ヒロシマ8.6ドラマ「ふたりのキャンバス」

昨日は、広島にアメリカ軍の原子爆弾が投下されてから72年目の日でした。

NHKの総合テレビでは、5日の午後3時頃、NHK広島放送局制作の「ヒロシマ8.6ドラマ ふたりのキャンバス」が放送されていました。中国地方で1日に放送されたものだそうです。私は録画をしておいたものを後で見ました。

ドラマでは、広島の高校の美術コースに通う16歳の柳井里保(小芝風花さん)は、その凛とした大人びた雰囲気に密かに憧れていた同じクラスの窪奏美(中村ゆりかさん)に誘われて、広島平和記念資料館の企画する「次世代と描く原爆の絵」に取り組むことを決意し、10歳の時に被爆し、妻を亡くして一人暮らしの82歳の遠藤雄造(近藤正臣さん)から戦争の体験談を聞くことになった里保さんは、電車に乗って遠藤さんの坂の上の家に通いながら、遠藤さんが伝えようとする記憶の中の風景を絵にしようと奮闘していました。

脚本は中澤香織さん、音楽は小林洋平さん、演出は熊野律時さんでした。

戦禍を想像することのできない親の代から戦争を知らない世代の里保さんと、広島の被爆者として差別される状況も経験し、自分の体験を若い人たちに伝えることの難しさを感じている遠藤さんが、「原爆の絵」を描くという作業を通じてお互いのことを少しずつ理解していこうとする話であり、他の多くの同級生たちのようには自分のことをあまり語りたがらない物静かな奏美さんと、そのような奏美さんに憧れていた、周囲の意見に流されてしまうことも多い明るくてざっくりとした"普通の高校生”の里保さんが、話したくないことと話してほしいこととの折り合いを付けながら友情を深めていく話でもありました。

「原爆の絵」を描く仲間として憧れの奏美さんと親しくなった里保さんは、会う度に奏美さんに話しかけるサッカー部の高嶋陸(興津正太郎さん)に興味のない奏美さんがある日高嶋さんとデートをしたとの噂を友人から聞き、友人に合わせて奏美さんのことを少し悪く言ったのを奏美さんに聞かれてしまい、高嶋さんと「デート」をしたことを自分に教えてくれなかった奏美さんから「デート」という言い方で呼ぶようなものではないと否定されたまま、何かということも打ち明けてくれない奏美さんに、「面倒くさい」と言い放ってしまいました。

遠藤さんは、「原爆の絵」の打ち合わせに訪れた里保さんの様子がいつもと違うことに気づき、里保さんから事情を聞いて、友人が自分に何かを教えてくれなかったことを気にして、自分が友人を裏切った(別の友人に合わせて悪口を言った)ことを省みない里保さんのことを注意し、里保さんは素直に反省していました。

日暮れの頃、学校の美術室で「原爆の絵」を一人で描いていた里保さんのところに奏美さんが来て、高嶋君と会っていた事情を打ち明けたのですが、それは、悩み相談を受けていたというものでした。話してみて良い人だと思い、その後一緒に映画館へ行ったけれど、好きじゃなかった、手をつないできたから怖くなって逃げたのだと奏美さんは里保さんに教えて、逃げながら駆け込んだ雑貨店で買ったという木製の蓋付きの無色透明の丸い瓶を里保さんに手渡していました。

里保さんは、汚れたボロボロの服を遠藤さんに再現してもらったりもしながら、遠藤さんの記憶の中にある原爆投下直後の竜巻のような火災と瓦礫の街の風景を描き、校内の「次世代と描く原爆の絵」の展覧会に展示しました。遠藤さんは、里保さんの描いた絵と自分の頭の中にある景色は違うけれど、もしもその風景を写した写真があったとしても、それを見ても違うと思うかもしれないし、里保さんの絵のほうがいいというようなことを里保さんに伝えて72年前の原爆の日のことを懸命に考えた里保さんに感謝し、思い出のヘッセの詩集を里保さんに託していました。

里保さんは、奏美さんからもらった瓶の中にかわいい自然風景を作って奏美さんにプレゼントしていました。里保さんにはそのような瓶の小物を作る趣味があったようでした。里保さんは、奏美さんに、奏美さんの性格の少し「面倒くさい」部分を変えなくていいと話していて、奏美さん自身も、ずっと変えないと笑っていました。

自分のことを簡単には分かってほしくない、と里保さんに言っていた奏美さんの言葉は、戦争や被爆を経験し、それによって友人や家族を失って、戦中・戦後の辛い出来事をこれまでほとんど誰にも話してこなかったという遠藤さんの思いでもあるのかもしれません。

遠藤さんにお弁当を届けていた寡黙なお弁当屋さんの女性も、寡黙なのには何か理由があるのだろうと思いますし、それを詮索したり、否定したりしない遠藤さんの感じも良いと思いました。

自分の感情や体験を人に伝えたり、相手のことを分かり合おうとしたりすることの大切さや難しさのようなものが、丁寧に繊細に描かれていたように思います。

遠藤さんが大阪へ行っていた頃のヘッセの詩集をくれた女性との思い出話も含めて、自分の人生を「薄い」と感じていた里保さんの青春と成長の物語でした。

ドラマのテーマになっていた「原爆の絵」については、昨日の、8月5日のテレビ朝日の「報道ステーション」でも、広島市の基町高等学校の美術部の宮本陽菜さんが被爆をした兒玉光雄さんの話を聞いて「原爆の絵」を描く様子が特集されていました。10年間で100点以上の絵が制作されたのだそうです。絵を上手に描くことのできない私には、どの絵もとても良く描くことができているように見えるのですが、確かに、当時に直接見た被爆者の方の記憶とは異なるものなのだと思います。でも、当時の戦争や原爆の話を聞いて、そのことを今考え続けるということが大事なのだろうと思います。


TBSの「報道特集」では、落語家の桂歌丸さんと劇団の無名塾を主催する俳優の仲代達矢さんの戦争の体験と平和主義の日本国憲法(平和憲法)への思いが伝えられていました。横浜市で遊郭を経営していた歌丸さんの祖母は、満員の防空壕に入ることができなかったそうなのですが、諦めて留まっていた一角が偶然空襲を免れて無事だったそうです。一方で、東京の青山通りの辺りで空襲に遭ったという仲代さんは、見知らぬ小さい女の子の手を取って一緒に走って逃げていた時、急に手が軽くなったと思ったら、女の子の腕だけを掴んでいたということでした。女の子の腕から向こうは、爆弾に吹き飛ばされてしまったそうです。少年の仲代さんは、驚いて女の子の手を捨てて逃げたそうなのですが、今でもそのことを後悔していて、もしもその女の子が自分と一緒に逃げなかったら助かったのではないかということも頭から離れないということを話していました。

そして、その後半では、日本国憲法第9条の「戦争放棄」をGHQのマッカーサー元帥に提案した幣原喜十郎内閣総理大臣と、その時の話し合いを記した側近の大平さんの遺した羽室メモ、日本国憲法の改憲を計画した岸信介首相による「日本国憲法はGHQに押しつけられた憲法」だとの嘘の流布、日本国憲法を「GHQに押しつけられた憲法」、「いじましい、みっともない憲法」だと語る安倍首相の様子や思想などを紹介していました(「いじましい」という言葉は、主に関西地方で使われる、意地汚いとか痛々しいとか哀れで見苦しいとかいうような意味の言葉だそうです)。ノンフィクション作家の保阪正康さんは、憲法を改正するかどうかが国民の間で話し合われないうちに「憲法改正ありき」で政治家が進めようとしていることも間違っているということを話していました。国会を軽視している安倍首相は憲法を軽視しているのだということもよく分かる特集であったように思います。「第3次安倍第3次改造内閣」が発足しても、その閣僚たちや今の自民党の議員たちの中の憲法(平和主義や基本的人権や個人の尊重など)を軽視する精神が直っているかどうかは分からないように思えます。

朝の広島平和記念式典では、広島市長が、原子爆弾や水素爆弾など核兵器は「絶対悪」だと、核兵器使用をほのめかす為政者を諫め、唯一の戦争被爆国である日本の政府は積極的に核兵器をこの世界から無くす努力をしてほしいというような趣旨のことを演説で話していましたが、アメリカの「核の傘」に入っているからという理由で国連の核兵器禁止条約の話し合いにも参加しなかった安倍内閣では、なぜか、核兵器を持つことは憲法違反ではないという風な謎の憲法解釈をし、そのように閣議決定してしまっているのだそうです。

日本政府は敗戦後「親米」ということで原爆を投下したアメリカ政府の方針に従っています。占領された国だからなのか、占領政策の後も、在日アメリカ軍基地も残し、日米地位協定もそのままにしています。でも、日本が唯一の戦争被爆国だということは、今のところ、原爆投下によって市民を大量に無差別殺傷した国はアメリカだけだということでもあります。

戦時中の「国策落語」をつまらない落語だったと知る歌丸さんは、今の政治家は落語を聴かないのかもしれない、だから口先だけでものを言うのかもしれないと話していました。歌丸さんも仲代さんも、戦争は愚かな行為であると、戦争反対と平和憲法の大切さを静かに訴えていました。

日本国憲法を「叡智」だと話していた仲代さんは、俳優という立場からこれまではあまり戦争の話をしてこなかったのだそうです。宝田明さんや瀬戸内寂聴さんや美輪明宏さんなど、有名な方で戦争反対をはっきりと主張している方もいるように思いますが、日本の芸能界の反戦を主張しにくい空気?など気にせずに、私のような「戦争を知らない世代」の人たちのために、もっと反戦の思いを公に伝えていってほしいと思いました。


一昨夜の日本テレビのドラマ「ウチの夫は仕事ができない」の第5話の後に見たNHKのEテレの「告白・満蒙開拓団の女たち」も、衝撃的でした。岐阜県の白川町黒川村の黒川満蒙開拓団の若い女性たちが、関東軍が一早く逃げ出した8月9日からのソ連軍の満州侵攻後、みんなで日本へ帰るために集団自決をせずに、暴徒と化して襲ってくる中国人たちを退けるためにソ連兵に護衛を依頼し、「戦争には女がつきもの」と言うソ連兵の要求に従うことにした村長たちに説得されて、村の側がソ連兵のために用意した「接待所」でソ連兵の「性奴隷」にされていた、というような話だったのですが、長い間秘密にされてきたその事実を、最近になって、当事者の女性たちが自ら告白し始めたということでした。

当時のその満州での話があまりにも過酷で、怖かったです。開拓団の人たちを守らずに卑怯にも真っ先に逃げ出した日本の関東軍の兵士たちは一体何なのだろうと思うのですが、関東軍の兵士の話以上に、満州に侵攻したソ連(現ロシア)の兵士の話にも悪い話しかないような気がします。私が知らないだけなのかもしれませんが、中には女性や子供たちを傷つけなかった善良なソ連兵もいたのでしょうか。

「戦争には女がつきもの」というような男性たちの見識を、本当に腹立たしく思いますし、とても気持ち悪く思います。弱い立場の人たちをそのように傷つけた当時の悪い男性たち(兵士だけではなく民間人の中にも悪い人はいたかもしれません)には、老人となっているであろう今からでも死んでほしいくらいです。満州から日本へ帰ってきた人たちへの日本国内にいた人たちの差別や偏見も、冷たいもののように思えます。でも、戦後のアメリカ兵を相手にしていた日本の女性たちもそうだったようなのですが、日本兵を相手にしていた韓国の「慰安婦」の女性たちも、ドイツ兵を相手にしていたフランスの女性たちも、地元で偏見に遭っていたそうです。

番組で「接待」を証言していた女性たちは、しかし、そうして満州から日本に戻り、長く生き抜いてきたことを、後悔はしていないようでした。むしろ、自分が犠牲となって家族や村の人を助けたことを誇りに思っているようにも見えました。性犯罪の被害者にならないように自殺をすることと、その被害者となることで生き延びることについて、どちらが正しいとも、どちらが間違っているとも言えないのかもしれませんが、この「接待」に耐えた女性たちの話を聞いて、ナチス・ドイツのユダヤ人強制収容所に入ったオーストリアの精神医学者のヴィクトール・エミール・フランクルの『それでも人生にイエスと言う』という本のことを少し思い出しました。強い、という言葉で表すのはもしかしたら少し違うかもしれないとも思うのですが、それでも、そのような酷い「接待」を耐えた女性たちは強いなと思いました。

反戦・反核を訴える方たちを「平和ぼけ」などと悪く?呼ぶ方もいるそうなのですが、平和の大切さを訴えることができるのは、むしろ「平和ぼけ」になっていないからこそなのではないかなとも思います。

ともかく、ヒロシマ8.6ドラマ「ふたりのキャンバス」は、さわやかなドラマでした。里保さんは遠藤さんにも2羽のウサギの入ったガラス容器細工をプレゼントしたようで、遠藤さんがそれを一人暮らしの窓辺に飾るという終わり方も良かったです。私はこのドラマのことを知らずに、番組表で見かけて何だろうと録画をしておいたのですが、見ることができて良かったです。約45分のドラマの後、広島の基町高等学校の生徒たちの描いた「原爆の絵」が7作品ほど紹介されていたのですが、当時を知らない私には、それが本当の惨劇の景色のように見えました。

昨夜の「NHKスペシャル」の「原爆死 ~ヒロシマ 72年目の真実~」では、原子爆弾の光を浴びた人の皮膚が赤く爛れたようなが火傷(やけど)は、熱線で血管の中の血液が沸騰して水蒸気となって血管を破ったものだというようなことが言われていました。爆心地から半径2.5kmよりも離れた場所にいた人に現れた急性原爆症について、国は今でも原爆の放射能によるものだとは認めていないそうです。「黒い雨」となって広島の各地に降り注いだ粉のような放射性物質を吸い込んだことによるのではないかという話を聞いて、東京電力福島第一原子力発電所の爆発事故のあった福島は大丈夫なのだろうかとも思ったのですが、事故当時「国内最悪の被曝事故」と言われていた、茨城の日本原子力研究開発機構の大洗研究開発センターの5人の作業員の方がプルトニウムの粉を吸い込んで内部被曝をした事故のことも思い出しました。「直ちに健康被害が出るものではない」、「健康に影響が出るほどではない」というような原子力機構の説明は、本当なのでしょうか。

被爆者の方の描いた「原爆の絵」や、写真や映像に残されている被爆者の傷病の姿や亡くなった姿などを見ると怖いですし、痛そうですし、辛くて重くて憂鬱な気持ちにもなるのですが、嫌だなと怖く思う感覚を持つということも、為政者が引き起こす市民を巻き込む人権無視の、戦争が如何に酷いものであるかということを忘れないために、大切なことなのだと思います。今からでも、ほんの少しずつでも、人類の歴史や政治のことを、私も知るようにしていきたいと思います。
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