「作家と万年筆展」

先日、横浜の港の見える丘公園の奥のほうにある神奈川近代文学館で開催されている「作家と万年筆展」を見に行きました。

私はあまり文房具にこだわるほうではなく、万年筆についてもほとんど知らないのですが、明治から現代までの作家の万年筆を集めて展示するというのは面白いかもしれないと思い、見に行くことにしました。

「文学の森へ 神奈川と作家たち」と「第2部 芥川龍之介から中島敦まで」の常設展の展示もあったため、「作家と万年筆展」は第2展示室のみのスペースに展示されていたのですが、作家の万年筆と、それを使って書かれたと思われる文字の残る作家の原稿用紙とが展示されていて、最初に思っていたよりも見応えがあって、面白かったです。

受付の係りの方が手渡してくれた展覧会のリーフレットをを受け取って常設展をしばらく見た後、私は第2会場へ向かいました。入ってすぐのところに「万年筆解説の見方」の紙が置かれていて、万年筆に詳しくない私は、それを見てもよく分からなかったのですが、一応それを見ながらガラスケースの中の万年筆を見ることにしました。

第1部は「名作を生んだ万年筆たちー夏目漱石から井上ひさしまで」で、第2部は「手書きの魔力ー現在の作家と万年筆」でした。

万年筆が展示されていた作家は、チラシにも書かれていた「夏目漱石、里見とん(とんの文字は弓偏に享)、吉川英治、子母澤寛、江戸川乱歩、吉屋信子、大佛次郎、井伏鱒二、北原武夫、井上靖、中里恒子、埴谷雄高、堀田善衞、池波正太郎、黒岩重吾、中野孝次、立原正秋、早乙女貢、澁澤龍彦、向田邦子、開高健、井上ひさし、出久根達郎、北方謙三、伊集院静、浅田次郎、角田光代」の27人でした。常設展の、例えば芥川龍之介や谷崎潤一郎や川端康成や小林秀雄などの作家の万年筆は展示されていませんでした。

メーカーや型番は様々でしたが、全体的に本体が黒い色の万年筆が多かったように思います。最初に展示されていたのは、夏目漱石の万年筆でした。イギリスのデ・ラ・ルー社製のオノトという万年筆だそうです。江戸川乱歩の万年筆は、「パイロット・RT-170-F"53R"」というシンプルなデザインの黒色の万年筆で、リーフレットによると、「ニブ」と呼ばれるペン先の左右の側面が切り取られているということで、確かにガラスケースに近づいてよく見ると、そのようになっているのが分かりました。乱歩の原稿は白い紐で綴られている『D坂の殺人事件』のものが展示されていたのですが、その殴り書き風の文字はブルーブラックのような色のインクで書かれていました。

展示されていた万年筆の中では、吉屋信子さんの黒に銀色の花模様の彫刻のある「シェーファー・レディ・シェーファーXXIV」という万年筆がきれいでした。もともと携帯用に作られたアメリカ製の万年筆なのだそうです。

井上靖の「モンブラン・マイスターシュテュック146」の万年筆には、指が滑らないようにするためか、先のほうに絆創膏が巻かれていて、面白いなと思いました。キャップを閉めることができないそうです。リーフレットには載っていなかったのですが、黒岩重吾の「モンブラン・マイスターシュテュック149」の万年筆の一つに新潮社の「Yonda?」のパンダのシールが貼られていて、見分けをつけるためかなと思ったのですが、これも何だかかわいい感じがして面白かったです。この「モンブラン・マイスターシュテュック」という万年筆を持っている人は他にも、大佛次郎、立原正秋、早乙女貢、開高健、伊集院静さんといて、人気の万年筆なのだなと思いました。

万年筆を使いこなすのは意外と大変だそうで、作家の人たちも何本も試して自分に合うものを見つけ出したのだろうということでした。現代では、パソコンのワープロソフトを使い、キーボードで文章を打つ作家が主流ということなのですが、リーフレットによると、出久根達郎さんは全ての原稿を毛筆か万年筆で書くそうで、すごいなと思いました。

私もキーボードで文字を打つのは楽しくて好きです。本物の高級な?万年筆を私はまだ使用したことがないので、普段手書きで文字を書く時には主にボールペンかシャープペンシルを使っています。それでも全く問題がないと思っているのですが、それでも、昔の文豪などの作家さんたちの多くが万年筆を使っているということは、万年筆を使うことに慣れたならそのほうがずっと書きやすいということなのでしょうか。

あと、作家の原稿用紙が、鉛筆やシャープペンなど消しゴムで文字を消すことのできる筆記用具ではなく、毛筆や万年筆やボールペンやプリンターのインクなどで書かれていることには、何か出版社からの規定があるためなのでしょうか。それとも、文字の見やすさのためでしょうか。作家の方は忙しそうなので、例えば小学生の作文のように、一枚の原稿用紙に書いた文章を間違えたら文字を消しゴムで消して書き直すというようなことはしないのかもしれません。

常設展の第2部も見終わり、作家や芸術家だけではなく、政治家やスポーツ選手もそうだと思うのですが、著名な人については、その人の作品そのもののだけではなく、それにまつわる品々や“愛用品”としての本人の持ち物なども、作品と同等、あるいはそれ以上に大切に思われるというのは、よくあることなのですが、少し不思議なことでもありますし、やはりすごいことだなと改めて思いました。

少し昔の著名人の方は、いつか自分の原稿や持ち物が展覧会や自身の記念館のような場所に展示されるというようなことを少しは意識していたのでしょうか。現代の作家の方も、ある程度意識しているのでしょうか。手書きの原稿を作らないという現代の作家さんの場合は、いつか愛用していたワープロやパソコン、ボイスレコーダーや携帯電話などが今回のような企画の展覧会に展示される日が来るのかもしれません。それはそれで、面白いのだろうなと思います。

「手書き」と聞くと、私は「年賀状」のことも思い出します。近年の年末の私は、数枚程度の年賀状を書いているだけなのですが、小さい頃からずっと、年賀状は宛名の部分も挨拶の部分も全て手書きにしています。届く年賀状も全て手書きのもののほうが嬉しい気持ちになるということもあるのですが、私の場合は単純に数枚(多かった時でも十数枚程度)なので、手書きのほうが早くて簡単ということもあります。

年賀状以外の普通の手紙を誰かに書くことは、今ではほとんどないのですが、それでも、もし手紙を出すのなら、手書きにするだろうと思います。文豪の万年筆ほどペン先が磨り減ることはないと思いますが、今回の展覧会を見て、私もいつか万年筆を使いこなすことができるようになったなら楽しいかもしれないなとも思いました。見に行って良かったです。
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