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「この声をきみに」第6回

NHKの「ドラマ10」の「この声をきみに」の第6回「もつれる2人」を見ました。

江崎京子先生(麻生久美子さん)の部屋で朝を迎えた穂波孝(竹野内豊さん)は、まだ眠っている京子先生の本を片付けながら、本棚の奥に壊れた古い腕時計を見つけました。そして、目を覚まして驚く京子先生とお互いに本を読んだ以外に何もなかったことを確認しつつ、磯崎泰代(片桐はいりさん)の分析を思い出して、動揺しながら部屋を出て行きました。

風邪を治した京子先生は、何事もなかったように佐久良宗親先生(柴田恭兵さん)の朗読教室「灯火親」に戻って来ました。教室では、声優志望の大学生の稲葉実鈴(大原櫻子さん)が河合雄一(戸塚祥太さん)を好きになったことを熊川絵里(趣里さん)に話して盛り上がっていたのですが、発表会の題材として河合さんが選んだ本は『数学的媚薬』(作はアレックス・ゴールトさん、訳は畔柳和代さん、装画は祖田雅弘さん)で、河合さんはその朗読の相手役を穂波さんに頼みました。

『数学的媚薬』は、アメリカのラジオのリスナーの話を小説にしたものだそうで、『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』(ポール・オースター編)の中の短編のようでした。数学者の穂波さんが数学者の役になり、河合さんがその相手の人の役になっていたのですが、「親和数」で愛情を伝えるという二人の世界が良かったです。

朗読を終えた河合さんは、佐久良先生や京子先生、朗読仲間の柏原喜巳子(堀内敬子さん)や福島邦夫(杉本哲太さん)、磯崎さん、稲葉さん、熊川さん、穂波さんに、みんな気付いているだろうと思うけど、と前置きをして、トランスジェンダーだと思うと打ち明けていました。男性たちの中にいるよりも、喜巳子さんや泰代さんたちと話していたほうが楽しいということだと説明していました。そうかもしれないと思っていた仲間たちはすぐに受け入れていたのですが、河合さんを好きになっていた稲葉さんは少し失恋したような気持ちになっていたようでした。

朗読教室のみんなが帰った後、残っていた穂波さんは、先日のことを謝る京子先生に、あなたのことをもっと知りたいと切り出し、困惑する京子先生から、これ以上深入りしないでください、あのことは忘れてくださいと言われました。穂波さんは、京子先生と朗読した夜の複雑な感情を上手く言葉に表すことができずにいたのですが、「恋」とでも言うつもりですか、離婚を決めたばかりなのに、と京子先生に言われて、黙ってしまいました。

そこへ、柏原さんが戻ってきました。柏原さんがボランティアで朗読に行く施設の一覧表の中に、父親の定男(平泉成さん)が入っている老人ホームを見つけた穂波さんは、佐久良先生から渡された、『おじさんのかさ』(作と絵・佐野洋子さん)を朗読することにしました。穂波さんは、離婚することを父親に報告した後、息子のものは全部捨てたと言う父親とケンカになっていたのですが、団地の父親の部屋を掃除している時、「孝」と書かれた段ボール箱を見つけ、父親の字で日にちの書かれた、数学の賞を取った時などの新聞記事のスクラップブックも見つけました。頑固で不器用だけれどどこか愛らしい主人公が穂波さんと似ている、というような理由で『おじさんのかさ』を佐久良先生から渡されていた穂波さんは、その主人公に父親の姿を重ねていたようでした。

朗読の当日、老人ホームには稲葉さんと河合さんも来ていました。一番後ろの席に一人で離れて座っていた定男さんは、朗読の舞台に出てきた4人の中に息子が入っているのを見て驚いていたのですが、息子の朗読する『おじさんのかさ』の世界に惹き込まれていきました。

雨の日にも差さないほど傘を大事に持ち歩いている「おじさん」になった穂波さん親子が、「雨に唄えば」のように、二人で雨の公園でダンスを踊る場面がまた良かったです。『おじさんのかさ』のおじさんが最後に傘を開いたことは、心を開いたということでもあるのかなと思います。朗読会の後、穂波さんは、仲直りした父親に、一緒に暮らそうと提案していました。

最後、古書店の本棚の前にいた京子先生は、結び目と位相幾何学に関する本を見つけて手に取っていたのですが、その時、入ってきた穂波さんに気付いて本を棚に戻しました。穂波さんは、憶えていないかもしれないけれど、僕たちは12年前に一度会ったことがあると、教会で会った時のことを話し、そう言われた京子先生は、自分の過去を穂波さんに話す決心をしたようでした。

脚本は大森美香さん、演出は上田明子さんでした。

第6回も、面白かったです。

河合さんが朗読教室のみんなにトランスジェンダーを告白するという、驚きのような驚きではないような場面も、温かい雰囲気でまとまっていて良かったです。河合さんの人物設定がゲイではなくトランスジェンダーというところも、このような言い方で合っているかどうか分からないのですが、戸塚祥太さんの演じる河合さんの穏やかな雰囲気に合っていたのかもしれないなと思います。

河合さんと穂波さんの朗読する『数学的媚薬』の世界も、穂波さんが主人公に父親を重ねて朗読していた『おじさんのかさ』の世界の演出も良かったですし、『おじさんのかさ』に登場する子供が穂波さんの子供たち(定男さんの孫たち)だったところも良かったです。

穂波さんは、京子先生に惹かれているのですが、離婚することになった妻の奈緒(ミムラさん)や長女の舞花(安藤美優さん)と長男の龍太郎(加賀谷光輝さん)のことも、当然のことながら忘れることができず、頻繁に思い出しているようでした。

予告によると、京子先生の過去を知ることになるらしい穂波さんは、京子先生を救うヒーローになりたいと思うようでした。次回の物語も楽しみにしたいと思います。


ところで、このドラマの途中、画面の上部に、カタルーニャ自治州政府がスペインからの独立を宣言したという趣旨のニュース速報の字幕が出ました。歴史上では、スペインが統一されてカタルーニャ王国が政治的独立性を失ったのは1479年のことだそうで、日本では、その文明11年というのは、「応仁の乱」が終わった2年後だそうです。ブルボン王朝が崩壊した後の1936年に始まったスペインの内戦では、ファシストのフランシスコ・フランコの率いる保守(反共産主義)の軍隊がバルセロナやゲルニカを空爆するなどして勝利し、スペインの初代総統として独裁者のフランコが就任すると、バスク州のバスク語と共にカタルーニャ語の使用を禁止して弾圧したのだそうで、それは1975年にフランコが死去するまで続いたのだそうです。

スペインの画家フランシス・デ・ゴヤの版画集『戦争の惨禍』は、ブルボン王朝時代のスペインの、ナポレオン率いるフランスからの独立戦争(1807年から1814年頃)を描いたものだということなので、スペインの内戦とは異なるのですが、展覧会で見たゴヤの戦争版画はあまりにも怖い絵でしたし、スペインの内戦時の写真の残酷さも衝撃的だったので、私はいつも同時に思い出してしまいます。現代のスペインで内戦が再び起きるとは思いませんが、世の中が不穏な感じに進んでいるので、「統一」が必ずしも良いものではないように、「分断」が必ずしも悪いものだとも思わないのですが、何があるか分からないという気もします。独立を願う自治州の方たちが(中国のチベット自治区やウイグル自治区などもそうかもしれませんが)無事に温かい雰囲気の中で独立することができれば一番良いのではないかと思うのですが、統治する政府側からは簡単には認められそうにないですし、どうなるのかなと、遠くから勝手に少し心配に思いました。
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Author:カンナ
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