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特集ドラマ「どこにもない国」後編

NHKの特集ドラマ「どこにもない国」の後編を見ました。

先週に放送された前編の続きとなる後編の物語は、8月9日にソ連軍が侵攻してきた後の中国東北部の旧満州に取り残された約150万人の日本人たちを帰国させるため、中国国民党軍とアメリカ軍の協力を得て日本へ向かうアメリカ軍の船に乗った経済学者の丸山邦雄(内野聖陽さん)と建設会社社長の新甫八朗(原田泰造さん)とその会社の社員の武蔵正道(満島真之介さん)が、昭和21年の3月13日に日本の山口県の仙崎港に到着した場面から始まっていました。

新聞記者に声をかけられた丸山さんと新甫さんと武蔵さんは、記者会見を開いて満州の過酷な環境に取り残されている日本人の現状を訴えたのですが、翌日の新聞紙にはごく小さな記事にしかなっていませんでした。GHQ(連合国軍総司令部)の占領下に置かれていた日本では報道の自由は制限されている上に、戦後の連合国の中にはソビエト連邦も入っていて、満州の実情が日本に伝わることをよく思っていないからだということでした。

記者から東京行の切符を渡された3人は、東京へ向かい、杉並の丸山さんの家を事務所にしました。丸山さんたちは、GHQのアメリカ軍に旧満州に取り残されている在満邦人の引き揚げのための船を出してほしいと頼みに行ったのですが、ソ連の占領下にあるから無理だと断られました。国民党軍が使っている「コロ島」の港があると、丸山さんはスケッチブックの絵を見せたのですが、アメリカ軍の地図にコロ島は載っていませんでした。建築士の新甫さんが地図を描いて見せた後少しして、アメリカ軍の最新の地図にコロ島を見つけました。コロ島は島ではなかったようでした。アメリカ軍は、マッカーサー元帥に伝えると約束したのですが、新しい動きはありませんでした。

日本政府と交渉しようと、3人は、学生時代の丸山さんがロンドンで会ったことのある元駐英大使の外務大臣の吉田茂(萩原健一さん)に会いに行きました。吉田茂外務大臣は、日本政府には権限がなく何もできないから民間外交をするしかないと、各地へ行って草の根から世論を盛り上げることを提案しました。吉田茂に紹介された運輸省の佐藤栄作に汽車の乗車券を手配してもらったらしく(具体的な描写はありませんでした)、3人はそれぞれ別の町へ行き、講堂に集まった人々に、日本人の遺体が積まれている光景や、裸同然で街を行進している女性たちを見たことなど、旧満州に残されている日本人が飢えや病や略奪や暴力に苦しんでいる現状を語り続けました。

今のままでは人々の不安を煽っているだけなのではないかと丸山さんたちが考えていたある日、3人は代理の日系アメリカ人の軍人(山田純大さん)の仲介でダグラス・マッカーサー元帥に直接会えることになりました。30分の予定だったものの、マッカーサー元帥は40分以上、丸山さんたちの話を静かに聞き続けたということでした。そして、マッカーサー元帥は、丸山さんたちに、引き揚げ船の手配を約束しました。

中国の大連では、丸山さんの日系アメリカ人の妻のメアリー・万里子(木村佳乃さん)と4人の子供たちと、新甫さんの妻のマツ(蓮佛美沙子さん)と2人の子供たちは、カトリック教会の近くの家を借りて暮らしていました。丸山家の子供たちは自分たちの食器や洋服を売り、中国語を話せる新甫家の子供たちは中国人の業者のタバコを売っていました。メアリーさんは、夫を信じるしかないと、教会でソ連軍の妻たちに英語を教える仕事を始めたのですが、マツさんは、夫は本当に日本に行っているのだろうか、すでに死んでいるのではないかと不安になっていました。新甫さんが日本へ「逃げた」という噂を聞いた日本人が、マツさんたち親子のことをソ連軍や共産党軍に密告し、教会へ隠れた後、マツさんたちの暮らしていた家が何者かに荒らされるという事件もあったようでした。

丸山さんと新甫さんが3人で旧満州に再び戻ることを話し合っていた時、武蔵さんは、丸山さんにはアメリカとの引き続きの交渉を頼み、社長の新甫さんには救援物資を集めてほしいと頼み、自分一人で旧満州に戻って日本人を引き揚げ船に乗せると言いました。丸山さんと新甫さんは勇敢な武蔵さんに在満州邦人の引き揚げ計画を託し、武蔵さんを旧満州へ送り出したのですが、救援物資を持って満州に戻った武蔵さんは、国民党軍や日本人と会っているところを中国共産党軍に見張られ、スパイと疑われて共産党軍に捕まると、酷い拷問を受けることになりました。

丸山さんは、ラジオを通じて日本から満州にいる人々に引き揚げが始まるというメッセージを届けました。メアリーさんと子供たちは、教会のラジオで、無事に生きていた夫の声を聴きました。昭和21年の4月末、長崎県の佐世保の港を出た引き揚げ船は、5月にロコ島から日本人を乗せて戻ってきました。その帰国した日本人の中に、ボロボロの状態の武蔵さんもいたようでした。拷問で大怪我を負った武蔵さんは、杉並の事務所に戻ってきました。新甫さんと丸山さんは、武蔵さんのおかげでみんな帰国することができたと、武蔵さんの健闘を称えていました。

昭和21年の秋、総理大臣に就任した吉田茂は、草の根の活動を頑張っていた丸山さんたちの裏でGHQのマッカーサー元帥や連合国側と水面下の交渉を行っていたということを、丸山さんたちに話していました。

そして、昭和22年の1月10日、メアリーさんと子供たち、マツさんと子供たちも、引き揚げ船に乗って帰国しました。新甫さんと丸山さんは、家族と再会することができました。丸山さんは、自分たちを守ってくれた妻のメアリーさんのロザリオを、メアリーさんの首にかけていました。

丸山さんたちの尽力により、アメリカ軍や連合国側の協力を得ることができた「葫芦島在留日本人大送還」と呼ばれる旧満州在留邦人の祖国引き揚げ計画で、昭和22年までに、旧満州にいた約105万人の日本人が日本に帰ってくることができたのだそうです。

船を下りたメアリーさんたちは、他の人々同じように、港の一角でしらみを取るためのDDTの白い粉をかけられたようでした。最後には、丸山さんがこの引き揚げのことをあまり家族に語ることなく、78歳で亡くなるまで、無名の一市民として生きたということが伝えられていました。丸山邦雄さんは、昭和56年(1981年)に亡くなったそうです。

作(脚本)は大森寿美男さん、音楽は川井憲次さん、演出は木村隆文さん、語りは柴田恭兵さんでした。ドラマの原案は、丸山邦雄さんの三男のポール・邦昭・丸山さんの著書『満州 奇跡の脱出』です。前編にも使われていたドラマの最後の家族の絵は、引き揚げ計画のための活動中の丸山さんが小冊子の表紙のために描いた水彩画だったようでした。

武蔵さんが拷問を受ける場面が怖かったのですが、後編もとても良かったです。緊迫感のある展開でした。

実際には、中国の旧満州で難民状態になっていた大多数の日本人を日本に帰国させる「葫芦島在留日本人大送還」ができたことには、丸山さんたちが直訴したアメリカ軍や中国国民党軍の他に、中国共産党軍やソ連軍の協力もあったようでした。ロコ島の港にたどり着くことができなかったり、引き揚げ船に乗る前に死亡したり、残留孤児になった人たちが20万人以上いたとも言われています。

ドラマの中の吉田茂外務大臣の話によると、日本政府は軍人の帰国を優先し、在満邦人にはそのまま現地に残って生活してもらおうと考えていたようでした。丸山さんたちは、そのような日本政府の無責任な態度に激怒し、日本政府に見捨てられた旧満州の日本人を救おうと、国内での草の根の民間外交活動を続けていました。丸山さんと新甫さんと武蔵さん以外にも、3人と一緒に旧満州に取り残された邦人を帰国させるための活動をした日本人がいたのだそうです。

崩壊した旧満州に取り残されて苦しんでいる多くの同胞をすぐに帰国させたいという丸山さんたちの熱意が各国の政府を動かし、その帰国を実現させました。有名な日本の政治家としては、外務大臣から総理大臣になった吉田茂(今の麻生太郎副総理大臣兼財務大臣の祖父)は登場していましたが、運輸省の佐藤栄作(今の安倍晋三総理大臣の大叔父)は登場していませんでした。

満州の日本軍(関東軍)や元兵士たちは、前編にも登場しませんでしたが、後編にも登場しませんでした。演説のために全国を回る中で、丸山さんや新甫さんや武蔵さんたちは、満州にいた一般の日本人たちよりも先に引き揚げ船に乗って(あるいは見殺しにして)帰国した元関東軍の兵士たちにも会ったことがあるのではないかなとも思ったのですが、どうなのでしょうか。

満州にいた日本軍兵士たちが一般の日本人たちを見捨てて先に日本に逃げたという事実が、その当時の日本の政策としてあったということにも驚きます。大日本帝国軍は「皇軍」だから天皇陛下を守ることはしても一般の日本人を守るようなことはしないのだという説もあるようなのですが、国や上官の命令に従っただけ、というのは、一般日本人を見捨てて真っ先に逃げ出した卑怯な兵士たちの言い訳に使うことはできるとしても、人道的には耐えられないものというか、非人道的な行為を正当化するものにはならないように思えます。兵士たちがロボットのように本当に完全に命令に従うだけの存在であったのなら、その善い行いの責任も悪い行いの責任も、命令を下した者にあることになります。命令に従っただけというのなら、一体その命令を下したのは誰なのか、責任者は追及されるべきであるように思います。

戦前の日本政府や日本軍が、世界の国々の力を正しく見極めることができていたなら、西欧列強諸国の真似のような植民地政策や侵略戦争に手を出さなかったなら、あるいはそれら軍備拡張政策からもっと早く手を引いていたなら、そして新聞などのメディアも政府に傾かず、一般の人々も「戦争」に熱狂せずにいたなら、第二次世界大戦は起きずに、中国東北部の「満州国」での悲惨な出来事も起きなかったのかもしれないと思います。日本人も、外国の人も、誰かを殺傷することはなく、誰かに殺傷されることはなかったのかもしれないと思います。

政府が外交に失敗するとどうなるか、他国にとって「脅威」となる「軍拡」の政策を推し進めるとどうなるか、自国政府による戦争の開始を国民が支持するとどうなるかなど、現在にも通じる歴史(過去の出来事)を少しでも知ることは、未来を少しでも良くするためにも、大切なことだと思います。

敗戦後の日本を占領下に置いたGHQの総司令官がもしもマッカーサー元帥でなかったなら、日本はもっと不自由な国になっていたでしょうか。天皇皇后両陛下の慰霊の旅と沖縄訪問のことも伝えていた昨日のTBSの「報道特集」の、学校法人・森友学園との交渉に関する公文書を財務省が改竄したことや国会に証人喚問された佐川宣寿前理財局長が証言を拒否したことの話の中で、フランスの記者の方が、政治を「お上」が行うものとして民主主義の根幹を壊す公文書改竄問題に関しても怒らない人が多いように見える日本人の態度について、日本の民主主義はいわば戦後に外国から“プレゼント”されたようなもので、欧米のように民衆が血を流して勝ち取ったものではないから深刻に受け止めることができないのではないか、というような趣旨の話をしていました。日本は民主主義の国ということになっていますが、その日本の民主主義は、まだ根付いていない、意外と表面的なものだということなのかもしれません。

政治にも歴史にも疎い私は、この前後編で放送された「どこにもない国」のドラマを見るまで、「葫芦島(ロコ島)在留日本人大送還」のことも、そのために尽力した丸山邦雄さんたちのことも、全く知りませんでした。いつか「NHKスペシャル」のようなドキュメンタリー番組で、この終戦直後の旧満州在留邦人引き揚げの大事業の特集がなされることはあるでしょうか。その事業の詳しいことは分からないままなのですが、ドラマ「どこにもない国」を見ることができて、丸山邦雄さんや新甫八朗さんや武蔵正道さんたちの熱意と努力を少しだけでも知ることができて、良かったです。
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Author:カンナ
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