聞いた真知子さんは、私のことは全部きれいに忘れていいから、大切なことだけ憶えておいて、でも私は絶対にたからさんのことを忘れないからと励まし、一緒に写真を撮りました。

それから何日かしたある日、自宅にいたみのりさんは、父親から、お母さんがいなくなったと聞かされました。とうほう村テレビにも来ていませんでした。お母さんを捜そうと飛び出したみのりさんは、とうほう村テレビの生放送に乱入し、真知子さんの助けを得て、母親を捜してくださいとテレビを見ている村の人たちに呼びかけました。

村の人たちは、たからさんの娘の呼びかけに応じて、自宅周辺を捜してくれました。みのりさんは、母親の目撃情報を聞いて駆け回り、岩屋神社の境内に足を挫いたまま座り込んでいた母親を見つけました。とうほう村テレビの携帯電話は、たからさんから少し離れた場所に落ちていて、たからさんは、とうほう村テレビに連絡することができなかったか、そのことを忘れてしまっていたようでした。

みのりさんは、若年性認知症を患う自分が家族や村の人たちのお荷物になるのではないかと心配していたのですが、それを聞いて、お母さんはどうしてそうなのと呆れていたみのりさんは、お荷物になってもいい、大切な荷物なのだから重くても何でも私が背負うと言って、足を挫いた母親を背負って歩こうとして、倒れて二人で笑い合っていました。

それから半年後の明るい春の日、自宅の庭では、啓介さんと娘のみのりさんが一緒に洗濯物を干していました。その二人の様子を眺めるように静かに縁側に座っていたたからさんは、顔を空の方に向けて、きれいと呟いていました。

脚本は谷口純一郎さん、音楽は濱田貴司さん、演出は久保田瞳さんでした。

地元のケーブルテレビのディレクターとして村の様々な場所を記録する母親と、“何もない”村の暮らしに息苦しさを感じていた高校生の娘が、家族の思い出という共通の記憶にかけがえのない今という時間を見出していく物語だったように思うのですが、とても良かったです。

実際の東峰村の方たちも出演していたのかなと思うのですが、寺島しのぶさんの演じる母親のたからさんも、藤野涼子さんの演じる娘のみのりさんも良かったですし、福岡発地域ドラマとして、ドラマの舞台が東峰村であることの必然性というようなところも含めて、丁寧に描かれていたように思います。

行方不明になった家族の捜索にケーブルテレビの生放送が役立つということも、小さな村ならではのことなのかもしれませんが、すごいなと思いました。

若年性認知症と診断され、少しずつ自分の記憶を失っていくことになったたからさんが、半年の後の春の日の中でどのくらいの症状になっていたのかははっきりとは分からなかったのですが、夫の啓介さんと娘のみのりさんと幸せな日常を生きることができているようでした。

普段の日常の中では気にも留めないような何気ない些細な物事も、いつか忘れてしまう、いつか失われてしまうという視点で見ると、いつもとは違った大切な景色として見えてくるのかもしれないと、このドラマを見ていて思いました。

たからさんの友人の真知子さんが言っていたように、例えば誰かが私のことを忘れたとしても、私が相手のことを忘れなければ、それでいいのだということも改めて思いました。

エンディングに流れていた主題歌は、古賀小由実さんの「わたしのたから」という曲だったのですが、その歌も、ドラマの雰囲気に合っていて良かったです。寂しさと幸福感が同時に進んでいるような、上手く伝えることができないのですが、とてもすてきなドラマでした。
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