映画「マリー・アントワネットに別れをつげて」

先月の日本テレビの深夜に放送されていた映画「マリー・アントワネットに別れをつげて」を見ました。

2012年に公開されたブノワ・ジャコー監督・脚本によるフランスとスペインの合作の歴史映画で、原作はシャンタル・トマさんの小説『王妃に別れをつげて』だそうです。

「金曜ロードSHOW!」ではフランスとドイツの映画「美女と野獣」が地上波初放送されていましたが、この映画はその宣伝のために、同じレア・セドゥさん主演の映画として放送されていた作品なのだと思います。吹き替えではなく、日本語字幕で放送されていたのですが、ノーカット放送ではなかったのかもしれません(少なくともエンドロールはカットされていました)。

フランス革命前夜のヴェルサイユ宮殿を舞台に、王族や貴族や使用人たちの戸惑いや決意を描いた映画でした。1789年7月の14日の早朝から17日の夜までの3日間の物語でした。

映画の初めのほうを見ていた時には、登場人物の衣装や建物などがリアルに見えるということが良く思えたくらいで、物語自体が面白いのかどうかはよく分からないようにも思えていたのですが、15日に民衆がバスティーユ監獄を陥落したという噂が宮殿内に広まっていった辺りから、展開に緊張感が漂い始め、少し薄暗い映像にも慣れてきて、だんだんと面白いようにも思えてきました。

主人公のシドニー・ラボルド(レア・セドゥさん)は、王妃マリー・アントワネット(ダイアン・クルーガーさん)の朗読係で、刺繍が得意な少女でした。ラボルドさんは、王妃を敬愛し、何よりも王妃のことを優先していました。しかし、温厚なフランス王・ルイ16世(グザヴィエ・ボーヴォワさん)の王妃であるマリー・アントワネットは、愛人のポリニャック夫人(ヴィルジニー・ルドワイヤンさん)のことだけを想い続けていました。

フランス革命の始まった頃のヴェルサイユ宮殿での出来事を描いた時代劇だったのですが、ラボルドさんとマリー・アントワネットとポリニャック夫人の静かな愛憎劇という印象の物語でもありました。

ラボルドさんの気持ちは王妃には届かず、王妃の気持ちはヴェルサイユを離れることにしたポリニャック夫人には必要のないものとなっていきました。

王妃のお世話係のカンパン夫人と親しいベルタン夫人に頼まれ、病気の刺繍係のマリー=ルイーズに代わって王妃のためのダリアの刺繍を完成させたラボルドさんは、最後まで王妃に本当のことを話しませんでしたし、王妃もマリー=ルイーズが作ったということを疑いませんでした。

刺繍を王妃に手渡した後、王妃をそのそばで守りたいラボルドさんは、ポリニャック夫人の意向を汲んでポリニャック夫妻にヴェルサイユを離れさせることにした王妃から、ポリニャック夫人の服を着てポリニャック夫人と旅に出るよう命じられました。カンパン夫人からは、頼まれても断るよう言われていたのですが、ラボルドさんには王妃の頼みを断ることはできませんでした。

王妃はラボルドさんの自分への気持ちを利用して、ラボルドさんをポリニャック夫人の身代わりにしようとしていました。ラボルドさんは、ショックを受けながらも王妃の命令通りに服を脱ぎ、王妃の蔑むような一瞥に耐えながら、ポリニャック夫人の緑色のドレスに着替えました。

ラボルドさんは、使用人の服を着たポリニャック夫妻と馬車に乗り、ヴェルサイユ郊外の森の道を進んで行きました。ポリニャック夫人の扮装をしたラボルドさんがわざわざ民衆に見えるように窓の外を見ることが気に入らないポリニャック夫人に頭から布を掛けられたラボルドさんは、目を覚ますと馬車が民衆や役人に取り囲まれていることに気付いたのですが、ポリニャック夫人の指示で、王妃に命じられたとおりに使用人を連れた貴族のポリニャック夫人を堂々と演じると、無事に馬車の通行を許可され、スイスへ向かう森の夜道をさらに奥へと進んで行きました。

身寄りのない孤児だった、王妃の朗読係で刺繍の上手なラボルドさんは、そうして「何者でもなくなった」のでした。

シドニー・ラボルドさんが「何者でもなくなった」のは、普通に考えると、王妃の朗読係という地位を失ったからということなのかもしれませんが、あるいは王妃の愛情を受けることが明確にできなくなった(ある種の失恋をした)からなのかなとも思いました。ラボルドさんがいつから王妃に使えていたのかは分かりませんが、長い間王妃に使えていて、しかもその王妃を心から敬愛していたということなら、王妃を突然失ったラボルドさんの喪失感というものは、とても大きいのではないかなと思います。

何度も繰り返し見たくなるような面白い歴史映画かどうかというと、それは少し違うのかもしれませんが、フランス革命に巻き込まれていく登場人物たちの感情が丁寧に描かれていたように思いますし、静かで落ち着いた作風で、良かったです。

暴動を起こした民衆が権力を欲しがっていると知ったルイ16世の、権力とは王家の呪いのようなものだと思っていた、というような言葉も、良かったように思います。世襲制によって国を統治する権力を受け継いでいる貴族の人々の中には、威張る人や暴力的な人もいたかもしれませんが、謙虚な方や、生まれながらにして権力を持つ自分の逃れることのできない宿命のようなものを呪っていた方もいたのかもしれないなと思いました。

フランス革命の時の話でありながら、フランス革命を起こした民衆の襲撃の様子や、貴族の処刑の様子、その後の王や王妃の処刑の様子などが描かれていなかったところも良かったのだと思いますが、そのような点でもやはり、この映画は、「愛」を描いた映画だったのかもしれないなと思います。
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