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「3.11後を生きる君たちへ」

先日のNHKのEテレのETV特集では、吉本隆明さんの追悼企画で、2009年の1月に放送された「吉本隆明 語る ~沈黙から芸術まで~」が再放送され、私も再びこの放送を見ていたのですが、その後の深夜に放送されて、録画をしておいた「3.11後を生きる君たちへ ~東浩紀 梅原猛に会いにいく~」という番組も、とても良かったです。

NHKの「震災から一年 明日へ ―支えあおう― 東日本大震災プロジェクト」という企画の一つのようでした。

哲学者の東浩紀さんと東さんに賛同する20代から30代の10人ほどの若い人たちが、大震災から一年経つ3月10日に、京都で暮らす哲学者の梅原猛さんに会いに行き、“東日本大震災後”の人類はどう生きるべきかについて尋ねるという内容の番組でした。

16日に亡くなった吉本隆明さんも87歳でしたが、梅原猛さんも87歳なのだそうです。このことについても、何だかすごいなと思います。

人類がどう生きたら良いかということについて、梅原さんは、西洋哲学では答えが出ないと考え、日本文化の研究を始めたそうです。梅原さんは、今回の東日本大震災を「人災」を超えた「文明災」と捉えているそうで、今の「人間中心主義」の文明を変えなければいけないと話していました。

デカルトの「人間中心主義」の思想から始まったものが、産業革命につながり、科学技術は進歩したけれど、自然破壊や環境破壊につながったということでした。デカルト的な西洋文明は、自然支配や人間支配を行う「意志の文明」なのだそうです。

そこで梅原さんは、日本古来の文明の中に、何か新しい発見があるのではないかと考え、日本の古い文明や文化を研究してきたのだそうです。

梅原さんは、「草木国土悉皆成仏」の言葉を挙げて、日本の自然と共存共生する生き方や考え方が大切だと話していました。また、梅原さんは、宮沢賢治の童話の中で人間以外のものが人間の言葉を話したり、人間のような感情を持っていたるすることについて話をしていて、東さんはアニメのキャラクターを実在するように思う人がいることや日本では他の国と違って人間的なロボットが作られていることなどについて話していたのですが、それは、日本には古来の“アニミズム”の考え方が今現在でも強く根付いているという意味の話のようでした。

また、アイヌのイヨマンテ(熊送り)の例を出して、「永劫回帰」的に連続する生命があることや、自然に対する畏れの気持ちが大切だということを話し、その自然への畏敬の念が文明の中心になくてはならないのではないか、と話していました。「草木国土悉皆成仏」のような、自然と共存する思想は、世界共通の哲学になり得るということでした。

古代エジプトと日本の共通点は、太陽の神様と水の神様を祭る農耕の文明であることだそうです。でも、梅原さんによると、その自然と共生する古代の文明を、ギリシャ文明が破壊してしまったのだそうです。ギリシャには森がないと話していました。私はよく知らなかったのですが、ギリシャ文明は海賊の文明なのだそうです。

そのギリシャ文明を取り入れて西洋文明が発達し、現代の「原子力」の科学技術文明までつながっているのだそうで、梅原さんは、太陽と水の崇拝を人類は再び獲得する必要がある、そうしなければ人類は存続することができないのではないかと話していました。

それから、東さんは、先の大津波などの“怒る自然”とどのように共存するべきかについて尋ねていました。梅原さんは、自然の恐ろしさの一面に対して、古代の人たちは捧げものをして、恐ろしい自然を恵の自然に変えてきたと話し、西洋文明は、この自然の二面性を忘れているのだと話していました。

自然の怒りによって引き起こされてしまった大震災への備え?としては、いつも覚悟をしておくことだと東さんたちに話していました。確かに、それしかないような気がします。

西洋哲学からどのように脱却するべきかについて、梅原さんは、ハイデッガーの、自然と人間を分けて考える限り人間中心主義から逃れることはできないという考えや、「白楽天」という世阿弥の能の話を挙げていました。私はこの物語のことを知らなかったのですが、「白楽天」とは、中国の詩人の白楽天が九州に来て、中国の詩の良さを伝えようとしたそうなのですが、九州の住吉明神は日本の和歌は、人間のことだけを詠む中国の詩と違い、鶯のことも波のことも詠むことができると話し、納得した白楽天が中国へ帰っていく、という物語なのだそうです。

日本が世界に果たすことのできる役割とは何かについて、梅原さんは、日本は、広島や長崎の「原爆」の被害と福島の「原発」の被害という、西洋が経験していない西洋文明、科学技術文明のマイナス面を知っていると話し、西洋文明を取り入れなければ発展できないという時代は終わったというイギリスの歴史家のトインビーの言葉を引用して、新しい文明を作るべきだと話していました。西洋文明を否定するのではなく、東洋文明の良いところを、日本人が世界にアピールしたり、提案したりすることが大切ということのようでした。

最後、参加をしていた中の一人の方が、大震災による多くの死とどう向き合えば良いのかと梅原さんに尋ねていました。その方は、多くの人たちが、この一年間、何かしなければと焦っていたのではないかというようなことを話していました。

梅原さんは仙台の生まれだそうで、梅原さんの母親も宮城県の石巻市の人なのだそうです。戦争でたくさんの死者に接し、その戦争時代を生きてきた梅原さんは、戦後、勇敢な人たちは戦死したのに自分は生き残ってしまったということに罪悪感があり、後ろめたさのようなものを感じながら生きてきたということを話していました。今回の震災が、戦争のイメージと重なったそうです。戦争の悲惨な状況を見て新しい哲学を作ろうと思った、それが鎮魂だったと梅原さんは話していました。

そして、思想とは「一粒の麦」であり、自分の蒔いた思想の種が育ってくれればいいなと思うと話して、ありがとうございました、と会を終えていました。

梅原さんと会った東さんは、千年以上続く日本文化の中に自分たちはいるのだということを改めて思ったようでした。次の世代の自分たち自身が考えていかなくてはいけないと話していました。

私も思想や哲学の話を聞くのが好きなので、楽しかったです。良い番組だったと思います。1時間ほどの番組だったのですが、実際には、3時間近く?話をしていたそうです。

梅原さんによると、梅原さんの京都の自宅の場所は、足利義政が最初に銀閣寺(慈照寺)を建てる予定の場所だったのだそうです。調べてはいないそうなのですが、その噂があるそうです。お庭には、池と石灯籠があり、公園のようにも見えました。周囲には山々が連なっている様子でした。最近、野生動物が多く出てくるようになってきたのだそうです。

自然と共存するということは、今までも行われてきていたように思うのですが、今までよりももっと、世界中で、その思想が必要になっているということなのかもしれません。アニミズムの考え方も、よくあるというか、私には自然のことのように思えているのですが、それは日本の中でだけで世界ではまだ珍しく、あるいは、もしかしたら日本の中でも少なくなってきているということなのかもしれません。

国会議事堂は石造りで、しかも都心にあるので、それがもし梅原さんの家のように、木造の建物で、森に囲まれた山村にあったなら、政治の流れは、自然や生き物を大切にするという穏やかな方向へ変わるのかなとも思いました。

私は東日本大震災の日を「3.11」と呼ぶ言い方に、まだあまり馴染むことができていないのですが、それでも一応私も「3.11後」を生きている人だと思うので、今までとは違う何かについても自分で考えていかなくてはいけないのかもしれないということを改めて思いました。

戦争時代を体験した梅原さんとは違うかもしれないのですが、梅原さんが話していたように、震災後、震災で亡くなった人たちがとても良い人たちだったという話を報道を聞くと、どうして私ではなかったのだろうという、何というか、罪悪感のようなものを、私も持っていました。今でも、時々そのような気持ちになります。

でも、私は、今の「東日本大震災後」は、先の昭和時代の「第二次世界大戦後(あるいは、太平洋戦後)」とは違うのではないかと思いました。何が違うのかはっきりとは分からないのですが、今回の震災後を戦後と「似ている」という意見を聞くと、そうではないような気がするのです。

ところで、今回の番組の内容とは関係がないのですが、以前、梅原猛さんは、「脳死は人の死ではない」という考えから、脳死臓器移植に反対ということを話していました。私も「脳死は人の死ではない」と思うので、当時梅原さんの意見を聞いた時には嬉しく思ったのですが、今でも梅原さんはそのような考えを持ち続けているのでしょうか。番組を見ていてこのことを思い出し、少し気になりました。
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Author:カンナ
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